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Tuolumne Meadows, CA to Yosemite Valley, CA / Day74 – 75
7/3(sat) Hiking Day 54 / 22mi /6:30am-6:00pm (11:30)
“Four Japanese Hikers”

チャーリーと二人出発する。
マウンテンゴートとターボは一足早く出ていた。
みんなもぞくぞくと出発して行く。
“See You Trail !”
再びの再開を願い挨拶を交わす。

周りの岩山に阻まれて陽射しが入らないため、薄暗く寒い。
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道路を通ってJMTルートに入る。
自然観察道のようになっているため、道は綺麗だが道がわかりづらい。
てくてく歩いて行く。
どうやらあちらも道を間違えたのか、マウンテンゴートとターボと合流する。

マウンテンゴートは調子が悪いらしく、腰を押さえていた。
時々痛くなるらしいのだが、今日は歩けないと言う。
一日休みたいそうだ。

ターボは何となく僕らと一緒に歩くことになったようだ。
道路を横切るとやっとトレイルらしくなって、Passに向かって登って行く。

まだ雪の呪縛からは逃れられないようで、雪の残るトレイルの中を行く。
樹林が濃く、今までとはまた違う趣を帯びてきている。
樹林を抜けると美しい岩山が見え、どれも素晴らしい。
その中でもひと際迫力を持って目の前にそびえるのは、Cathedral Peak。
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Cathedral Lake への分岐を通り過ぎ、Passへと向かってもうひと登りする。
すぐに広い湿地帯へと出る。
Cathedral Pass(9,700mi)
JMTの最初のPass。逆から歩くPCTハイカーにとっては本当に最後のPassだ。

これを下れば、Yosemite Valley 、終着点だ。
一休みを終えて歩きはじめる。
道は畦となり、雪に隠されながら伸びて行く。
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適当に歩きやすいところを選んでストレートウォークをする。
下りはじめると日当りが良いのか雪は少なく乾いた広い草地にでる。
数人のハイカーがキャンプの撤収をしているのが見える。
近づいて行って挨拶を交わす。
彼らは、Tuolumne まで歩くハイカーだった。今いる場所が良く分からなくなったらしい。
みんなで地図を見ながら確認してみる。
右手には、Columbia Finger、というわかりやすいピークが見える。

みんないかにもアメリカ人らしいスタイルのハイカーだ。
30年前から変わっていないことに驚く。
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再び下りはじめるが、どうもまっすぐ来すぎてしまったようで山よりに進路を変える。
少し遅かったようで、だいぶずれてしまっている。
ガレの斜面をトラバース気味に進み、よじ上るように上がる。

トレイルに復帰するとさくさく歩けるようになる。
もう雪は十分だよ、と笑い合う。
さすが人気のトレイル。しかも独立記念日の前日なのでハイカーが多いのか。
また向こうから上がってきたハイカーはアジア人のように見えた。

いままでに会ったアジア系のハイカーは、中国系か日系のアメリカ人だった。
どこの人かな、と思って見ると、どうも日本人のようだ。
いやでもまさかと思い、Hello! と言ってみる。
向こうも挨拶を返してくれた。しかし、英語の発音の母音が強い。
これは、やはりと思い、“日本人ですか?”と声をかける。
“No”ではなく“はい”と答えが返ってきた。

彼らは日本からJMTセクションを歩きにきた日本人四人組だ。
今年の雪の多さで結局当初の予定を断念してしまったらしい。
歩けなくはないが歩きやすくはない。
レンジャー達としても慎重なコメントにならざるを得ないのだろう。
個人的には歩いて欲しかったが、それもまたHiker Direction だ。
生山(おいやま)さん、佐藤さん、赤星さん、石津さんの四人組。
石津さんは紅一点だ。
みんなとても大きなバックパックを背負っている。それもまたカッコ良くもある。
久しぶりの直接話す日本語に興奮してしまう。
しばし立ち話。
自分がHiker’s Depot という店で働いている(いた。と表現するべきか?)と言うと、
彼らは某大手アウトドアメーカーの人達だと言う。
驚いた。まさかこんなところで業界関係者に会うなんて。
彼らはみんな別々の場所から集まって来たようだ。
素晴らしい、楽しそうな会社だ。
僕らの小さいバックパックを見て興味を持っていたが、時間もあまり無い。
もっと話したかったが、お互いの旅の幸運を祈って、別れる。
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チャーリーやターボもびっくりしている。
時間かけてごめんというと、僕たちだって海外で自国の人に出会ったら一緒さ、と言う。
ありがとう。

標高はぐんぐん下がり、大きな湿原が現れる。
ここが、Sunrise Camp だろうか。
ここまで来ると雪は一切なくなり乾いた台地と引き換えに蚊が現れる。
徐々に木々も濃くなり、自然豊かな表情を見せ始める。
空は乾いて青く広がり、今日も素晴らしい天気だ。
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チャーリーはロッジに泊まりたいらしく、一生懸命電話しているが上手く捕まらないようだ。
独立記念日じゃ高くて、混雑しているのだろう。

見渡す景色は岩の造形美で広がる。
どんどん谷に向かって下降するが長い。
正面には綺麗な半円状の岩が見える。
あれが、あの有名な”Half Dome”だ。
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ちょうどHalf Domeを真正面に見る形のキャンプサイトがトレイルから外れたところにある。
そこで美しい岩山を眺めながら昼食となる。
もうだいぶ降りてきたがまだ先は長いらしい。
ValleyのElevation(標高)は4000feetだ。
10000feet近くから降りてきて、今はやっと7000feet位だった。
時間も正午を過ぎてしまっている。
大急ぎで降りれば、今日のバスでTuolumne に戻れるだろうが、厳しそうだ。
ターボは今日戻りたいと思っていたが諦めたようだ。
となれば、のんびり、休憩をするしかない。

また歩き始めて直ぐの頃川を一つ渡る。
またしばらく行くと看板が立っている分岐にあたる。
その看板には、Half Dome、のくりぬきの文字が。
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ここからは、ほぼ問答無用のPCTパーミッションをもってしてもかなわないエリアだ。
さほど興味の無い僕にとっては問題なかった。

そこからはすぐに、Little Yosemite Valley に着く。
立派なトイレが建っているのを見るといよいよ人の気配が増えてくる。
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明らかにデイハイカーと思われる人の量が増えるのだ。
彼らは、JMTハイカーの様に綺麗では無い僕らを物珍しそうに見る。
そして僕らは物珍しそうに綺麗なハイカーを眺めるのだ。
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馬にまたがるレンジャーに初めて出会う。
かっこいい。
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日本にも、馬の文化、があったはずなのに、いつから日本はだめになったのか。
そんなことを考えてしまう。
日本には規制しか無いが、海外には規制、ルールの上での自由が広がっている。

もうすぐ着いちゃうんじゃないかと思っていたらここからが長かった。
まずは、Nevada Fall が現れる。
すると、ものすごい観光客で溢れ変える。
な、なんじゃこりゃ!
と思わずお決まりの文句を言ってしまいそうになるほどだ。
ところが、その滝にはものすごい水量が今歩いてきた道の方から流れている。
これには、さすがに興奮が隠せなかった。
三人ではしゃいで写真やムービーを撮りまくる。
柵なんて無粋なものが無いので、ぎりぎりまで行けるが恐ろしい。

この、Nevada Fall は雪解けの時期に現れ、盛夏には姿を消してしまう。
冬には当然滝は無く、この時期だけ現れる滝なのだ。

それにしてもものすごい数のデイハイカーだ。
まるで修学旅行に来たような若者達でごった返している。
それから、アジア系の旅行者だが、バックパッカーのような人種ではない。

やることが済めばとっとと降りよう。
トレイルは岩肌をトラバースするように進む。
上からは水滴がシャワーのように落ちてきている。
これもこの雪解けの時期だけのアトラクションだ。
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振り返るNevada Fall。
“Nevada”はスペイン語で“雪”を意味する。
雪がある時期にしかない滝だからこその名前なのだろうか。
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ちなみに、 “Sierra”というのはスペイン語で“連山”を言う。
“Sierra Nevada”とは“雪の連山”という意味だ。
スペインには本家、Sierra Nevada がある。
シエラネバダ山脈という言い方をされるが、本当はネバダ山脈なのだ。
ただ、アメリカではそのままの意味ではなくなっている。
だからこそ愛称で、The Sierra、と言うのだ。

トレイルはコンクリートで固められ、歩きやすそうに思うが、足への負担は計り知れない。
疲れた膝に大きな負担になるのは間違いない。
独特の臭いと違和感をまとったハイカー集団はかけるように下って行く。
チャーリーは膝の調子を考え少しスピードダウンだ。
子供達と競争のように抜きつ、抜かれつ標高を下げる。
うんざりするほどのスイッチバックを繰り返す。
腕の高度計の数値はゆっくりとしか下がっていかない。

Stock Route(馬用のルート)を分けてしばらくすると橋の手前に大きな人だかりが見える。
トイレと水道があるところを見ると、ここが登山口なのだろうか。
橋の上は人でごった返している。
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しかし、ここは登山口では無く、もうひと下りする必要がある。
岩を削ったトラバースするトレイルを惰性のみで歩く。
向こうに見えるのはYosemite Fall のようだ。

突然道路に出る。
それを人の流れに従って進むと、小さな売店とバスストップが見える。
JMTのスタート点、そして僕らのゴール点、幸せの小島、Happy Isles に着いた。
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三人でハイタッチをして、ここまでの労を称え、喜び合う。
とりあえず売店で何か食べよう。
もう時間は午後五時を過ぎているが、夕飯前の腹ごしらえだ。
ホットドッグとアイスとソーダ。大満足だ。

近くにいるレンジャーに、PCTハイカーであることを伝え、キャンプ場の場所を聞く。
もう予約できるキャンプグラウンドは満杯だが、バックパッカーズサイトがあるとのこと。
ターボは一度ヨセミテに来たことがあり、僕たちが泊まる場所もわかるという。

無料の循環バスに乗りたかったが人の量が尋常じゃあ無い。
歩いても行けると言うので、薄暗くなってきた道を人込みの中進む。
右手には大きなキャンプグラウンドが広がるが、どこもいっぱいだ。

North Pine というキャンプグラウンドを抜け、川を渡った先にバックパッカーズサイトはある。
ここはハイカーやバックパッカーが予約無しで泊まれるところだ。
まだなんとか泊まれそうだ。
エリアぎりぎりに今日の家を建てる。

一息ついたら今日の夕食にありつきに出かける。
少しは空いたバスに乗って、Curry Village に行く。
自家用車と人で溢れた場所に到着。
ここにはアウトドアショップもあり、選べなくともたいていのものは買える。
靴を見てみるが、気に入るものは無かった。

ヨセミテ内ではまだ安い方の宿泊施設がここだが、さすがにトップシーズン、高い。
アクア・ドルチェで泊まったようなテントハウスが$200では泊まれない。
レンタルサイクルもあり、様々なアクティビティの予約もここでできる。

食べるところも豊富で、ハンバーガーショップやピッツァショップ、ブッフェレストランがある。
レストランは高いので、ピッツァにしようと並ぶが、40分待ちだと言う。
これはさすがに待てない。

時間も少なかったが、ブッフェレストランへ。
中にはカフェやアイスクリームスタンドまである。
至れり尽くせり、とはこのことだ。

ブッフェは、日本ではバイキングと言われる食べ放題のこと。
とにかくお皿に盛って、盛りまくる。
飲み物も三種類くらいまとめて用意だ。
三人で乾杯。
僕は残念ながら、Mt. Whitney には登れなかったが、チャーリーとターボはJMT踏破だ。

まだまだ先は長いが、大きいポイントを通過したことは間違いない。
二度目の大皿を平らげ、一杯の腹を抱えながらキャンプサイトに戻る。

これだけたくさんの人の気配の中寝るのはいつ以来だろう。
いや、日本でだって、平日休みの僕には、ほとんど経験が無い。
がやがやとした声も、疲れた体には子守唄だ。

深い谷に包み込まれて眠る。




7/4(sat) Zero Day 17
“Busy Valley”

Independence Day、独立記念日。
アメリカ人にとって一年の中で最も盛り上がるお祝いの一つ。
街ではお祭り騒ぎになる。
夜中には花火が飛び交い、興奮と感動に包まれる。

場所は、Yosemite National Park。
花火は禁止。大きな音を鳴らすのも禁止だ。
当然だろう。
しかし、それにしてもものすごい人だ。
道路は渋滞が起きている。

改めて見ると、日本では想像もできないほどの大きな、
それは大きなキャンピングカーが何台もひしめき合うように止まっている。
いったいどれだけ多くの人がここを訪れ、そして本当にこの自然を楽しんでいるのだろうか。

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昨日の夜、あれだけ腹に詰め込んだのに、朝には再ブッフェで食事。
いったいどれだけの飢餓なのだろうか。
このごろの体の変化には驚くばかりだ。
今までに経験したことない飢餓感。
しかし、その割には充実した体力と精神。

今日はヨセミテ内を少し観光したあとに、洗濯をしてからトゥオルミに戻る予定。
バスに乗って、ビジターセンターのある、ヨセミテの中心地”Yosemite Village”に向かう。

アメリカの国立公園は入るだけでもお金がかかる。
しかし、その代わりに公園内の設備の充実度は日本の比では無い。
循環するバスは無料だし、公園内に来た人が安心して楽しめるようサービスが行き届く。
ただ、そのエリア外に無断で出た場合は、
逮捕権も銃携帯も認められているレンジャーから大きなペナルティーが科せられる。

山野に入る場合は別に、Wilderness Permit が必要になる。
これは別途代金が必要だ。
ところがこのお金はWilderness Area を守る資金となる。
レンジャーを雇い、整備をし、トレイルを作る。
そこまでして、山野に入りたいハイカー達にはその自然を享受する自由が与えられる。
お金を払ってまで山野に入りたいハイカー達は自然の保護に対しても理解が深いのでマナーは良い。

お金というフィルターを通すことで、人を分け、自然を守るというやり方だ。

どちらが良いということは無い。
しかし今の日本は、自然があっても何もするな、という。
本来の人と自然との関わりを壊すやり方が多いのも確かだ。

ビジターセンターを中心に、ポストオフィスやスーベニアショップなどが並び、
カリービレッジよりも人が多くにぎやかだ。

ビジターセンターの前まで行くと、見たことのある四人が座っている。
昨日の四人組だ。
チャーリーがビジターセンターで話を聞いている間、僕は外で話をする。
昨日、トゥオルミに上がり、今日バスで戻ってきたのは良いが、その後が決まらないようだ。
独立記念日でレンタカーが借りられずに困っているらしい。
確かにこの込み具合では、特に週末の独立記念日では、思うようにいかない。
しかし、これも旅の醍醐味というものなのだろう。

僕たちは、Yosemite Fall を見に出かける。
バスで一つ先に行ったところから遊歩道を歩く。
まるで華厳の滝かなにかのようだ。
しかし、道の正面に見える滝は迫力がありかっこいい。
この辺の演出の仕方も、さすがだと感心する。
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滝の近くまで行くと、本当は駄目なのかもしれないが、みんな奥まで行っている。
これは乗っておこうと、三人で突っ込んでいく。
PCTハイカーにとっては楽に思えるが、みんなへっぴり腰で遅い。
近くまでしっかり寄ってびしょ濡れだ。
僕のカメラは防水だからここでも撮ることができる。
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Yosemite Village に戻って、お店を物色。
たいしたものがある訳ではないが、アウトドアショップもある。
Curry Village の方が充実しているように思った。
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生山さんにばったり会う。
行き先が決まったようだ。良かった。
やっと落ち着いたので、お土産を物色しているらしい。
つい、久しぶりの日本人なので話が止まらない。

お土産屋にはたくさんのポストカードが置いてある。
ここにはAnsel Adams のポストカードが豊富だ。
Ansel Adams は写真家で、とくにヨセミテの風景を好んだ。
Yosemite の写真といえば、Ansel Adams。
Ansel Adams といえば、Yosemite だ。
日本への手紙を書くために何枚か購入した。

Village の近くには、Yosemite Lodge という宿泊施設があるが、
さらに一つ上の場所がある。
The Ahwahnee
高級ホテルだ。
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建物が素晴らしいだけでない、歴史もあるのだ。
そして景色との融合がすごい。
後学の為に見に行くことにする。
できたら食事もと思ったが高すぎて話にならない。

室内は思ったよりも広く、歴史を感じさせる。
実際、歴史を紹介した展示室まである。

チャーリーは何を思ったか、上に行こう、と言い出す。
上の方の階は部屋があるだけだ。
エレベーターを降りたチャーリーは静かに歩き出し、開いている部屋に入る。
高い代金を取ってどれほどの部屋だか見てみよう、ということだ。
とはいえ、どこまでやんちゃなおじさんなのだろう。

見ておいて良かったのは、たいした部屋ではなかったこと。
いくら高級とはいえ、Lodge なのだから仕方ないが、もう少し広くても良いのにと思った。
これなら、$40のモーテルの方が良いと思ってしまう。

誰にも見つからないように退散する。
結局、ハンバーガーで昼を済ませる。

Tuolumne から先は、また長い日々になる。
なので、洗濯をしたかったが、残り時間が少ない。
この後のバスでトゥオルミに戻る予定なのだ。
一日一本しか出ていないので、これを逃す訳にはいかなかった。

先に洗濯をしようと言ったのにチャーリーが聞いてくれなかった。
もう諦めようとしたが、大丈夫だ、と言う。
ターボは必要ないと言う。
なぜなら、彼のPCTはここで一旦の終了となるからだ。
彼は足も強いし、このまま最後まで十分行けるだろうに、辞めるのだ。
この後、別のロングトレイルを歩きにいき、PCTの続きは来年するのだという。
良くも悪くも、アメリカ人らしいこだわりの無さだ。

House Keeping Camp というのを初めて知る。
よく考えればわかる、そのままの意味なのだが、理解できない。
要するに、家と同じような状態を保持したキャンプ、ということだ。
??????
キャンプだけど、家と同じ生活?
家と同じような生活だけど、キャンプ?
ロッジでは無く。
かといって、コテージでも無い。
テントでもなければ何でも無い。
プレハブみたいな建物の中で、何が楽しめると言うのだろう。
それに代金を払う価値が、僕にはわからなかった。

そこの場所にはコインランドリーがあるので、バスで向かう。
シャワーを浴びる前に服を脱ぎ、洗濯をする。
時間が差し迫っていたが、まだぎりぎり間に合いそうだ。
ところが、乾燥は間に合わず、半乾きの服を来てバス停に向かう。

バスは待ってもなかなか来ない。
とはいえ、歩くにはけっこうな距離があるので躊躇してしまう。
20分以上待っやっと来たバスに乗り込む。
こんなに時間がかかった理由がわかる。
バスには人が溢れるほど乗っていた。
そして、先の道路は渋滞で大混雑していた。

バスを降りてキャンプサイトまでダッシュする。
しかし、どう考えても間に合いそうには無い。
適当に荷物を詰め込み、再び走ってバス停に行く。
ターボが先に行ってバスを止めると言ってくれたが、それどころでは無かった。
バスが、混雑しすぎて来ていないのだ。

バス停には、B.P.Camp にいた子連れのハイカー夫婦がいて一緒に乗り込む。
彼らも今日戻るつもりらしいのだが、これでは時間が間に合わない。
Yosemite Village に着いてまたダッシュ。
しかし、トゥオルミ行きバスは既に出ていた後だった。

本当に人生はままならない。ハプニングの連続だ。
チャーリーは少し責任を感じていたのか、ごめん、と言う。
別に良いさ。これも自分の判断だ。

バス停にはボストン&カーヴィがいた。
あっさりと追いつかれてしまっていたようだ。
彼女達は早い。

子連れの夫婦ハイカーと話をする。
寝ていた女の子もこの騒ぎに目を覚ましたようだ。
Roland、Lenee、Neve、の三人はカナダから来ている。
ローランドの話では、この季節限定のバスが他にもあると言う。
Yosemite Lodge から出ているというので、とりあえずロッジまで行ってみることに。
このロッジも十分綺麗な施設だ。
中のカウンターで話をすると、少し高いが、バスがあるということだ。
明日の朝一で行けば十分だ。
とりあえず一安心する。良かった。

気づいたら、ターボの姿が見えない。
どうしようか。
チャーリーは大丈夫さ、と言う。
きっとボストン&カーヴィと楽しくやっているだろう。

次の問題は泊まるキャンプ場が遠いということ。
この辺で野宿でもしてしまおうかと考えていると、ローランドが”Camp 4”に行こうと言う。
Camp 4 。
クライマーやボルダラーが集う有名な貧乏キャンプサイト。
一度行ってみたいと思っていた。
しかし、予約が必要なキャンプサイトなのにどうやって泊まろうというのか。
ローランドもリニイも自信げに、問題ないという。

ヨセミテロッジから歩いて五分くらいの距離に、Camp 4 はある。
駐車場は車で一杯。
立て看板には“No Vacancy”。
二人が言うには、サイトは予約だが広いので、空いているところに寝てしまえるとのことだ。
まあ、なんて強引なこと。
とはいえ、それしか方法が無ければなんとかしよう。

ちょうどクライマーらしき男性二人がキャンプするサイトがあり、広々と空いていた。
ローランドとチャーリーが話しかけて説明すると、快く許してくれた。
サイトを予約してしまうので、他にはもう来ないだろうと言う。

ローランド達はテントを立てずに寝るようだ。
4歳になる、ネヴェは母親のリニイと一緒の寝袋で寝るらしい。
すっかり起きてご機嫌になったネヴェと遊ぶ。
彼女は近くの岩の上に登っては滑り降りる。
なんとかわいいことか。
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未来のクライマーの姿を見たような気がする。
日本の甥のことを思い出す。きっとまた大きくなったのだろう。
すっかりネヴェとは仲良しになってしまった。

男性二人はやはりクライマーらしく、明日早朝には取り付きにいくらしい。
彼らは、PCTハイカーのことをおかしい、Crazy、と言う
ところがこちらにしてみたら、垂直の壁を登ろうとする方が、Crazy、だと思う。
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今日の夕食はヨセミテロッジで食べるが、ここはデリ形式だ。
ところが、まあ値段が高く、ブッフェの方がおいしいし人気があるのがわかる。
食べられるだけ良いというものだが、チャーリーと僕はグルメだ。

昼間に買ったはがきを書くチャンスを思わず得られてしまう。
デザートを食べながら、手紙を書く。
日本でお世話になった人達に、とりあえずの報告だ。
つい、気が緩むのか、涙がにじんでしまう。

ローランドとリニイ、ネヴェも来ていて、彼らからアイスのお裾分けをもらう。
さっきもアイスを食べたばかりだが、ありがたく頂戴しよう。

キャンプサイトに戻ると、アジア系の人達がテントを張っていた。
どうやらここを予約した人達の様だ。
空いていたのでは無かったのだ。
申し訳なくて、ひと声かけて事情を話すと、問題ない、と言ってくれた。
みんなハイカーに対しては優しい。
感謝。

周りのざわめき、人の気配、おいしい匂い。
慌ただしい一日が終わる。
by hikersdepot | 2011-08-01 01:47 | PCT 2010 by Turtle


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