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8/2(Mon) Hiking Day80 / 34.2mi /6:30am-8:00pm (13:30) /NB 1510.0mi
“Our Destination” やはり洗った靴下は気持ちが良い。 今日は良いスタートを切る。 快調に下っていくと、1時間くらいでAsh Camp に到着。 Trail Head になっていて車がここまで来られるようだ。 トイレも設置されているし、その奥には整地されたキャンプサイトがある。 その下には強い流れを持った川が流れている。 朝がゆっくりなキャンパー達はやっと起き出したくらいだ。 チャーリーは先に進み、僕はせっかくなのでトイレで用を足す。 外でするほうが自由で良いが、残さなくて良いものは残したく無い。 まあ、これがちゃんと処理されるのかはわからないが。 閉鎖された空間でできるのは精神的に落ち着くものだ。 蚊の脅威に怯える必要も無い。 外に出ると、キャンパーのテントからは湯気が上がり良い匂いがする。 淡い期待が頭をよぎるが、そんな都合の良い話なんてそうそう無い。 さあ、チャーリーを追いかけて歩かなきゃ。 ![]() 川を渡ったあとに、その川の下流に向かい沿うように歩いて行く。 林道とはいえ車道も近いせいか、とても道は整備されていて歩きやすい。 水平に伸びるトレイルを快適に歩く。 少しカーブしたトレイルに座るチャーリーが見える。 朝出発してから2時間位経ち休憩の時間だ。 チャーリーはきっと先に行ってしまうのだから、急ぐ必要もない。 ゆっくりと朝食のサンドイッチを食べてから一服する。 予想通り先に行くチャーリーの後を、のそのそと付いて行く。 向こうから人の声が聞こえる。 立って話をしているチャーリーが見える。 そして歩いて行くハイカーの姿がちらほら。 昨日僕達より先に進んで行ったみんなだ。 みんなの今日のスタートが遅かったのか、追いついたようだ。 クロエーションは靴下を洗濯している。 “水場がしばらくないだろう、その前にと思ってさ”という事らしい。 服はほとんど洗濯しないし、本当のTrash のように汚い彼でも足下は大事らしい。 ゆっくりとトレイルは登り始める。 山肌を縫うように上がって行くのでなかなか標高は上がらないが歩きやすい。 尾根を一つ越える度に景色が開けていく。 目線の端には、より近づいたMt. Shasta が横たわる。 ![]() ずっと山が連なって伸びている。 その山の側面を歩くので、当然陽当たりもそれほど良く無い。 景色も開けていないし、花も無いのでは歩くしか無い。 少しでも先に進む為に淡々と歩みを進めて行く。 今日も体の動きが良い。 休息の大事さをまた改めて感じる。 長い距離を、長い月日を歩く為には体力を回復させる休息を取らなければ。 そこで蓄えたもの出しながら歩く。 それにもう一つ大切なのは食事だ。 もう僕の体に蓄えられる燃料は無く、投入し続けるしかない。 カロリーももちろんだがタンパク質が欠かせない。 チャーリーを真似して始めたサラミとビーフジャーキーを貪る。 次の補給まで残りも少なく、途中買うことも出来た。 そのため、食料は十分にあるのだ。 昨日の夜はたらふく食べる事ができた。 今日の動きの良さの一因でもあるだろう。 しかし、それでも食べ続けられれば、動き続けられる。 休憩を挟み、チャーリーを追うように歩き続ける。 チャーリーは昨日のへたれ具合が嘘のように元気いっぱいだ。 途中休憩するHuiを追い抜いて行く。 道が単調でいまいち自分の位置を理解できないまま進む。 やっとトレイルが下りた先に小さな橋が架かり、強い水の流れがある。 ここがSquaw Valley Creek だろう。 細い谷だが、キャンプサイトもあり陽が差し込んで美しい。 川の下に下りる道がありそこで水を汲めるようだ。 その川沿いの木々の間にチャーリーは座っている。 陽射しが暑く、日陰が欲しい。 チャーリーのそばに座ろうと思うが良い場所がない。 クモの巣は多いし、斜めだが、横になってしまえば良いか。 水は上から見たよりもゴミが多く、少し濁っている。 食事を取っていると、Hui が追いついて来る。 彼も僕らの近くに来る。 クロエーション達4人も到着。 彼らは僕らとは離れた場所に陣取る。 “ドボン!”突然の大きい音に驚く。 クロエーションが飛び込んだのだ! そんなに深い所があったんだ。 ノットアチャンスやテンジン達も次々に飛び込んで行く。 お風呂代わりに最適だ。 ぼくも飛び込みたかったが遠慮しておこう。 きっとチャーリーはもうすぐ立ち上がってしまう。 案の定、しばらくして歩く準備を始めるチャーリー。 “さて、行くか”と心でつぶやく。 トレイルはさっきの下りを取り戻すように急に登る。 今日の時間配分は悪く無い。 次の水場までが長く10mi以上、約4時間といったところか。 そこで水を汲んで、次のジープロード付近でドライキャンプを狙う。 まだ先は長いがこのまま行けば十分余裕を持って着ける。 チャーリーの脚は相変わらず早い。 あのペースだから傷めるのではないかと言ってやりたい。 こっちはこっちのペースで歩いて行こう。 一つ林道を跨いで更に進むと徐々に景色が開けてくる。 今日もとても気持が良い天気で、ハイキング日和だ。 のんびり歩く僕をHui が追い抜いて行く。 稜線の近くに出ると、向かう方向の稜線がきれいに見渡せる。 目で見てしまうと更に長そうに感じるのはなぜだろう。 とにかく飽きないように歌を歌ったり、無になり歩いたり。 ただ何も無いからといって退屈でも無く、虚無でも無い。 心の中は満たされていて、とても気持ちが良いのだ。 地図ではジープロードとなっている道を過ぎると途端に景色は広がりを見せる。 いよいよ間近に迫ったMt. Shasta が見える。 昨日よりも山の細かい状態がわかる。 まるで富士の宝永山の様な側火山まである。 ![]() カーブを曲がるとHuiが座っている。 携帯をいじっているのでどうやら恋人と連絡を取っているようだ。 ここは電波の状態が良いのだろう。 Interstate Highway が近いから通信設備もしっかりしているからだろう。 立ち止まり、軽くスナックを食べる。 チャーリーはどこまで行ってしまったのかな。 せっかくだから一緒に歩きたかったのに。 Hui はまだ携帯と相対しているので先に歩き出す。 きっと彼なら直ぐに追いついて来るだろう。 トレイルの進む先のCastle Crag が見えている。 景色はだいぶ近づいて来ているようなのに遠い。 トレイルが大きく迂回して進んでいる為だ。 ![]() 北に向かうはずがずっと西に進み、今度は南へ向かい始める。 2miほどでやっと北を向いて歩けるようになるが、まだまだだ。 救いなのは緩やかな下りということ。 筋肉の負担が大きくなるほどの斜度も無く、とても歩きやすい。 しかし、いっそのこと急斜面でも真っすぐなら早いのにと思う。 細く急なGully から水が勢いよく落ちている。 ここが水補給を予定していた、Fall Creekだろう。 ここから下はCreekなのかも知れないが、ここはどうみてもGully だ。 予定通り水を汲んではみたものの、チャーリーの動きは全く不明だ。 いったいどうゆうことなんだ。 ずいぶんと時間が経つが全く彼の姿を見かけずにここまで来ている。 もしかしたら、トイレに行っている彼を追い抜いてしまったのかも知れない。 いやそれとも本当にただの暴走だろうか。 状況は読めないがここで待っていても始まらない。 少しでも先に進むのが良さそうだ。 この先にジープロードとぶつかる場所がある。 一応そこが今日の終了点になるはずだ。 ここまで同様これといったものが無く退屈なトレイルだ。 下にはトレイルに並走するように通るジープロードが見える。 トレイル沿いには平坦でキャンプできそうな場所はない。 けれど、ジープロードのほうにはできそうな所も見られる。 もうすぐトレイルとジープロードが出合う。 チャーリーは待っているだろうか。 時間は午後6時を過ぎている。 ジープロード出合いに着くと、道路上も広くキャンプできそうだ。 しかし、先日と違い、気持ち良い場所では無い。 “チャーリー”と声をかけてみる。 どこかにいるはずだと思うからだ。 ここが今日の終了点と一緒に決めたはずだからだ。 僕はそれほど特別な事を願ったつもりは無い。 だが、うすうす予感はしていたが、チャーリーはいない。 先に行ってしまったのだ。 それを証明するものが地面に残されている。 “← Coke” 意味が分からない。いや、意味はわかる。 でも理解し難い。いや、理解したく無いのか。 そんな無理してまでコーラに依存しているわけではない。 ただ、なんだかこんな稚拙な事に乗る自分がいやなのだ。 でも乗るしか無いじゃないか。 こんなことでチャーリーと離れるのは嫌だ。 ったく、昨日のあの泣き言はなんだったんだよ。 禁断の、禁忌の、一歩を踏み出す。 そう、残り約5mi を歩き、30mi を越え、街に行くということだ。 禁忌を破った僕にできる事は、ただひたすら歩き続けるだけだ。 余計な事を考えるだけ疲れる。 体は音を立て異常を知らせる、心はブレーキをかけようとする。 それを自ら操り、隠し、伏せて進むのだ。 所々、チャーリーからのサインが残る。 “Bed”“Pizza”“Ice Cream”こんなことでごまかされるか! 適度な斜度の下り道は脚を速める。 しかし、負担は大きく辛い。 その負担を少なくする為にはブレーキを少なくして、走るように歩く。 集中力を維持し、素早く判断して歩き続ける。 景色は流れる速度を増して行く。 歩け歩け、進め進め。 途中空腹に勝てず、立ち止まり残り物を食べ尽くす。 今更残しても意味が無い。 開いているものは全て食べてしまおう。 腹は十分にふくれ、あとは歩くだけだ。 エネルギーを供給された体は動きを活発化させる。 トレイルは歩きを加速させる斜度を再び作る。 もう面倒なので走り始める。 滑るようにいくつものカーブを避けて行く。 突然現れた看板はトレイルの終わりが近いのを告げているようだ。 急に人里の雰囲気が周りにしてくる。 Gate を過ぎると直ぐに道路に出る。 長かった、本当に長い下りに感じた。 ここにもチャーリーはいない。 道路に沿って歩いて行く。 久しぶりにあるくアスファルトは硬くて歩きにくい。 小さな橋を渡ると踏切がある。 R×R と書いてあるのは、Railroad(鉄道)の略らしい。 線路を渡り道に沿って下って行くと、車の音と大きい高架が現れる。 あれが、I-5 だろう。 道を下りきったところのカーブミラーに寄り掛かりチャーリーが座っている。 勝手な行動に腹が立ったので何か言ってやろうと思っていたけれど、もうどうでも良い。 しかし一言“You are So Crazy!”と言ってやる。 それでもチャーリーは笑顔で、楽しかっただろ、と無邪気だ。 もうお手上げだ。 バックパックを下ろして座り込む。 “サインは見たかい” “ああ、見たよ” 疲れも大きく、しかしゆっくりもしていられないので立ち上がる。 時間はもう午後8時、結局34mi を歩くロングデイとなる。 陽ももうすぐ暮れる。 このI-5 に着いた所で何かある訳では無い。 南西にしばらく歩けば、Castella に着く。 Small Town だと言われているが街にはほど遠いようだ。 小さなストアとキャンプ場のシャワーとポストオフィスがあるらしい。 ハイカーにとって必要充分で贅沢な状況だがここでは久しぶりのZero Day を取るつもりだ。 Zero Day を満喫する為にはなんとも乏しいのだ。 ここから北東に行くと、Dunsmuir という街がある。 そこまでは5.5mi、約9キロの道のりがある 歩くのがハイカーの仕事だ。 しかし、道路を歩くのは本当に辛い。 ましてやこの時間だ、あと二時間も歩きたく無い。 だからこそヒッチハイクをするのだが、上手くできない場所もある。 ここはInterstate Highway、日本で言う高速道路だ。 その周辺でヒッチハイクするには入り口前しかないだろう。 ところが田舎の道路の入り口じゃ交通量もたかが知れている。 何台かにアピールするも芳しい反応は無い。 二人とも面倒な気持ちになっている。 Echo Lake で二時間近く待ったのもトラウマになっているのだ。 だったら危険を承知で、高速道路上でヒッチハイクをすることに。 僕もチャーリーも迷いが無く、そうする事に決めて坂を上る。 Interstate Highway 上は普通のHighway よりも面白いほどのスピードで車が走っている。 ちょっとだけここに上がった事を後悔する。 しかし、ぐずぐずしていても進めない。 Hiker to Town のバンダナを掲げる。 当然ながら、ものすごいスピードなので運転している方も良く見えないのだろう。 通り過ぎる直前に運転手と目が合う事はあっても止まる事は無かった。 何台も、何台も通り過ぎて行く。 インターチェンジから上がって来た車も止まらない。 下でヒッチハイクしていたら止まったのだろうかと考える。 あの時のトラウマはまだ癒えていないのだ。 また下から車が上がって来る。 どうせ止まらないだろうと思っていたら、その車はスピードを緩める。 近くに来て初めて気づいたのは、それがHighway Patrolだということだ。 “おい、おい。やばいな。” 車は僕らを通り過ぎたあと路肩に止まる。 チャーリーと目を合わせる。 車から降りて来たのは、30代前半だろうか、一人の警官だ。 顔はスペイン系で、優しそうな目をしている。 でも、何を言われるのかわからない。 “ここで何をしている” そう問いかけられてチャーリーが話をしている。 僕達がPCTハイカーだと言う事。 そして街に行きたい事。 その為にヒッチハイクしている事。 警官は怒っているようには見えないが、思案しているようだ。 なにか無線でやり取りをした後に“街まで送って行けると思うよ”と一言。 意外な展開になる。 先程の無線は、本部へ許可を取っているらしいのだ。 チャーリーと再び目を合わせて、心の中で親指を立てる。 無線でまた話をした警官は僕らにIDの提出を求める。 身元を確認した上で“車に乗りなよ”と気軽に声をかけてくる。 どうやら本当にパトロールカーをヒッチハイクしてしまったようだ。 急いで荷物を担いで車に駆け寄る。 前席と後部席はフェンスで仕切られているが、凶器は無いかと尋ねられる。 今までずっと旅を共にしているビクトリノックスを渡し、後ろに乗り込む。 僕らはとても臭い。本当に臭い。 そんな僕達を乗せてくれて本当にありがとう。 感謝の言葉しか無い。 歩いたら遠いはずの街“Dunsmuir”も車だと10分もかからない。 車はまっすぐモーテルに向かって行く。 他にもあるのかも知れないが、街の中心部に近いようだ。 それに、この街を良く知っている人が案内してくれたのだから間違いないだろう。 モーテルの前に止まるパトロールカー。 その中から出て来るハイカー二人。 一体どんな光景なのだろうか。 ![]() “忘れ物はないかな” 本当に感謝を言葉でしか伝えられないし、伝えきれない。 “Thank you!” 車はあっという間に見えなくなる。 モーテルの入り口を入りカウンターで受付をする、 出て来たのはインド系の人だ。 チャーリーはジャグジーが無いかと尋ねている。 残念ながら無かったようだが、料金はそれほど高く無い。 他に行くつもりも無いので、ここに部屋を取る。 部屋に入るとチャーリーがと言う。 “彼はパトロールカーが来てびっくりしたらしいよ” そうだろう、乗せてもらった僕たちでさえ驚いているのだ。 部屋は普通の二人用の部屋だが、とても清潔で気持ち良さそうだ。 しかし、部屋を楽しむよりも先に腹を満たしに行こう。 もうぺこぺこだ。 せめて顔くらいは、と思って洗う、すると茶色い水が流れ出す。 ついついのんびりしたくなってしまうが、急いで食事に向かう。 時間はもうすぐ午後9時になる。 日本の飲食店ならまだ閉める時間では無いが、アメリカの田舎町は平気で閉まる。 まだ開いているかどきどきしながら急ぎ足で歩く。 もしも開いていなかったら、なんの為に無理して歩いたのかわからない。 この街はメインストリート一本の中にほとんどの店が入っている。 それ以外は特にこれといったお店もなさそうな小さな街だ。 しかし、ここもゴールドラッシュ時代に栄えた街のようだ。 他の店のほとんどが閉まっている中、目的のPizza Restaurant は開いている。 もちろんお腹は減っている。 しかし、残った食料をありったけ食べて歩いたせいか、いつも程ではない。 ピザの大きさで悩んでチャーリーに話すが“食べられるさ”と二人でLarge を一枚注文。 トッピングはチャーリーの大好きなペペロニにトマトだけのシンプルなピザだ。 飲み物はもちろん、ダイエットコークとレギュラーコーク! ピザの出来上がりを待つ間にカップの中はあっという間に空になる。 もちろんおかわりはFree だ。 大きいピザの前にPCTハイカー二人は敗退する。 チャーリーは疲れすぎて、僕はやはり食べ過ぎのようだ。 ハイカーは本当に良く食べる。たくさん食べる。 しかし、胃が小さくなるのかいっぺんには食べられないのだ。 今どんなに満腹でも一時間もすればまた腹が空いて来るだろう。 店もちょうど終わる時間のようだ。 店内を掃除し始めている。 残ったピザを持ち帰りにして店を出よう。 最後に追加したコーラのカップを持って。 通りはすっかり暗くなり静かだ。 帰りに鉄道の駅をチェックして帰る事にする。 チャーリーは明後日の朝、ここから旅立って行くのだ。 駅前の通りはメインストリートよりも更に静かだ。 モーテルまでの帰り道にグロセリーに寄って、スナックとアイスクリームを買う。 さっきお腹一杯になっていたはずじゃないのか、俺の腹! 二人上機嫌で、気持ちの良い夜の空気を吸いながらモーテルへ向かう。 途中にバスストップがあり、時刻表が書いてある。 明日はこのバスに乗って、Mt. Shasta へ向かう予定だ。 時刻表を見ると、ふと気づいた事がある。 “そういえば、チャーリーって本当はどこまで行きたかったんだっけ” というのは、彼は当初車をレンタルするはずだった。 しかし、どんなに探しても近くの街に見つからず諦めていたのだ。 Yreka で借りられるのは知っていたが、そこに行く手段が無かった。 “Yreka までならバスで行けるみたいだからレンタルできるんじゃない?” “Sounds good!” アムトラック鉄道は高いし遅いし、チャーリーとしては仕方なくという感じだった。 “ありがとう!”とチャーリーは上機嫌。 部屋に戻りシャワーを浴びて綺麗になろう。 チャーリーは早速鉄道の予約を解除する為に準備している。 ところが、ハプニング発生。 “携帯が無い!”チャーリーが叫び出す。 なんてことだろう。 きっとパトカーの中に落としたのだろう。 チャーリーの落とし癖は今に始まった事じゃない。 僕も落とし物が多い方なのだが、チャーリーは上をいっている。 サングラスは既に二回無くして今は三個目だ。 クレジットカードも一度無くしている。 電話を掛けてみるとコールはするのでどこかで生きているのだろう。 パトカーに乗る前まではあったのは覚えている。 僕の携帯で警察署に電話するように言うが遠慮している。 以前に通話料が高いのを話していたからだろう。 海外通話ができるテレフォンカードがあるので、それで電話することに。 事情を説明して、あとは待つだけだ。 僕達は本当にハプニングに恵まれている。 だからこそ人生は楽しいのだと、やっと思えるようになった自分がいる。 シャワーを浴びて汚れを落とし、最低限のものを洗い明日へ備える。 そのままでは臭すぎる。 バスタブに湯を溜めてゆっくりと体を癒す。 疲れが少しずつ流れ出ているような感覚がする。 バスルームを出るとチャーリーが興奮している。 “携帯が戻ってきたよ!” 僕がシャワーを浴びている間にあの警官が届けてくれたようだ。 なんて親切な人なのだろう。 本当に感謝、感謝だ。 なんとか今日も無事に一日を終える事ができるようだ。 僕はベッドに横になり、テレビを見ながらコーラを飲みくつろぐ。 ああ、なんて幸せな瞬間なのだろう。 Hui はどうしているだろう。 なんとなく申し訳ない気がする。 また会う事ができたら良いな。 明日はMt. Shasta という街に行き、補給をしながらZero をとる。 どんな一日になるのだろうか。 二人で“Bed 最高!”と言いながら夜が更けていく。 -"soda pop"Turtle
7/31(Sat) Hiking Day78 / 20mi /8:40am-5:40pm (9:00) /NB 1449mi
“Fatigue” 疲れが残るまま朝を迎えた。 すっきりしない僕らと同様、薄くぼんやりした青空だ。 今日は時間を気にせずに寝るはずだったが定刻で目が覚める。 もちろん二度寝に入り、ぐずぐずした朝を過ごす。 とはいえすることも無く、場所も決してすてきとは言えない。 頭の中にもやがかかっているような感じだ。 確実に昨日のダメージが大きい。 しかし、今日も歩くんだ。 午前8時を過ぎてやっと動き始める。 9時出発を目指していたが、その前に片付けられたので出発することに。 Huiはどうやまだ眠いらしく、グズグズしてたが片付けが早い。 まずは道を探さないと行けない。 トレイルの近くには必ずいるはずなので手分けして探すと直ぐにマークが見つかる。 やはり暗闇はライトがあっても人の感覚をほとんど奪うのだ。 トレイルは平で歩きやすいし、もっと良いキャンプスペースがある。 もう少し明るさがあれば、もっと安全な場所を選べたのだ。 昨日はほぼ平坦からやや下りだったが、今日は大きく登る日だ。 すでに斜度が付き始め、山の中に入って行く。 森は深く山は軟らかく、日本の山容に似ていると思う。 ところが谷の作りがダイナミックなのだ。 重い体を引きずって一時間ほど緩やかに登って行く。 大きな谷間を詰めて行った先にはRock Creek に架かる立派な橋がある。 Yogi 曰く、ここは泳ぐのにちょうど良いと言う。 ![]() 確かに気持ちの良い深さのある川だ。 水の補給をしてのんびりする。 今日の朝チャーリーは、今日は歩かない!と豪語していた。 睡眠が足りないので、ここで昼寝も良いと思う。 ところが、チャーリーはしばらくして歩き始める。 おいおい。 結局いつもと大して変わらないまま、また歩き始める。 Hui は眠そうに、まだ座ったままだ。 トレイルはいよいよ本格的な登りに入って来る。 斜度は決して急ではないものの、ピークまでは12mi以上ある。 トレイルからは登るべき山が正面に見えているのだが、あの奥に進まなきゃ。 なにげにかっ飛ばすチャーリーの相手はしてられない。 自分のペースをしっかり守って疲れないように歩こう。 それよりも気分が乗ってこない。 歌を歌う気にもなれない。 ぼーっと、ぼんやり、歩いて行く。 木々は濃く、山は深い。 今日は景色がほとんど目に入ってくることはなく、歩く。 黙々と。 淡々と。 チャーリーも同じように歩いているのか、彼の姿は見えない。 毎日歩いていて飽きないのかと言われることがある。 自分でも不思議なくらいそういう感じは無い。 単調な場合つまらなく感じることはある。 でも、それはそれで何も考えずに歩けるから悪く無い。 時間だけが過ぎ去っていた。 その時間の長さに比例して距離もいつの間にか伸びている。 山の中なのだがたくさんのジープロードを横切る。 ほとんどが作業道なのだろう。 疲れていて歩くのは楽じゃないのに体は動いている。 それにゆっくりなペースだと疲れにくい。 いつもなら2時間くらいすると休むのに、3時間近く経っている。 もうすぐ水場に着くはずだ。 またジープロードにぶつかる。 ここは綺麗に整備されているようだ。 Peavine Creek があるはずなのだが、どこだろう。 道の斜め向かいにトレイルが続いている。 そこの日陰にはチャーリー、そしてCroatian Sensation の姿が。 “おおっ!クロエーション!” ずいぶん久しぶりでびっくり、まさか追いつくなんて。 “Not a Chance はいるのかい?” “今水を汲みに行っているよ。” すると、Hi 、と声がして振り返るとノットアチャンスが歩いて来る。 話がしたいが僕もまずは水汲みに行こう。 Peavine Creek にも泳ぐのにちょうど良い場所があるらしい。 ここから少し歩くようだが、キャンプサイトもあるらしい。 水を汲むだけなら、今来たトレイルのすぐそばにある。 さっきは見えなかったが、少し草を分けると水の流れがある。 水を汲み戻ると、座っていつもより遅めの昼飯だ。 食べながら四人で今までのことを話す。 二人に会ったのはいつのことだろう。 たしか、Tuolumne Meadow 以来かも知れない。 彼らも昨晩僕らが泊まった所の近くで寝ていたらしい。 あのまま道を間違えずにいたら会えたのかも。 僕らの40miオーバーの武勇伝を呆れながら聞いている。 また二人に会えたのはとても嬉しい。 クロエーションとノットアチャンスは先に歩き出す。 クロエーションの格好はずっと変わらず、前以上に汚い。 ノットアチャンスは女の子だけあって綺麗にしているが、見る度に変わる。 今回はホットパンツにロングゲイター。 袖のちぎれたTシャツだ。 アメリカだなあ。 チャーリーも先に歩いて行ってしまうが、少しのんびり。 とても静寂感のある、気持ちの良い時間を過ごす。 結局チャーリーはゆっくりできない質(たち)なのだな。 Huiが追いついてこないのが気にはなるが、ぼちぼち僕も歩き出す。 まだ長い長い登りは終わらないが、あと少しのはずだ。 えっちら、おっちら、えっちら、おっちら。 気持ちが乗らないのは変わらないが体は元の動きを取り戻しつつある。 またジープロードが現れる。 地図を見ると、まだまだ林道と交差するようだ。 林道は地図を読む上でも一つのポイントだが、これだけ多くては逆に迷う。 地図の縮尺が大きいと載らない道も当然あるからだ。 向こうには更に近づいたMt.Shasta が見える。 火山だというのがわかりやすい形をしている。 ![]() 今日は無理をせず、約20miだけ歩くことにしている。 目的地には水が無いので、手前で水を汲まなければいけない。 その水場は林道に沿ってあるので、どこを歩いているか把握しないとならない。 けれども、今のところさっぱりわからない。 考えるのも面倒くさいので勘に頼ることにする。 今日も美しい花々に心癒される。 クルマユリが咲いている。 ![]() これはゴマナだろうか。 日本の花にそっくりだが、また違う花なのか。 ![]() 今度はまるでミヤマキンポウゲそっくりだ。 こうして花を見ながら歩くのは、また山の違う楽しみだ。 ![]() 時間的にはそろそろ着いても良さそうになってきた。 勘に頼るとは言いつつも、慎重に判断する。 ところがさっぱりわからない。 真東に横切っている、と言うことだけが今のたよりだ。 短いスパンで林道をいくつも横切り、もう何がなんだか。 やや開けている林道に出た。 もう一度地図に目を凝らす。 すると林道の下から僕を呼ぶ声が、チャーリーだ。 どうやら水場はこの下らしい。 また、道路を横切ったトレイルの手前には、Water、のサインが。 ハイカー同士の支え合う気持ちに感謝する。 サインが無くならないように整えておこう。 水場は林道を東に少し下った先にある。 Deadman Creek の源流近くに当たるようだが、あまりよろしく無い名前だ。 林道脇のブッシュの細い踏み跡を下ると小さい流れだが水の勢いは強い。 蚊がものすごく多く、防ぐものを何も用意して来なかったことを後悔。 とっとと水を汲み、退散しよう。 トレイルの前まで行くとすでにチャーリーの姿は無い。 Hui が迷わないように、枝を拾って大きいサインを残す。 今日と明日の分の大量の水を担いで出発する。 ブッシュの濃いトレイルが続く。 いつの間に登りは終わっていたらしいが、細かいアップダウンが続く。 水の重さと体の重さで、つらく長い3mi だ。 Logging Roadに飛び出す。 稜線にあたる場所なのだろう、とても見晴らしが良い。 ここが今日の終了点。 時間はなんだかんだと、午後5時半を回っている。 チャーリーはすでにテントを立てている。 どうやら元気だったのではなく、とても疲れているようだ。 早く休みたくて、早く歩いていたということらしい。 水場の無い場所でキャンプすることを、Dry Camp と言うらしい。 今日のように水を大量に担がなければならないのが大変だ。 しかし、水場に縛られずキャンプできる良さもある。 それに蚊がいないのが、なにより助かる。 硬い地面だったがなんとかペグも打ち込める。 僕もテントを立て終えてのんびりする。 チャーリーはあっという間に食事も終えてテントの中に引きこもる。 夕食を食べて、ほっと一息ついているとやっとHui がやって来る。 “どうしていたんだい?”と聞くと、 “昼寝をしていてさ”と答えが返って来る。 チャーリーはテントの中から声だけかけてくる。 本当の引きこもりみたいだ。 Huiはいつも通り、プロテインドリンクを1リットル、ごくごくと飲んでいる。 美味しいのだろうか。 僕はやっぱりHot Meal が食べたい。 Huiが“夕陽が綺麗だよ”と言う。 本当に綺麗な夕陽だ。 空気が乾燥しているせいだろうか。 ここは良く見渡せる場所だ。 だが、あの太陽はまだまだその明るさを保持し続ける。 それは昨日証明済みだ。 今日はそれでも20miを歩いた。 本当に疲れた、いや、疲れていたのか。 昨日40mi歩いても、今日20miじゃあなあ。 まあ、人間体力もさることながら、精神が大きく左右するということだ。 ストレッチを入念にしよう。 そして、今日はもう寝よう。 まだ明るさは残っているが横になれば直ぐに眠りに入れる。 たまにはこんなのも良いだろう。 だって、ほんとに、ああ、疲れた。 8/1(Sun) Hiking Day79 / 26mi /6:30am-5:30pm (11:00) /NB 1476mi “Scenic” 山の中で寝る時、寝付かれない時がある。 緊張しているせいか、まるで動物のように常に神経を立てている。 しかし、いつからかまるでそんなこと無かったかのように熟睡する自分。 昨日もまた、目をつぶった次がもう朝になっている。 さすがにゆっくりと休んだので、体も頭の中もすっきりとしている。 チャーリーもHui も快調そうだ。 とうとう8月に突入! 気合い入れて歩かなければ。 次の補給地点Dunsmuir までは残り60mi。 今日は特にハイライトが無い区間で気乗りしないが少しでも前に進みたい日だ。 目標はできたら、30miだ。 昨日たっぷり登ったお陰で、今日は稜線付近をのんびりハイク。 細かくアップダウンがあるのでだらだらとはいかないが何も考えずに歩ける。 景色も大きい変化が少ないが見晴らしが良く気持ちいい。 まあるい大きな綿毛がゆらり揺れている。 タンポポの綿毛のようだが、ずいぶん大きい。 ![]() 見る度いつもはしゃいで綿毛を飛ばす妻の姿を思い出す。 彼女はもうすぐグアム旅行のはず。 元気かな。 太陽が今日も美しい陽射しをつくり、体を温めてくれる。 紫色の綺麗な花が咲いている。 ![]() チャーリーはこの花は火事の後などの開けた場所に咲くと言う。 確かに立ち枯れした木が多いのでそうなのかも知れない。 その向こうにはまた一段と近づいたシャスタ山が見える。 ![]() 今日は退屈な山歩きになるのかと思っていたがそんなことなさそうだ。 山はどんな場所でもどんな天気でも、いつでも楽しめる。 今度は薄黄緑色の小さい花だ。 ここは日本と海を挟んで遠く離れているのに、良く似た植物が多い。 ![]() 次はまるでゴゼンタチバナの様だ。 尾瀬に咲くゴゼンタチバナはもっと小さく可憐だ。 ![]() 色とりどりの花達がハイカーの心をそっと癒してくれる。 ![]() 途中チャーリーと僕は休憩をとるが、Hui は進んで行く。 今日はみんなコンディションが悪く無い。 やはり、しっかり時間をかけて休むことが必要なのだ。 とても気持が良い、稜線のトレイルは続く。 地図を見ただけでは、単調なのかと思っていたがそんなことない。 歩いてみないとわからないことは本当にたくさんある。 流れるように綺麗な風景が過ぎて行く。 標高は1500から1600m位あるのだが、こんなに上まで林道がある。 林業のためか、防災のためか。 しかし、未舗装のままなので風景や雰囲気を壊してしまうことはあまり無い。 日本だったらアスファルトにしてしまい、景色も台無しだろうが。 ほとんど大きな標高差もなく、ピークを踏むことも無い。 なので、今どこにいるのか時々わからなくなる。 凛と咲く花が僕らに挨拶をしてくれる。 綺麗なヤマユリだ。 ![]() チャーリーは快調に飛ばしているので姿が見えなくなる。 とはいえ数分の差もないのだが、ずいぶん先に行ってしまった気がする。 面倒だし、栄養をしぼり取る為になるべく出さないようにしている“大”がしたくなる。 稜線付近だと広い場所も隠れやすい所も少ないので探しながら歩く。 鋭いカーブを曲がった辺りはとても景色が良く、目の前にシャスタ山が見える。 この奥が“事”にちょうど良さそうだと思い、バックパックを置いて入って行く。 草をかき分けて入るとちょっと開けて良い場所がある。 だいぶリミットが迫っているので急がなければ。 ふと横で物音がするので見ると、作業中のチャーリーがいる。 はっと目が合ってしまってお互い気まずい。 “ここは僕の場所だよ”とチャーリーの声。 “ごめん” 少し場所をずらすことにしよう。 トレイルに戻るとチャーリーが歩いて行く所が見える。 それにしてもMt. Shastaが良く見える。 そして地球が丸いのが良く分かる。 そういえば、パワースポットとしても有名だと妻が言っていた。 写真を撮ってメールして欲しいと言っていたので渾身の一枚を撮る。 しかも都合の良いことに電波が入るのでついでにメールもしておこう。 ![]() それにしても、アメリカ人は中腰で“する”ものなのかな? 和式無いしね。 まあ、いいや。 追いかけるように歩き出すが前の二人は早い。 途中で休憩中のHui を追い抜いて行く。 チャーリーの早さにほとほと呆れてしまう。 今に始まったことじゃあないが。 風景の良いトレイルは続いて行く。 広々とした景色の中歩くのは本当に気持が良い。 北側を向き、思いを馳せる。 あそこをずっと歩いていった先にCanadaがある。 ![]() ![]() またMt. Shastaが正面に見える。 見る度に思うが、本当に富士山に良く似ている。 その裾野の広さもまるで富士山だ。 今までは連なる山並の中を歩いて来たが、ここに来て独立峰が目立つ。 ああ、美しい。 ![]() チャーリーに追いつき一緒に歩く。 稜線付近にも関わらず、今日もたくさんの林道を通る。 荒れていてトレイルと間違えそうになるが、お互いにフォローし合う。 Grizzly Peak から流れるSeasonal Creek はまだ十分な水量を持っている。 そこでHui とも合流し、ここからは三人連なって歩いていく。 三者三様の歩き方、スピードだが、みんな調子良く進む。 途中チャーリーのスピードが少し落ちて来る。 あれだけ飛ばしていたから疲れてきたのだろうか。 “チャーリー、どうしたの?” “ああ、ハムストリングスがちょっと痛くて” チャーリーはふくらはぎの後ろ側が傷む癖があるのだ。 あなた休まなすぎですよ、と言ってやりたい。 トレイルは標高をぐっと下げ、Creek を横切る回数が増えて来る。 いくつ目かのクリークにさしかかると人の声がする。 クロエーションとノットアチャンスだ。 その他に二人ハイカーが一緒にいる。 一人は良く見かけるハイカーだったが名前を覚えられずにいる。 以前家から送ってきたという手作りのクッキーをくれたことがある。 もう一人はとても小柄な独特な雰囲気のハイカーで初めて会う。 僕の耳には、テンジン、としか聞こえないが、Tangentというトレイルネーム。 なぜ三角関数なのかはわからない。 水を汲みながら4人で休んでいるようだ。 彼らに軽く挨拶をして先に進む。 山肌を縫うようにして少しずつ標高を下げて行く。 なかなか快調だ。 そろそろ25miを越えるが、時間はまだ午後5時になるくらい。 あと2時間も歩けば目標としている30mi だ。 景色が低くなり、大きな急カーブを曲がってトレイルは伸びて行く。 再び鋭角なカーブを切るところが、Butcherknife Creek。 ここを曲がり降りて行くとAsh Camp という川沿いのキャンプサイトがある。 そこまでは余裕だな、と思う。 Butcherknife Creek に小さなキャンプスペースがあるのがトレイルから見える。 すると突然チャーリーが、ここで終わろう、と言い出す。 “もう限界だ。ここでいいよ” “でも、もう少し下りれば。” Hui は僕らを見ている。 直ぐにクロエーション達が追いついてきて、Hui は彼らと一緒に先に歩いて行く。 “ねえ、チャーリー”と僕が言いかけると、全て言い終わる前に、 “まだ歩きたかったら、一人で行ってくれ。”と言われる。 突然の断固たる宣言に唖然としてしまう。 チャーリーはそのままトレイルからキャンプサイトへと降りて行ってしまう。 今日はまだまだ歩けそうな気持ちでいる。 それなのに突然のストップでは気持ちを持て余してしまう。 “はあ” 大きな溜め息を一つ吐いてチャーリーの後を追う。 ずっとチャーリーと歩いてきて今更一人で行くなんてできるわけも無い。 それにチャーリーとこうして歩けるのも残りわずか。 別れが迫っているのだ。 “チャーリー”と声をかける。 “Thank you” その言葉は、ありがとう、だけじゃなく、ごめん、もたくさんある気がする。 深い谷間なので薄暗く開放的ではないが、整地されたサイトは悪く無い。 ちょうど二人分のスペースがあり、テントを立てる。 時間は午後5時半を回ったところ。 食事をするには早いし、何をしようか。 水もそこそこ流れがあるので、靴下でも洗うことにしよう。 チャーリーがそれをみて、ぼくもそうしよう、と言う。 脱いだ靴下を濡らし、それで足を洗う。 砂埃が付いた脚はすっかり色が変わっているが綺麗に洗い流されて行く。 足も丁寧に指の一本一本を洗っていく。 “気持ち良いね”と言うと“キモチイイ、デスカ?と片言で返して来る。 思わず笑みがこぼれる。 チャーリー、今日も一緒に歩けて楽しいよ。 気持ちが胸に込み上げて来る。 汚れた靴下は一度くらいじゃ落としきれない。 茶色の水が止まらずに出て来る。 完全に透明になるなんて期待するだけ無駄なので、適当なところで切り上げよう。 木の枝に靴下を干して、靴の中敷を出して乾燥させる。 ここは湿った場所にしては蚊がいないようだ。 濡れた足を放り投げ乾かすととても気持が良い。 チャーリーの脚の調子を聞くと、薬を飲めば大丈夫、と言う。 目標には届かなかったが、それでも今日は26mi歩いた。 十分すぎる距離だ。 残りは34mi弱あるので、明日の行程に悩む。 今日30mi 歩いていれば、明日なんとか街に入れるかもしれない。 だが、34mi は少々、大分、厳しそうだ。 スケジュール係の僕は、明日はトレイルヘッド近くまで歩こうと決める。 そして明後日の早い時間に街に入りのんびりすれば良いのだ。 ここまで来て無理する必要も無い。 チャーリーも、良いんじゃない、と同意してくれた。 明日最後に通る水場も確認し、大体のキャンプ候補も決める。 陽が落ちきる前に夕食を終え、ゆっくり日記を書く。 日が暮れたら、今日も入念なストレッチをして眠りに入る。 ここのところギリギリなスケジュールで精神的に疲れを感じていたのだ。 結果的にはちょうど良かったのだろう。 チャーリーとの残り少ないハイキングを明日も楽しもう。 -"drowsy" Turtle
7/30(Fri) Hiking Day77 / 41.2mi /4:00am-9:30pm (17:30) /NB 1430mi
“A Looooooooooooooong Day for Exceed Myself” 本当はもっと早く起きる予定だったが、昨日が遅すぎた。 それでもいつもより早い3時半起きの、4時には出発だ。 Hui は朝の準備が僕よりもかかるので、先に歩き出す。 チャーリーは軽量化の為にライトが小さく、光量も弱い。 夜間歩行には適しておらず、僕が先行して歩く。 昨日見た通り、ここは既に結構な高台になっているらしい。 トレイルは平でほとんどアップダウンは無く歩きやすい。 両側は切れ落ちた絶壁で、その上の台地を歩いているのだ。 ところが、足下は大小の石が多く、時折つま先を痛打する。 背の低いブッシュの中を下に注意しながら黙々と歩く。 少し低くなった場所は水分が溜まりやすいのか、木が生えている。 空がほんのりと明るさを帯びてきている。 遠く大地の中から太陽が飛び出そうとしているのがわかる。 今日も素晴らしい朝が来たんだ。 ![]() 前方には人工物が見える。 近づいてみるとそれはビヴィで、中にいるのはDrug Storeだ。 サブウェイケイブに行っている間に抜かれて、ここまで来ていたようだ。 何も遮るものが無い場所で風は寒いが、空はひたすらに広い。 ![]() 軽く挨拶をして通り過ぎて行く。 歩き始めてから二時間くらい経っているので、少しだけ休憩をする。 体が冷えてしまうので長くは休んでいられない。 しかし、座布団を敷いてしばしの憩いをとろう。 まだまだ抜けるには半分も歩いていないだろうか。 遮るものの少ないここからは素晴らしく見晴らしが良い。 昨日以上に近づいたマウントシャスタが堂々と構えている。 Hat Creek Rim の説明が地図に書いてある。 Dry, Hot, Waterless! なるほど、簡潔な説明でわかりやすい。 時間はまだ8時前だが大分暑くなってきた。 昼間に歩くと言っていたEvan 達は大丈夫だろうか。 さっきの休憩からは2時間くらい、歩き始めてからは4時間くらい。 目の前には明らかに人工物とわかる鉄塔が建っている。 地図に“Old Fire Lookout”と書いてある。 確かに、かなり全体に見渡しやすい気がする。 ![]() ![]() こんな不毛な大地にも花は咲く。 綺麗な花はハイカーの心を癒してくれる。 ![]() ![]() ![]() Fire Lookout から一時間くらい歩いたところに“Road 22”がある。 細いジープロードだが、数少ない下から繋がっている道だ。 そこにウォーターキャッシュがあるらしいのだが、Yogi には書いていない。 しかし、Heitman が言っていた通り、そこにはあった。 ピクルスというトレイルエンジェル置いてくれたフルーツもある。 ありがたいことだ。 チャーリーとクーラーボックスを開けて確認してみるが、熱さで大分やられている。 後のハイカーの為にも、ギリギリのものから食べる。 僕の大好きな、ネクタリンもあり、完熟の状態で甘い。 そうこうしていると、後ろからはDrug Store とHui の姿が見える。 彼らもフルーツにがっつき始める。 水はまだ余裕がありそうなので、やはり後のハイカーの為にも残しておこう。 レジスターの中には既知のハイカーの名前がちらほら。 そこには、クロエーションとノットアチャンスの掛け合いのようなメッセージが。 若干卑猥な内容だが、彼ららしくて面白い。 “私の豊満な胸とLays(アメリカで最も有名なポテトチップス)、どちらがお好み?”Not a Chance “もちろん! Lays!”Croatian Sensation さすがハイカーの発言だ。 それ以外にEric The Black をDevil と揶揄したコメント等、楽しい内容だ。 ![]() 丸ごと一個のメロンを“食べよう”とHui が言い出す。 チャーリーはそれを断って先に歩き出してしまう。 僕はもう少しレジスターを読んでいたかったが、歩くか、と立ち上がる。 とフーイが“メロン食べようよ”とまた話しかけてくる。 さすがに食べ過ぎじゃないかと思ったが、すでに切り始めている。 ついでだから頂いてしまおう。 久しぶりのメロンはかなり熟していて甘さが強く、とても美味い。 残りを食べている二人を置いて先行して再スタート。 もうすでに今日の予定の行程の半分、13miを歩いている。 時間は8時、急ぐ必要は無いのだけれど。 休憩して少し食べたとはいえ、直ぐに腹が減るのがスルーハイカー。 チャーリーはどこで昼飯にするのだろうかと考えながら歩く。 チャーリーの姿は見えないまま歩き続ける。 リムのギリギリを通っていたトレイルが内側に入り単調な道が続く。 ![]() 遠くに溜め池のようなものが見える。 家畜か栽培用だろう、水の確保はこの土地では、全てのものにとって、とても重要だ。 再びトレイルがリムに沿うようになる。 地図を見れば、もうすぐHat Creek Rim が終わりになるようだ。 灌木の木陰に佇むチャーリーが見える。 近くに陣取って腰を下ろし、昼食を食べる。 気持ちよい風が吹くが、腹が膨れると眠気が襲ってくる。 Drug Store が追い抜いて行き、Hui が追いついてくる。 Hui は少し休憩をとるようだ。 “今日はどこで終わりにしようか?”Turtle “さあね”Charlie “どうしようかな”Hui 引き続きRim すれすれを歩いていく。 細いPower Line(電線)を抜けると、それに沿ってトレイルは下りる。 約20mi続いたHat Creek Rim も終わりとなる。 水場まではまだあるので気は抜けないが、一段落と言って良いだろう。 先には荒涼とした大地が広がっているのが見える。 小さな道路にぶつかり、それに沿ってトレイルは進む。 その道路を跨いで平坦なトレイルが伸びている。 チャーリーと僕は気づく度にゴミを広いながら歩いている。 そして、褒め合っているのだ。 ふと目の前に空き缶がある。 相当道路から離れたトレイルのど真ん中の木に引っかかっている。 空き缶ゴミは大抵人が多く来るところにあるのだが、風に飛ばされたのか。 空き缶なんて拾いたくは無いが、目に入ってしまったのだから拾おう。 それはコカコーラの缶だ。 しかも、全てシルバー。 文字があるのにシルバーだ。 これは驚き。 日光で色が抜けてしまったのか、なんなのか。 チャーリーは缶を拾った僕を見て“Good job!”声をかけてきてくれる。 ジープロードを越えて淡々と歩いて行く。 歩きやすくスピードもグングン上がるが、単調すぎて飽きてくる。 そろそろ30mi以上ぶりの水場が近いのだが。 “シュー、シュー”と変な音が聞こえてくると、大きなパイプが見える。 パイプとのつなぎ目から水が漏れ出して吹き出しているのだ。 そこにDrug Store が立っている。 そこから水を取ろうとしているようだが、難しいだろう。 僕達は先に進み、直ぐに小さい水の流れを見つける。 どうやらここが、Rock Spring Creekのようだ。 今日出発から26miになる。 まずは水汲み、そして一休みしよう。 時間は2時半くらい。 水流が浅いので苦労して水汲みをし、浄水剤を入れて待つ。 その間、ボトル式の簡易浄水器でのどを潤す。 すでに一日分は歩いているわけだから疲れていて当然なのだが、心が高揚している。 陽射しが暑いのでチャーリーと離れた日陰で横になり休む。 さて、どうしたものか。 まだ止まるには早いが、ずいぶん歩いているも事実だ。 チャーリーのそばに行って、どうするのか尋ねる。 するとチャーリーは“もう少し歩こう”と言う。 “良いけど、どれくらい?” “Burney Falls まで行かないかい” 薄々わかってはいた。 機能は僕も冗談で、行けたら良いね、なんて言っていた。 その時はチャーリーが否定していたのに、今は逆だ。 Burney Falls州立公園にはPCTハイカーの荷物を預かってくれる売店がある。 チャーリーはそこに次の食料を送っている。 僕はOld Station でピックアップしたばかりだから荷物が重い。 チャーリーは“そこまで行けば大好きなコーラが飲めるぞ!”なんて言っている。 “ちょっと待ってよ、行っても売店の開店時間に行けるかな?” “さあね。行けるかも知れないし、行けないかも知れないね。” なんて勝手なことを言うもんだ。 だったら先に言っておいて欲しいものだ。 今日ここまで歩いた距離は26mi(41km)。 すでに一日歩く距離としては十分すぎる。 そして、ここからBurney Falls までの距離は12mi(19km)。 今から更に半日分の距離を歩こうというのだ。 もう少し休みたいからと言ってまた木陰に戻る。 どうしたらいいかな。 行けるところまでは行きたいが。 Huiが追いついてくる。 二人はどうするんだい、と問いかけてくる。 チャーリーはにやにやして何か話している。 悩んでいても始まらないし、止まるには早すぎる。 よし、歩こう! “チャーリー!行こう!” “もちろんさ!” 現時間は午後3時。 情報によると売店は午後7時まで開いているようだ。 残り時間は4時間。 時速2.5miで歩いたとしたら5時間近くかかるので間に合わない。 少なくとも時速3miで歩かなければならない。 いざ、Go on! Hui はもう少し休憩するようで、先に二人で出発する。 今日の僕らの体調はとても良い。 いや、モチベーションが異常に高い気がする。 今日最高のペースで歩き始める。 向こうの方に湖の様なものが見えるのだが、どうやら人造湖らしい。 建物の間を抜け、一気に人里まで降りて来る。 ここは釣りで人気の場所らしく人の姿が多い。 かえってPCTのルートがわかりづらくなり、釣りをしている男性に道を尋ねる。 期待していなかったが、案の定知らないようだ。 方角に検討をつけて、小さな橋を渡ってみるとPCTのマークが見える。 湖に沿って歩いて行く。 ![]() 正直無謀な挑戦だが、それをする気になったのは理由がある。 この辺りが極端にフラットで歩きやそうだったからだ。 山道であることには変わりないが、フラットであれば時速5キロは出せる。 時速3mi以上だ。 今の僕達ならできるはずだ。 向こうから歩いてきたハイカーがいる。 小柄でぽっちゃりとしたかわいい女の子だ。 名前はChocolate Bandit(チョコレート盗賊)。 同名の歌手もいるが本当のお菓子好きらしい。 彼女はダニエル&ジョーとしばらく一緒だったらしく、僕らの話を聞いていたようだ。 “あなたがチャーリーで、あなたがタートルね” 彼女はNorth Bound で歩いていたのだが、家族の事情で中断を余儀なくされたらしい。 一段落した後、歩けるところをSouth Bound で歩いているようだ。 彼女はウレタンのスリーピングマットをパックの上部からぶら下げている。 マットに穴をあけて付けているようだが、面白い方法だ。 ![]() 彼女と別れたあと、僕らのギアはまた上がる。 単調で特徴の少ないトレイルだがそれもまた面白い。 木々が適度にあり、人工物がすぐそばにある。 日本の低山歩きのようだ。 突然動物が目の前を横切る。 小さな犬のように見えたがなんだろうか。 後ろを歩くチャーリーに話をすると“Coyote じゃないかな”と言う。 あのロードランナーとワイリーコヨーテのアニメのコヨーテだ。 思っていたよりもずっと小さく狐のようにみえる。 警戒心が強いようで、あっという間にどこかに行ってしまった。 Highway 299 を越えるとまた平坦で単調なトレイルになる。 とにかくひたすらに歩いて行く。 時間が経つ意識がなく集中力を途切れさせないようにする。 疲れはあるが気持ちをコントロールして保つしかない。 間を置かないように行動食を補給して空腹をごまかす。 平坦なところを歩き始めて1時間くらいは経っている。 いくつものジープロードを横切って進んで行く。 水筒の水がほとんど無くなってきたが足を止められない。 パックの中にはまだたっぷりあるのだが。 やや大きなジープロードの脇には草原の様な場所が見える。 Arkright Flat という場所のようだ。 本当は止まりたく無いがさすがに水筒の水が底をつく。 足を止めてパックを下ろすとチャーリーが“先に行くよ”と進んで行く。 バックパックから水を出して移し替える。少しだけほっとする時間だ。 さあ!さあ! 自分に発破をかけて歩き出す。 断続的にジープロードと交差しながらトレイルは進む。 ほんの5分も変わらないがチャーリーにはもう追いつけない。 止まったせいでモチベーションが下がってしまったようだ。 後ろからHui が追いついてくる。 彼も本当に歩くのが早い。 “Please go ahead” さすがに疲れが隠せないが、Burney Falls に近づいてきたのは確かだ。 気づくとトレイルの右側が谷の様に見える。 下の方には川があるようなのだが、川にしては流れがないようだ。 谷のリムに沿っていたトレイルが急カーブして曲がり進んでいく。 二人の後を追いながら何も考えずに黙々と歩く。 疲れてきたし、腹も減ってきたが、こういう時こそ何も考えないのがBetter だ。 さっきから車の音が聞こえているが、そういう時ほど近づかないもの。 時間は午後6時を過ぎている。 もう少し、もう少しのはずだと言い聞かせて足を動かす。 木々が濃い薄暗い森をずっと歩いている。 トレイルが開けて明るくなり、緩やかに下り始める。 目の前にはやっと道路が見えて来て、Highway 89 を渡る。 すると、チャーリーとフーイが道標の前に立っている。 “やあ”と言うと“Shin も食べなよ”と言う。 トレイルエンジェルの置いたフルーツがプラスチックバッグに入っている。 この暑さでだいぶ熟しすぎていて、良いところは二人が食べている。 僕は遠慮しておこう。 ここの道標にはPCTハイカーが嬉しくなる様なことが書いてある。 Canada とMexico。 ![]() グッと来る。 写真は撮っておこう。 時間は午後6時30分を回った。 時間はギリギリなので急いでBurney Falls に向かう。 残りはあと1mi なので十分間に合うが、アメリカ人はわからない。 時間前でも人が来なければ閉めてしまうことも普通だ。 川に沿ってトレイルを進む。 キャンプサイトがあるところを過ぎて、後少し。 走るように歩き、大きな道標のあるところへ着いた。 そこには川を跨いだ橋が架かっていて向こうへ渡れるようだ。 その向こう側がBurney Falls State Park のストアがあるところだ。 ![]() 急ぎ川を渡り向こう岸へ行くと明らかに人工的に綺麗に整備されている。 道標の案内のまま、アスファルトの道路を左に曲がる。 周りには止まっているたくさんの車と観光客の姿が多く見られる。 ストアの場所が見当たらないので三人でキョロキョロ。 やっとそれらしき建物を見つけて向かうとガラスの向こうにはたくさんの食べ物がある。 着いた〜! 時間は午後7時ギリギリだ。 結局、僕達はほとんど休みなく、時速3mi以上で歩ききったのだ。 ストアの看板には、情報と違い、午後7時30分までになっている。 安心してストア内を物色しよう。 入り口付近には公園のお土産品が並ぶがその他は普通のGeneral Store の内容。 冷凍食品のみだがホットミールを食べられるようにもなっている。 キャンプ場もあるので、食材となるものや牛乳なども売っている。 初の30mi越え、38mi を歩いたお祝いには、まずはコーラだ。 ところが、Hui はカルシウムのためと牛乳をワンパック飲むらしい。 日本の1リットルパックはアメリカでは珍しいが、ここには売っている。 キャンパーが使い切りやすいようにだろう。 なるほど、それも捨てがたいし、久しく牛乳を飲んでいない。 チャーリーと半分ずつ飲むことにしよう。 もちろんコーラも! 本当は3人ともピザが食べたいのだが、さすがに無い。 その代わりにチャーリーは冷凍のチーズバーガーを選択。 僕とHui はピザの具材を包み込んだ、Pizza Roll を食べることにする。 店内に備え付けのmicrowaveでじっくり丁寧に温めて食べよう。 自分達で持っている食料も、もちろんある。 けれど、自分達でもあり得ないほどの食料を買い込んで外のテーブルに並べる。 夕暮れ時も過ぎた時間に、臭く汚いハイカー3人、貪り食う図。 周りからみればなんとも奇妙なものだろう。 こっちももう慣れたものだけど。 買ったコーラの缶が2口で空いてしまう。 二本目は丁寧に飲もう。 ピザロールはなかなかの味だ。 まあ、ハイカーにとってみればそこそこ食えれば十分すぎる。 甘いお菓子も遠慮なく食べてしまおう。 足りなくなりそうなら、まだ買えるのだ! 閉店ギリギリには食後のアイスを買いに行かなければ。 とにかくひたすら食べて食べて食べる。 ここのストアのアイスは市販以外のソフトクリームがある。 それが意外と面白く、その巻き数で値段が違う様なのだ。 どれくらい違うのかわからないので聞くとちゃんと絵で高さが示してある。 それは素晴らしく体格の良い女性店員に聞くと、 “私はMがおすすめよ”と言う。 なるほど、SとMで倍近く量が違うのに50セントしか変わらない。 Lはさすがにやり過ぎだから、Mサイズに決定! アイスを食べながらこの後を話す。 “さあ、キャンプサイトはどこかな?” すると二人は微妙な顔で返事をして来る。 まさかのまさか、そのまさかのようなのだ。 ここまでで38mi歩いた。一般のハイカーなら3日かけて歩く距離だ。 “ねえTurtle、今日、あと2mi歩けば40mi 越えだよ!”とチャーリー。 “30mi以上歩くのだって初めてなのに、もう十分だろう?” “あとたった2miだよ!すごいと思わないかい!” チャーリー!!!!!! もう言い出したら聞かないのはわかっている。 だとしたら、あとは僕個人の問題だ。 チャーリーとの旅もあとわずか、、、行こう! でも“ああ、わかったよ。行くよ。”と嫌な振りをしておく。 ささやかな抵抗だ。 それにしても、この先は地図を見る限りキャンプできそうな場所が見当たらない。 トイレを急いで済まし、荷物をまとめ今日何度目かの出発。 体力の限界はとうに越えていたはずだが、食べたら元気が出てきた。 まだまだ歩けそうな気がする。気がするだけかもしれないけど。 時間は、午後8時、をとっくに越えている。 自分達の体も意外だが、この明るさにもびっくり。 さすがに日は落ちたのだが、まだ写真が撮れるくらいの明るさはある。 せっかくなので公園の名前にもなっている、Burney Falls を見に行こう。 想像していた以上に美しい滝だった。 この下にも降りられるらしいが、その時間は無い。 もっとゆっくりとこの場所を過ごしてみたいと思う。 ![]() ![]() 滝の高さは約390m 滝壺の深さは約66m 水温は6℃から9℃ 一日の水量は約380,000,000リットル!(100 million gallon!) 束の間の観光も終わり、再び歩みを進める時が来る。 川を渡りトレイルに戻ると急に暗さを増して来る。 さすがに太陽も休む時間が来たのだ。 しかし、僕らの歩みは止まらない。 ヘッドライトを用意し川沿いの道をどんどん進んで行く。 この辺りは平で広い場所も多くキャンプするのには最適だ。 できることならばこの辺りで終わりにしたい。 でも残り2miの為には、まだまだ進まなきゃならない。 キャンプサイトらしき場所を通り過ぎ道路を渡る。 すっかり暗闇に包まれる。 今日は暗闇から暗闇まで歩き続けている。 Night to Night Hike とでも言うべきだろうか。 しかし、朝と違い闇は深くなるばかり。 時間の感覚も距離の感覚も失われて来る。 急坂を上がり、下がり降りた所は取水口になっている。 水力発電でも行っているのだろうか、まるでそんな雰囲気を持っている。 トレイルから道路に出るとどちらに進むべきかわからなくなる。 地図が大きすぎて細部が見られないのだ。 でもきっとこの取水口を横切るのだろう、それしか道がない。 水の補給ができるかも知れないと思っていたので手持ちの水が少ない。 この先も期待できそうに無いな。 アスファルトの上を小さな明かりが揺れている。 反対側に来たもののどこがトレイルなのかわからない。 三人で手分けして探すと、工事中の場所の間から上に伸びている道を見つける。 どうやらここがトレイルらしい。 急で適当な作りの道を上がると、直ぐに道路にぶつかる。 そこから細い道も延びていて、どこに向かうべきかわからない。 暗く遠くを見渡せないからトレイルを見つけ出すのが難しい。 さて困った。停滞するにも寝られそうな場所は無い。 とりあえず道は明日探すとして、今は休む場所を探そう。 よく見ると下には足跡があり、その靴底の跡には見覚えがある。 ガットフックだろうか。 その方向に向かうしか無く未舗装の道路を上がって行く。 気温はだいぶ落ちてきて涼しい。 道路沿いにはPCTマークは見当たらない。 しかし、この方向で問題は無いはずだ、仲間の足跡を信じる。 道路が三叉路になる。 頭上にはパワーラインが通っていてチリチリと音を出している。 足跡はほとんど不鮮明になっている。 どこかでずれたらしい。 ちょうどこの辺りは平になっていてテントを張れるスペースがある。 これ以上動いても良いことは無いように思え、ここで終了とする。 とにかく疲れた。パックを置き、丸太に腰をかける。 時間は午後9時30分になっている。 なんと行動時間17時間30分の長い一日になった。 Hui はとっとと幕を張り始める。 いつもはおしゃべりな彼もさすがに疲れているのか、口数は少ない。 僕も整地をして幕を張り始める。 遠くから楽しそうな人の声が聞こえる。 どこかでパーティーでもしているようだ。 状況はまったくわからないが、パワーラインといい人里はとても近いのだろう。 幕の中に入り込み、とっておきのコーラを取り出す。 祝杯用にわざわざ担いできたのだ。 一人祝杯をあげる。 きっとみんな喜びをかみしめているのだろう。 それぞれの胸の中で。 いや、それとも疲れでぼーっとしているだけかも知れない。 僕は、歩けた僕に驚きと感謝を感じている。 人はこんなに動けるものだったのか。 何かを飛び越えたそんな気がする。 この場所はそんなに人里に近いのか、携帯の電波が入る。 久しぶりに日本に連絡をして無事を伝える。 三ヶ月もこんな生活を続けてきている。 人の生活がより遠く、より近くに感じる、不思議な感覚だ。 まだまだ続くこの生活を僕はどこまで楽しめるのだろう。 楽しまなくても良いのかもしれない。 また明日が来たら歩く。 ずっと進み続けることが人の道なのかも知れない。 明日もまた未知への旅が始まる。 "madness" Turtle
7/29(Thur) Hiking Day76 / 7mi (Nero) /3:40pm-7:40pm (4:00) /NB 1389mi
“Good See You” 思ったよりも夜が冷えただけじゃなく、ベッドの底冷えが応える。 せっかくのベッドだったが、熟睡とはいかなかった。 寒い朝、天気は今日も良いようだ。 この寒暖差の大きさもカリフォルニアの特徴の一つ。 まだ空は少し青みがかかっている。 ツリーハウスの下ではジョーがまだ寝ている。 ガレージの溜まり場に行くと、早起きグループはそれぞれの時間を過ごしている。 モーニングコーヒーを飲もうと思ったが、トレイルエンジェルの朝は早くないようだ。 特にすることも無くぼんやりと朝の柔らかな時間を過ごす。 たまにはこんなほっとできる時間も悪くない。 目覚めが“ゆっくり”なハイカー達も起き、ハイカーにとっては遅めのブレックファストが始まる。 フレンチトーストとベーコン、暖かいコーヒーを食べると、活力が湧いてくる。 とはいえ、早くても昼くらいの出発を予定しているので準備はゆっくりだ。 ここの奥さんがバリカンを持ってやってくる。 突然、Huiの断髪式が始まる。 少し髪が伸びすぎているところはあるが、僕ほどでは無い。 Huiは髭も綺麗に?生えないのかもしれないが、清潔にしているようだ。 バリカンで上手いこと髪を綺麗に切っていく。 意外に見事な腕だ。 僕もお願いしたかったが、せっかくだから最後まで伸ばそう。 イベントが終われば、特にすることも無い。 ここのコンピューターは日本語を表示できないため、日本へのアクセスも難しい。 そうなると、ただハンモックに揺られるくらいしか出来ない。 時間は過ぎ、昼前にもなれば腹が減る。 チャーリーと、ストアで食事をしてから出発しようと話をする。 正午くらいの出発を予定する。 ガットフックはその前に出発する。 どのように進むのか尋ねるが、普通に行くよ、という。 彼ならば大丈夫だろう。とても研究熱心だし、きっと考えがある。 そろそろ、僕達もという時間になっても動き出さない二人がいる。 Joe とHui だ。 ジョーはまだ悩んでいるらしく、結論を出さない。 チャーリーとしてはそれを待ちたいらしい。 またハイカーがThe Heitmanに訪れる。 おお!久しぶりのEvan、Noga達だ。 再会を喜び合う。 彼らとは、Echo Lake で会ったきりだが、ほとんど一日違いで動いていたようだ。 僕らもここまでNo Zero、彼らもここまでNo Zeroだ。 このあとどうするんだい?とEvan。 ゆっくりしたいけれど今日出るよ、と僕。 ジョーやダニエルのことを話すと心配そうだ。 Evanはどうするのだろう。 尋ねると、あと少しで終わりにしなければいけないのだと言う。 EvanとNogaの友達は大学生で、その休みを利用して来ているのだ。 休学して歩ききることもできるのだろうが、そう簡単な話でも無いのだろう。 Evanは“どうして急がなければならないんだい?”と言う。 どうしてって、予定していた時間は大分押しているし、待つ人もいる。 確かに帰らなければならないわけではないが、今までと同じようにも出来ない。 時間はどんどん過ぎて行く。 開き直るしかないので、ハイキング用のポテトチップスを開けてテラスで会話に加わる。 みんなの手が遠慮なく袋の中に飛び込んでくる。 残った分は持っていこうと思っていたのだが、良しとしよう。 Freefall が“PCT Days”に参加するのは難しいかも知れないと言う。 確かに今のままだと、数日遅れるくらいだろうか。 正午を過ぎてもなお動き出そうとしないので、チャーリーに尋ねる。 すると、ジョーがダニエルを待つことを決めたと聞かされる。 いつかは、とわかっていたことだし、それが良いと思う。 けれど、別れはとても寂しい気持ちになる。 言葉に詰まってしまう。 ジョーもSubway Cabe までは行くと言う。 Hui も一緒に出発することになる。 じゃあ、そろそろかなと思っていたが、まだらしい。 二人は何をしているのかと思ったら、ビデオを見て盛り上がっている。 ツリーハウスにはたくさんのビデオがある。 その中から選んだものすごいB級映画のようだ。 どこかの国のどこかの戦士とどこかの超能力者がどうこうという話だ。 おいおい。 行こうよ、と声をかけると、もうすぐ終わるからと。 外でぼんやりハンモックに揺られようか。 はあ。 荷物をもってガレージの前に置いておく。 いつでも出発できることをアピールする為だ。 それほど効果があるとは思えないが、やれることはやっておく。 2時を回ってやっと動き出す。 Good Foot に声をかけようとしたが、外に出ていない。 かわりにFreefall がストアまで送ってくれることになる。 ここを離れる前に、Donation(寄付金)を忘れずに置いていく。 これからずっと続く僕の後のハイカー全ての為にもだ。 ストア着いた時には2時半を既に回っている。 店の前にはFuzzy Monkey がいるじゃないか! 少し疲れが見える顔をしているが、元気そうで何よりだ。 ご多分に漏れず、彼もミルクシェイクを片手にしている。 ファジーモンキーとフリーフォールはThe Heitman に戻っていく。 ありがとう、と感謝の言葉と、また会おう、と再会の言葉を言おう。 さて、まず僕らがすることは腹ごしらえだ。 ずっとお腹が空いてしかたなかったが、やっと食べられる。 飢えたハイカーは飢えたオオカミよりも恐ろしい。 ストアに入り何を頼もうか物色。 とりあえず、ベーコンチーズバーガーにコーラは決まりなのだ。 しかし、そこにシェイクを追加するかが悩みどころだ。 食べ過ぎて腹を下すこと幾度。 わかっていても止められないこの食欲。いや、欲望と言うべきか。 外のベンチにみんなで座り食事をする。 ジョーとこうして食べるのはこれが最後になるかもしれないと思う。 寂しがってばかりいられないのだ。 僕には僕の旅があり、彼には彼の旅がある。 新たなハイカーが到着する。 彼の名はDrug Store。 名の通り、あらゆるサプリメントやプロテイン食で歩いているらしい。 ある意味、もっともジャンクなやり方と言えるのかもしれない。 The Heitman に行くのかと思ったら、全く興味がないようだ。 僕らよりも先に出発していく。 やっと僕らが出発することになったが3時半を越えている。 スロースターターにも程があるだろう。 トレイルに戻り歩き始める。 昨日同様の歩きやすいトレイルがずっと続いていく。 ジョーだけパックが無いので軽そうにしている。 “いくらかもらえれば担ぐよ”なんて冗談を言っている。 どんどん先へと歩いていくと、分かれ道のサインがある。 ←Subway Cave サブウェイケイブとは、まるで地下鉄のような形の洞窟のことだ。 この辺りの名所旧跡の一つだ。 約二万年前の噴火の際に表面は固まり、下を流れる溶岩流によりできた。 Lava-Dome 溶岩ドームなのだ。 本当にこんなところにあるのかという人気の無い道をいく。 すると、フェンスに囲まれた中にぽっかりと穴の空いた場所が見える。 ![]() ベンチも用意され、人の往来を感じさせる。 チャーリー達をしばらく待つとやってくる。 チャーリーの背中には荷物が無く、本当にジョーが背負っている。 どうもここは反対側の出入り口らしい。 水を汲む必要もあるので、このままパックを背負って行こうとするとチャーリーのストップ。 良く理由はわからないが、荷物を置いていくと言う。 そんなに距離もないだろうから取りに戻れば良いと言うのだ。 とりあえずヘッドランプだけ持って洞窟へと降りて行く。 入り口は大きく、しかしその全貌は見えない。 下まで降りると、その名の理由が良く分かる。 思いの他綺麗な半円形を作っている洞窟がそこにはある。 洞窟なのだから当然ながら奥は暗く何も見えない。 ライトを点けて奥を照らすが、光が届かない。 足下を照らしながら歩き出す。 ![]() 洞窟の上部は滑らかになっているが、地面はでこぼこしている。 それに、少し湿っていて滑りそうで歩きにくい。 外の暖かい空気と違いひんやりと湿った涼しさだ。 いくつか枝分かれしていて、奥までいくと説明の標識がある。 僕の読解力では全てを理解することは難しいが、大まかにはわかる。 出口が近づくと徐々に明るくなってくる。 気持ちがほっとするのはなぜだろう。 人には太陽の明るさが必要なのかもしれない。 暗闇の中に居ると時間の感覚が薄れるようだ。 10分位かと思っていたが、実際には20分位かかり出てくる。 外はまだ陽射しに覆われた世界だ。 数人の観光客がこれから中に入って行こうと降りてくる。 それにしては薄着過ぎるし、ライトを持っていない人もいるようだ。 上がると遊歩道があり、戻る道とTrail Head へ行く道と別れる。 トレイルヘッドまではとても近く、そこにWater Spigot(水道)がある。 やはりパックを背負ってくれば良かったのだろう。 時間もそんなにたくさんあるとは言えない、もう5時を過ぎている。 急いでトレイルを戻ろうとするが、地下と違ってくねくねと曲がる道は長い。 パックをピックアップして、また大急ぎで戻って行く。 トレイルヘッドには駐車場と小さなトイレがあるだけだ。 その脇のベンチでは見慣れた顔が、Train、Carub、Sunseeker だ。 何をしているのかと思えば、飲んだくれているのだ。 傍らには大量のビールの空き缶がある。 本当にお酒が好きな人達だ。 水を大量に補給する。 ここから先は30mi以上水が無いかもしれないのだ。 トレイルエンジェル達の話では、途中にウォーターキャッシュがあるとは言うのだが。 信じていないわけではないが、どこのガイドにも載っていないし、無くなっているかもしれないのだ。 正直、食料も5日分あり、更に水を積むのは楽では無い。 だから、水はいつもぎりぎりしか持たないようにしている。 けれど、今日の夕食と明日の一日分と考えれば、持って行くしか無いのだ。 ジョーとはここでお別れだ。 初めての別れではない。 これで3度目になるのだろう。 しかし、今までとは違う雰囲気がある。 きっと、これが最後になるのかもしれないという思いをみんな持っている。 そろそろそういう時期なのだ。 チャーリーと抱き合い別れを惜しんでいる。 僕もジョーと握手を交わし、強く抱き合う。 ジョー、また会おう。 もっと別れを惜しんでいたいが、寂しくなるばかりだ。 きっときっとまた会おう。 手を振りながらジョーが歩き始める。 その背中は少し寂しそうだが、これが16歳の少年が大人になるステップの一つだ。 さあ、僕らも進まなければ! まだまだ今日は歩くんだ。遅れた分を取り戻そう! Train達に声をかけて出発。 一旦来た道を戻り、PCTへ入る。 まだまだ道は単調なまま進みスピードは上がる。 しばらく歩いて行くと、車のエンジン音が良く聞こえる。 道路が近いらしい。 ずっと平らだったのに、標高を上げ始める。 おそらく、Rim に上がって行っているのだろう。 ちらっとトラックが見える。 道路が巻くようにトレイルに近づいてきている。 上がりきった所にはParking Lot があり、トレイルヘッドになっている。 ちょうど展望台のようになっていて削られた大地が良く見渡せるようになっている。 時間は午後7時を回り、今が夕暮れ時だが、この明るさだ。 休んでいる時間なんて無いのだけれど、せっかくの景色を見ないなんて、無い。 バックパックを降ろしたついでにトイレにも行ってくる。 コンクリに覆われた堅牢なトイレの中で十分生活ができそうだ。 臭いさえ我慢できれば。 広々とした大地。 えぐれた大きく深い谷。 南には雪を戴くMt. Lassenが大きく広がる。 ![]() 北にはまるで富士山を思わせるような、Mt. Shastaがその勇姿を見せ始める。 ![]() この辺りを今日の最終地点と思っていたが、キャンプに不向き。 そこから先に少し進むと、もう一つ小さなトレイルヘッドに出る。 昔のTHなのかも知れない。 仮設のような小さなトイレとベンチがあり、地面は土だ。 8時が目前となり、ここで終了。 たった7miだが、出発の“ゆっくり”を考えれば良く歩いた方だろう。 明日の撤収のことを考え、今日はカウボーイキャンプ。 きっと星空も綺麗に違いない。 3人でベンチに座り食事をする。 なんとなく、いつも通りなのだが、いつもと違う雰囲気がある。 ジョーとの別れの寂しさ。明日への緊張。 少しだけ、今日は饒舌になっている気がする。 どんなに陽が長いとはいえ、そろそろ暗くなってくる。 夕飯を食べて寝る頃には、時計の針は10時を回っている。 何度も何回も繰り返す毎日。 出会いと別れ。 思い通りに行かない旅。 そのどれもが変化をしてきている気がする。 わからないことがわかりかけている。 明日。 また明日になれば。 星は瞬く。 その光はずっとずっと昔の光だ。 僕の知っている世界はどれほど小さいのだろう。 僕はどれほど小さいのだろう。 それでもまた明日は歩こう。 歩こう。 Happy Trails! -"easy"Turtle
7/28(Wed) Hiking Day75 / 24mi /6: 30am-3: 10pm (8:40) /NB 1383mi
“Go Flat to Old Station” あっという間の朝。 眠気が強く残っている。 まだ陽が入っていない谷間は全て青みがかって見える。 周りを見てもテントの数は変わっていない。 チャーリー達のことが気にならなくもないが、仕方ない。 準備を整えて出発だ。 ファミリーキャンパー達の視線を感じながら歩き出す。 谷をどんどん上がりつつ谷に沿って歩く。 下にはドレイクスバッドの温泉プールが見える。 ![]() 上がりきって森の中に入って進む。 比較的アップダウンが無く、フラットな感じで歩ける。 少し下って行くと川にぶつかり、ちょうど良いキャンプサイトが見える。 3張りのテントがあり、立ち止まる。 道がわかりづらいがよく見れば川を渡った先だ。 川を渡らなければいけないが、靴を濡らさず渡れるところはなさそうだ。 一つのテントからハイカーが出てくる。 昨日、Ben と一緒にいたハイカーだ。 もう一つ声が。 Fidget が声をかけて来たので、Turtle だよ、と伝える。 起こしてごめんね、またね、と告げて川を渡る。 川を上流に向かって歩いて行く。 とても歩きやすい緩やかなトレイルが続く。 ![]() 少しだけ登ると、またフラットなトレイルが続く。 全体的に開けて明るい感じだ。 ペースはほとんど落ちずにどんどん先に進む。 前方に見えてくる湖は、 Twin Lake 。 話し声がするので見ると、キャンプをしているハイカーがいる。 そのまま湖に沿って進むと、またキャンプしている。 景色が綺麗だし、平らなので確かにちょうど良いのだろう。 ![]() 湖のほとりに降りて水汲みをする。 遠目で見るよりも、岸にはゴミが多く浮いている。 湖なので仕方がないだろう。 それでも貴重な水源には違いない。 反対方向から歩いてくるハイカーと挨拶をして先へと進む。 湖を過ぎてもまだまだフラットな状況は続く。 歩きやすい時はなかなか休憩時を逃してしまう。 休憩しなくても良いが、後が続かない。 長く歩く為には、休憩はとても大事な要素だ。 向こうからまたハイカーが話に盛り上がっていて、声が大きい。 人に多く会うのは人気のエリアだからだろうか。 彼らとすれ違ったのをきっかけにして休むことにする。 倒木に寄り掛かれるように休憩スペースをセッティングする。 風がとても気持ちよい。 結構良いペースで歩いて来ている。 Hui には追いつけるだろうか、いや多分無理だろう。 あの二人も僕には追いつけないだろう。 お腹いっぱいになったら出発だ。 トレイルはずっとずっとフラットなまま進む。 驚くほど何も無く、驚くほど起伏も少ない。 どのようにしてこの辺りが出来たのかは知らない。 しかし、Lassen Volcanic の名前の通り、火山によって成形されたのだろう。 乾燥した砂埃舞うトレイルを先に先にひたすらに歩く。 時間が長くなれば疲れを感じるのだが、フラットで歩きやすい為、休み時を逃す。 それにしても変化に乏しくだだっ広い。 湿地から流れ出る貴重な清水をしっかりと補給し歩き続ける。 今まで以上に広く平らな場所にでる。 ![]() 見えている限り同じ景色。前も後ろも。 永遠とこの森から抜け出られないような錯覚を覚える。 地図を見てみると、Badger Flat と書いてある。 Badger はアナグマという意味以外に、しつこいことを表す。 しつこい程平坦な場所、ということだろうか。 ここの前から同じように平坦だったし、これはこれでなかなか経験の出来ることではない。 やっとの思いで平坦なエリアを抜けると、久しぶりの起伏が現れる。 ずうっと向こうまで高いものが見えない。 ここをゆっくりと下って行く。 ![]() 周りは静かで誰もいない。 今日は風もなく穏やかだ。 “ザッ、ザッ”と歩く足音だけがリズムを刻む。 明らかに人工的に作られたジープロードが突然出てくる。 それをいくつか横切って行くと、そろそろお腹が空いてくる。 ちょうど良い木陰で半分横になった状態で昼食を取る。 台地の上が全て僕の“リビング”だ。 時間は2時になろうとしている。 この分なら郵便局には十分間に合うだろう。 ![]() 通り過ぎた道路の傍にはキャンプグラウンドがある ここから傾斜はまた無くなり、ブッシュの多いトレイルが続く。 道路を横切り、歩き続ける。 ゴールが近づいている感触があると、急ぎたくなる。 力を振り絞ってラストスパートだ。 ふとハイカー夫婦と出会う。 彼らはデイハイクを楽しんでいるようだが、僕に話しかけてくる。 “この先はどうなっている?道路は近いかい?” 足が悪いようだがゆっくり歩いて楽しんでいるようだ。 上手く説明できなかったが、地図を見せて大体の場所を教えてあげる。 “ありがとう” なんだろう、こういうふとしたハイカー同士の出会いがとてもうれしい。 乗馬を楽しんでいる人達に出会う。 トレイルにゲートがあるところを見ると、いよいよ街は近そうだ。 だが、今日ははっきりとした印が無く、32N20という道路だけが情報だ。 標識が運良くあれば良いのだが。 まあまあ整備されたジープロードに出る。 おそらくここで良いだろう。 大体、小さいジープロードには標識があるのはわかっている。 見渡すと標識があり、そこには“32N20”と書いてある。 西に向かって5分くらい歩くとHwyにでる。 ここを南に歩いて行くと、Old Station の“街”に着く。 ここも、街と言うよりは集落に近い。 正しくはここより少し北のもう少し大きな集落がOld Stationだ。 しかし、POはこちらにあるのでハイカーはここに用がある。 建物が見えてくる。 手前には小さなストア。 昔はガソリンも売っていたようだが、今は形だけがある。 ストアの前には小さなテーブルとベンチがあり、休憩にちょうど良い。 その隣には小さなPost Officeが立っている。 裏手にはHat Creek Resort がありコテージがあって泊まれるらしい。 今日は泊まる場所を考えていない。 ここのコテージで泊まるのかキャンプするのか。 とりあえず荷物をストアの前に置いて、POに向かう。 POは人が三人入ったら一杯のスペースだ。 声をかけて顔を見せた人は、アジア人に少々驚いているようだ。 僕の荷物をリクエストしている間に脇にあったハイカーレジスターを見てみる。 その中には、すっかり先に行ってしまったハイカー達の名前がある。 みんな元気にしているだろうか。 ガットフックの名前もある。前日に来ているようで、もう会えないだろう。 と、POの扉が開いてガットフックが入ってくる。 “Why!!! Guthook!!” 思わず大きな声が出てしまう。 そっちこそどうして、とガットフックも驚いている。 彼の脇から入って来たのは、小柄な彼よりも大きな女性だった。 彼女は僕にGood Footと名乗る。 ガットフックと一緒の僕よりも大きい女性はトレイルエンジェルだという。 直ぐ近くに“The Heitman”というトレイルエンジェルの家がらしいのだ。 全然知らなかった、というか、あまり考えもしなかった。 ガットフックはそこでZero Day を取り休息していたようだ。 カレは大体お金のかからないTrail Angel の家では積極的にZero を取る。 賢いヤツだ。 一緒に行かないかと言われたが、ストアで買い物をしたいので断る。 とりあえず何か食べたいし、何か飲みたい。 彼女は笑いながら理解してくれる。 “用事が済んだら、ストアから電話してくれれば直ぐに来るから” と、二人は出て行った。 僕はストアに向かい中に入ってみる。 こじんまりとした店の中は意外と綺麗だ。 品揃えは豊富ではない。 特にハイキングのホットミールに出来るようなものはなさそうだ。 それでも、コールドミールを中心にするのであれば十分。 スナック類は豊富に揃っている。 奥にはスナックコーナーがあり、ハンバーガーが食べられる。 とりあえずメニューを見てみると、ミルクシェイクもある! コーラも飲みたいし、どうしたら良いんだ! Oh my gash! と嘆くほどでもない。 両方いただけば良いのだから。 さすがにハンバーガーはやりすぎの気がするので、タコスにしよう。 それから、チョコレイトシェイクとコーラ。 外のテーブルにざっと広げ、のんびりと午後の陽射しを楽しむ。 チャーリー達はまだだろうか。 どれくらい遅れで歩いているのか。 あっという間に平らげ、またストアの中に。 ちょっとスナックを買い足してから、店員の人に電話をしてもらう。 それから直ぐにGood Foot の車が来る。 よっぽど近いのだろうか。 ![]() 車に乗り込んでから5分もしないで、“The Heitman”に到着。 母屋の他に、母屋より大きいガレージが見える。 既に何人かのハイカーがいるようだ。 その中には、PCTA(※1)のFreefall がいる。 Kick Off Party にも顔を出している、ちょっとした有名人だ。 ![]() Hui もやっぱり先に到着していて、木陰で食料の仕分けをしている。 ひょっとしたら先に行っているかもと思ったが、Trail Angel は外せないらしい。 “いつ出発予定?”とHui に聞くと、“ああ、たぶん、今日の夜かな”と答え。 Good Foot がざっと施設の紹介をしてくれる。 奥に広がる庭には、なんとTree House がある。 ちょっと興奮するなあ。 ガレージにはPC、シャワーと洗濯機がある。 初めて会うPCTハイカーのピクルスという女性がいる。 一人で歩いているというが、真っ黒だ。 PCTハイカーといえ、日焼けを気にする女性が多い中、若いのにすごい。 タオルや着替えも用意してあるので、お言葉に甘えて借りることにする。 このところ頻繁にシャワーを浴びられるので清潔だ。 やっぱり毎日浴びても悪いものではないな。 シャワーのあとは洗濯。それから食料の仕分けをしなければ。 どこでしようか、どこに泊まろうか。 ツリーハウスの前にはテントも張れるし、 室内で寝てしまう手もある。 ツリーハウスの内部を覗くとなかなか良さそうだ。 二段ベッドにはガットフックのものらしき荷物が。 小さなテレビと映画のビデオテープがたくさん置いてある。 ここが良さそうだ。 ![]() ツリーハウスの下には椅子とハンモック。 そこで荷物を広げよう。 と、車が入って来たのは新しいハイカーが来たのだろうか。 行ってみると、チャーリーとジョーのご到着だ。 二人とも笑顔で楽しそう。 ミルクシェイクの話をしようとすると、その手には既に握られたカップが。 “もちろんさ”と、したり顔のチャーリー。 お見それしました。 二人が案内されている間に僕は片付けに戻る。 この辺りの区間は意外に食べるところが多く、食料が減らない。 嬉しいことだが困ることでもある。 大分余っているので、ハイカーボックスにと思ったが、 きっとガッツフックもジョーも欲しがるだろう。 ここから次の補給までは4.5日程度か。 しかし、予定ではバーニーフォールでチャーリーの荷物をピックアップ。 そこのストアでもいろいろ食べられるだろう。 ここでも大幅に食料が余りそうだが、その分食べてしまおう。 今日も天気が良くて暖かいが、乾燥しているので木陰は涼しい。 さっきBen とFidget も来て、今日もたくさんのハイカーでにぎやかだ。 おっつけトレイン達も来るだろう。 各自作業も済んで、自由な時間を過ごしている。 ディナーまではまだ時間があるので、のんびりとしよう。 母屋のテラスに座ってみんな話している。 僕もそこに座り話を聞いてみる。 こういったのも英会話の上達につながる。 みんなの話題の一つは、明日越えることになるだろう、Hat Creek Rim。 Rim の意味は縁(へり)だが、自然のリムというと絶壁を有する溝やへりのことを言う。 地図で見てみても異様なほど等高線が密になっている。 それだけ急斜面と言うことだ。 Rim の頂上と下とで300mくらいの高さがあるのだという。 この辺り一帯は火山地帯で地盤がもろく、長い年月をかけて水で削られたのだろう。 大地の記憶というものか。 これがほぼ一日の行程という長さに加え、水が全く無いらしい。 ここをどのようにクリアするのかが問題だ。 それからもう一つの話題は8月の最後の週末に開催される、PCT Days! しかし、今ここから開催地のCascade Locks の街まではぎりぎりの時間だ。 ほぼ休み無く歩いて、かつ一日25mi平均といったところか。 体への負担をかなり強いなければ厳しい状況だが、諦める必要も無い。 前向きにできる範囲で歩いて行くしか無いさ。 夕飯まではもうしばらくあるらしい。 チャーリーのレンタカー探しを眺めてたり、ガレージで過ごしたり。 Firewood はここHeitman を作った人物。 奥さんはあまり表には出てこないが、彼はとてもFriendly だ。 もともと建築関係の仕事をしていたらしく、だからツリーハウスもお手の物だ。 とても有名な建物も手がけたらしく、チャーリーが驚いていた。 夕食前になって誰かが来たと思ったら、Warner Spring Monty だ。 また会ったというか、一体何者なんだ。 彼は各地に出没してはハイカーをサポートしてくれる素晴らしいトレイルエンジェルだ。 しかし、それにしても出没率が高すぎるのではないだろうか。 もう一人、“Pickles”もKick Offで見かけたTAだ。 Train やSun Seeker も到着したころ、やっと夕食が始まる。 もちろん夕食が出るトレイルエンジェルは普通ではない。 それだけ負担が増えるのだから。 だからこそ、ありがたく感謝しなければ。 また、あとのハイカーの為にドネーションは欠かせない。 トレイルエンジェル達が用意してくれたのは、ブリトーを中心とした料理だ。 “料理を食べる前に手を洗って!”とお母さんみたいなGood Foot。 みんなテラスのテーブルに座り、夕食のスタートだ。 今日は続々とハイカーが集まって、セクションハイカーも加わり、本当に楽しい。 一日の最後の夕食が素晴らしいものになって、幸せだ。 テーブルにあるアルバムにはたくさんのハイカーの写真がある。 顔を撮っとかないと忘れちゃうから、と奥さんが言う。 みんなそれぞれおかわりをするとあっという間に食事は無くなっていく。 今日出て行こうかと言っていたHui も夕食につられ滞在を決めたようだ。 今日はまだまだ時間がある。 明日は早くはない。 Hat Creek Rim を越えるのに早朝から歩くことにしたからだ。 明日はのんびり過ごし、Subway Cave など観光して過ごす。 そのあと、トレイルヘッドまで行ってそこで早めに就寝し、翌早朝出発の予定だ。 チャーリーはレンタカーが見つからず、Dunsmuir からAmtrakで行くことにしたらしい。 ジョーは、兄のダニエルを待つかどうかを悩んでいる。 このまま進んでしまうと、その距離はいつまでも縮まらない。 でも、ジョーは僕達と一緒に進みたいらしい。 “待てないのか”とジョーに聞かれる。 待てるものなら待ちたいが、そうも言ってはいられない。 僕はツリーハウスの中で寝ることにする。 ガットフックは“ネズミに気をつけて”と言う。 食料はしっかりパックライナーに入れて口を締めておこう。 チャーリーとジョーはどこかに寝床を見つけているようだ。 昼間の暖かさが嘘のように冷えてきた。 それぞれの道への別れが近づいている。 でもその先には一人一人の光が見えると信じよう。 ※1 Pacific Crest Trail Association の略 -"easy"Turtle
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