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South Lake Tahoe, CA to Sierra City, CA Day86 – 90 /Part3
7/20(Tue) Hiking Day 67 / 20mi /6:15am-2:15pm (8:00)
“Sierra City”

良く寝られたのか寝られなかったのか分からない目覚め。
今日はSierra City という街までの残り20mi を歩く。
今回は食料補給をするので、今朝は思う存分残った食料を食べられる。
豪華(?)な朝食を済ませ、大体いつも通りの出発だ。

まずは目の前に見えているトレイルを登らなければならないようだ。
稜線に沿ってアップダウンを繰り返しながら進む。
チャーリー達は今日も、歩くのは早いが、のんびりだ。
僕もさすがに時間の余裕が無い。
焦っても急いでも、それほど大きく変わらないのは分かっている。
しかし、苛ついてしまう。
それが自分でも嫌だが、抑え様が無い。
今日も綺麗に花は咲いている。
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少しでも早く街に入ってゆっくりと時間を過ごしたかったので、先を急ぐ。
目的は、コーラか?
現金なもので、今日はペースもあまり落とさずに歩いて独走だ。
一日1miで良いので、もう少し多く歩いていきたい。
そろそろ一人になるべきなのだろうか。
花は静かに、綺麗に咲いている。
彼らのように誰かの為にもっと生きられたら良いのに。

西側に湖が見えてくるとトレイルは下りはじめる。
なかなか快適だ。
奥に見える岩山はなんだろうか。
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ストレス発散に今日も歌を歌おう。
今日の選曲は、恋の歌。
日本までは届かない声でも、せめて気持ちだけは届けば良いな。

下りきるとジープ道路に出る。
ここからは湖の姿は全く見えないが、湖畔沿いにはキャンプグラウンドがある。
ここからはまた少し登りになる。
振り返り見るも二人の姿は見えない。
大きな声で歌いながら登ると思いのほか呼吸が楽だ。
登りのテーマ曲は、情熱の薔薇。
永遠なのか本当か時の流れは続くのか。

Bear Valley という谷間は明るく日が射し、どこか隠れ家を感じさせる。
熊の名前が付いているが、それほど怖さを感じはしない。
岩の間を縫うように谷を抜けると緩やかに標高はアップダウンを繰り返す。
トレイルは地図に無いジープロードを通り抜けて上がる。
小さなpond が見えて来ると開けて空が見える。
ピークが近いのだろう。
とても平らになったトレイルは稜線を越え向こう側の谷に伸びる。

ここでエスフェイスに出会う。
これから向かっていく先が良く見渡せて良い場所だ。
彼は休憩が終わり立ち上がる。
じゃあ、またね。と別れ、僕はここで休憩だ。
がんばれば街まで一気に降りられるかも知れない、が二人も待たなくちゃ。

ちょうど木陰で倒木が背もたれになった良い場所を見つけ寄り掛かる。
二人はなかなか来ないがゆっくり待つことにしよう。
Nutella というヘーゼルナッツクリーム(ほぼチョコクリームの)とホワイトブレッド。
ブロックチーズを切ってパンにのせ、ペペロニをサンドして食べる。
ぼろぼろのポテトチップスをほおばり、コーラに想い馳せる。

一服しているとハイカーの声が。ジョーの姿が見える。チャーリーもだ。
なるべく早く街に入りたい僕とのんびりの二人。
結局待ってしまうのに、一人独走した。
三人で腰をかけて休憩。
でもタバコを吸い終わると僕は先に歩きはじめる。

トレイルは一気に標高を下げる。
急斜面をスイッチバックで降りて行き、谷底を目指す。
綺麗流れを持った沢に沿ってトレイルは進む。
橋のたもとにはスペースがあり、キャンプには良さそうだ。
水量も増えて、涼しい風が流れる。
木々も多く、緑の光が美しい。
水も豊富に流れていて、まるで奥多摩や奥秩父の沢のようだと思う。
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道路にぶつかりトレイルを飛び出す。
ここからはPCTでは無く、道路を辿るとSierra Cityへ直接入れる。
Forest Serviceのキャンプグラウンドが近くにある。
そのせいか、ハイカーでは無いファミリーの姿が見える。
彼らは僕の姿を奇妙なもののように見ている。
橋を渡り、道路を外れて再びトレイルに戻る。
ちょうど向かいからハイカーが来て挨拶を交わす。
Sierra City まではもう少しだと教えてくれた。

谷を迂回するように山肌に沿ってトレイルは上がる。
もうすぐ街に着くと思うと気が急いてしまう。
高いところから魅力的なピークが見える。
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Sierra Butte といい明日はあそこを巻くように歩く予定だ。
今朝見た山はこれなのだと気づく。
突然スイッチバックで降りた先には大きな橋が架かっている。
North Yuba riverは強い流れで、Loves Fall があり気持ちの良いところだ。
名前の由来までは分からなかった。

橋を越えて上がると道路が見える。
着いた!と思いきや沿うようにトレイルはまだ続いている。
半信半疑のまま歩いて行くと突然道路に飛び出す。
道路には大きいPCTサインが付いている。
トレイルは道路を挟んで向かいに続いているようだ。
反対側に渡りサインにタッチ。これで今日は終了だ。
とりあえず、チャーリーとジョーを待つことにする。
木陰にバックパックをおろし、座り込む。
はあ、疲れた。

水を飲み、スナックを食べる。
待っても、来ない。来ないなあ。
街の方から来た車が止まる。
その車にはガットフックが乗っていた。
他にも数名のハイカーがいる。
彼らはセクショナルハイカー(PCTの一部区間を歩くThru-Hiker)の様だ。
ガットフックは早い時間に街に着き、食料補給と昼食を済ませトレイルに戻るという。
僕もそういう効率の良い歩き方がしたいと思う。
運転手はトレイルエンジェルでPooh にいた人らしい。
これから帰るところらしいが、街までなら送ってくれるという。
しかし、チャーリー、ジョーを待たなくてはいけないので断る。

みんな去っていったあとも、待てども来ない。
ここで待っている意味などあるのだろうか。
ここに着いたのは、2時少し過ぎだった。
もうすぐ3時になろうとしている。
ふと笑い声が聞こえると思ったら、二人が到着。
何をしていたのか、40分くらい待ったと言うと、川で遊んでいたと言う。
ああ、そうですか。
ガットフックに会ったことなどなどを話す。
もっと早く来てくれたら、残念だ。
ここから街までは十分歩ける距離。
しかし、チャーリーは歩きたく無いと言う。
ぼくは、待ちすぎて、面倒だから歩こうと言う。

ヒッチハイクしながら歩くことになったが、全く捕まらない。
South Lake Tahoe 以来、ヒッチハイク運に見放されてしまったようだ。
結局、街のラインを告げるサインが出て来た。
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Sierra City, CA

City とは街のこと。
どちらかというと、都市や主要な街のことを言う。
とはいえ、山間の街だろうからそこまでの期待はしていなかった。
ところが、その想像を超えるほどのとても小さい街、いや町、いや集落だった。
谷間の為、道路も狭く、それに沿うようにはたくさんの住宅は建てられないのだろう。
おそらく見えない奥の方にも家がありそうではあった。
しかし、どちらかと言えば、サマーハウスがメインなのかも知れない。

町の中心部の端には図書館。
モーテルを通り過ぎていくと、いくつかのレストランやカフェがある。
その先にはポストオフィスと小さいグロセリーがある。
チャーリーは、ここのPOに靴を送っていた。
今の靴もまだ履けるが、ソールが簡単にはがれてしまった為クレームを出していた。
そのメールを確認に図書館へ。
僕とジョーは先にグロセリーへ行くことにする。
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Sierra City Country Store は小さい店だが生鮮食品や、肉類、チーズも売っている。
Hot Meal も用意しているのでとても親切だ。
品揃えは決して豊富とは言えないが、毎日入荷がある訳では無い田舎町では良い方だろう。
ここで次の町までの四日分の食料を用意しなくてはならない。
期待していたほどでは無かったが、なんとかなりそうなレベルだ。
買い出しの前にまずは何かを食べよう。

カントリーストアにはエスフェイスがいたが、もう出るところだそうだ。
別れを告げる。
店に入り僕はとりあえずオレンジを手に取る。
生ものには特に飢えている。
それから、1リットルのコーラとアイスクリームだ。
アイスクリームを食べながら、コーラをがぶ飲みする。
いくら飲んでも足りない気持ちだ。
“ずっと飲みたがっていたんだから、もっと飲みなよ”とジョーが言ってくれる。
完全に無くなったボトルを捨て、オレンジを食べてからもう一本コーラを買う。
チャーリーも追いついて、三人で物色。
チャーリーは靴もちゃんと手に入れられたようだ。

もっともっと食べたかったが、人心地着いたので次の行動に移る。
今日はここで一泊の予定なので宿を探す。
ジョーはこの街の教会の敷地でテントを張れるのでそこに行く。
チャーリーと僕は部屋をシェアしてゆっくりしようということになる。
さっき見た綺麗なモーテルは、今日は貸し切りでダメだった。
カントリーストアの向かいのB&Bはとても雰囲気が悪い。
Yogi’s やPCT Atlas に乗っているもう一件のモーテルはつぶれている。
少し離れているが、歩いて5分のリゾートエリアに行くことにする。
そこは、コテージやモーテルがあり、レストランも敷地内にある。
この場所で完結できるのだ。
Warner Spring Resort を思い出す。
しかし、ここも一杯。
さっき埋まってしまったという。
とても親切なおねえ様がただったが、部屋の用意はできなかった。
雰囲気の良いところだっただけに残念だ。

街の中心に戻るとジョーは良い場所を見つけたと言う。
Red Moose Café という店の裏手にキャンプできるというのだ。
しかも、食事も格安で出してくれると言う。
確か、”Sorry, Closed”の看板が出ていたところだ。
後で落ち合う約束をして、またモーテルを探す旅に。
結局もと来た道を戻り、中心から遠いが“Yuba River Inn”に入ることになる。
バスタブがあるのでゆっくり風呂に入れるので、良しとする。

ベッドは二つ。冷蔵庫もあるし、悪く無い。
しかし、値段の割には良くも無い。

一通り済んだ後、洗濯と食料の買い出しもあるので中心に戻る。
コインランドリーはストアに併設されている。
しかし、Red Moose Café で洗濯させてくれるという。
時間を気にしなくて良いのはとても嬉しい。
一通り四日分の買い出しを済ませカフェに行く。

Red Moose Café は西部開拓時代のような建物でとても雰囲気が良い。
入り口が二つあり、Caféへ直接と、部屋への入り口だ。
この建物自体、以前はInn も営んでいたようだ。
店内にはカウンターがあり、奥にはテーブルがある。
装飾品には、たくさんのRed Moose が並んでいる。
あたたかな電球の色が店内を優しく照らしている。

そのテーブルでは、チャーリーとジョーがトランプゲームに夢中になっていた。
そこには見慣れた人と、見慣れない人がいる。
一人はAnn。いつの間にか追いついてしまったようだ。
もう一人は男性ハイカーで、Whippoorwillという。
発音が難しく、日本語ではウィッパーウィルだろう。
実際には、(フ)ウィップウァーウィ(ル)といったところか。
意味はヨタカ(夜鷹)。
彼はレンジャーの仕事をしていて、鳥が好きだという。
とても感じの良い青年で、いつかPCTを歩いて欲しいと思う。

テーブルに付き、Red Moose Café のオーナーとその奥さんにお礼を言う。
この店は、休みでもPCTハイカーがくれば必ず対応するという。
特別PCTAの会員でもなく、Trail Angelと言ってはいないが応援してくれている。
よくよく見れば、入り口にはClosed の看板の下に、“PCT ハイカーは大声で呼べ!”と書いてある。
正直、おとといのことでトレイルエンジェルに幻滅していた僕には、目から鱗だ。

“飲み物は?”の声に“コーラ”と即答するが“うちはダイエットコークだけだよ”と返事。
炭酸と味が似ているなら問題ない。
“肉は食べられるかい?”
“もちろん”
この国は、本当に多くのベジタリアンがいる。
それぞれが主張し合う訳でも無く、当たり前に共生している。
ウィッパーウィルがそうだ。
彼が食べているのは、ハンバーガーでは無く、ベジバーガーだった。
食事の前にはフルーツが出て来る、とても美味しいメロンだ。
その味は体に染み入るようだ。

先にいたジョーから食事が出てくる。
ものすごく分厚いステーキだ。
いったい幾らのメニューだろう、と心配になるほど。
それにしても旨そうだ。
口の中に、よだれが溢れてくる。
調理は奥さんの仕事で、奥の厨房で僕たちの為に作ってくれている。
感謝。
出て来たステーキは想像以上に美味しい。
アメリカの肉は硬いイメージがあったが、そんなことは無い。
肉汁もたっぷり。
アメリカの味は、実はシンプルで基本の塩こしょうだけ。
後は各自のチョイスになる。
付け合わせはフレンチフライだったりマッシュポテトだったりする。
デザートもすっかり食べ終えて満腹になる。

洗濯はまだ終わらない。
ジョーはカードゲームに夢中だが、少々飽きた。
今度は奥さんのお裁縫の時間だ。
ほつれたり破れたりしたものを直してくれると言うのだ。
なんて親切なのだろう。

ここに宿泊施設は無いと思っていたが実はあるらしい。
むやみに来られても困るので表向きは出していないのだという。
ハイカーの為にいつも部屋を空けてくれているのだ。
覗かせてもらった部屋はとても雰囲気が良い。
こんなことなら、と後悔は先に立たずということだ。

電話もただで貸してくれる。
携帯の電波が入らないのでちょうど良かった。
国際通話用のプリペイドカードを使ってかける。
妻も僕のいない状況にやっと少しは慣れて来たようだ。
本当に感謝しか無い。

オーナーが電話を終えた僕に“日本に電話してたのかい”と訪ねる。
“うん。心配ないよ、プリベイドカードだから”
“ああ、良かった”と笑顔だ。
外は真っ暗になり、時間も“Hiker Midnight”だ。
チャーリーとモーテルに戻ろうとしているとオーナーが“車で送るよ”
待ってました!感謝!

“明日の朝にまた行くよ、お休み。”

すんなり寝られる訳では無く、二人して明日からの食料などのパッキングをする。
最近、エナジーバーなどが食べにくく感じる。
食料のあまりは明日Hiker Box※1に入れよう。
チャーリーも、友達が送ってくれたものが豪快に余っている。
高級サラミは貰っておいて、残りはHiker Box だ。

風呂は本当に気持が良い。
シャワーは夕食の前に浴びていたが、汚れがまだ残っている。
バスタブに浸かり体を休める。
疲れがお湯に溶け出して行くようだ。

やっぱりベッドは心地よい。
人が布団やベッドを作った気持ちが良く分かる。
地面にござを敷いていた頃からは大分出世した物だ。

長距離ハイキングは自然の中に入り、人を知ることなのかも知れない。
俗があるからこその人と生。
明日も己を知る為の旅の続きをしよう。
ずっとずっと歩いて行こう。

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※1 Hiker Box はハイカーが余った食料や物を置いて行く箱。捨てて行く訳では無く、今の自分には必要ないが、他のハイカーに必要になるかも知れない物を入れておく。ハイカーボックスをメインにスルーハイクする強者もいる。アメリカには賞味期限が無いので食料には注意。

- "soda pop" Turtle
by hikersdepot | 2011-10-05 23:36 | PCT 2010 by Turtle


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