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Dinsmore’s, WA / Day148/ Zero Day27
9/16(Thur) Zero Day27
”Probably Last Zero Day”

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 朝、だらっと起きる。この緊張感がない朝がうれしい。妻に電話をする。特別になにを話すでもない。声を聞きたいだけだ。短い時間でも楽しい会話に力をもらう。

 TransientやGolden Bear達は今日出発する。デイブとダニエルも次の場所へと移動するようだ。立ち去る前に挨拶をする。するとデイブがレインカバーを差し出す。昨晩話していたレインカバーについて彼らは覚えてくれていたらしい。彼にとって旅の道具は大切なものだろうに、彼は僕にくれるというのだ。“僕はもう使い終わったから、君が使ってくれよ。”ありがとう。本当にありがとう。感謝しかできない。正直なところこれが本当に必要なのかも分からない。いや、むしろ必要ないことは分かっている。それでももう一度試してみたかった。本当にすごい雨の中、ブッシュの中でもレインカバーが役に立つのかを確認してみたいのだ。

 みんないなくなってしまう頃には第2陣が到着する。Uncle Tomだ!
“トム!来たね。みんなはどうしたの?”
“少しあとを歩いていたから、きっとすぐに来るよ”と言う。
少し早い昼食を食べにストアにトムと行く。店内には5〜6人で一杯のテーブルとカウンターがある。コーヒーショップのようだけど、簡単な料理も出してくれる。卵とベーコン、パンケイキのシンプルな食事でも暖かく、調理してあるだけでとても美味しいしありがたいものだ。
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 続々とハイカー達がご到着で一気に賑やかさを増す。もう気が置けない顔なじみの仲間ばかりだ。みんなそれぞれ自分達の場所を確保し、あっという間に自分の家の様な雰囲気だ。この部屋の広さなら、どんなに酒飲んでたって気にならないよ。
“そう言えば、ガットフック達を見かけないけど”
そう言うとトムは、彼らがSkykomish でステイしていると教えてくれる。あんなにトレイルエンジェル好きのガットフックにしては珍しい。

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 ハイカーのために用意されている一台のパソコンは、残念ながら日本語入力ができないけれど、読むことはなんとかできる。日本とのこういうやり取りももしかしたらこれが最後かも知れない。おそらく次の補給地、Stehekin にはインターネットが使えるコンピューターはないだろうから。

 外に止まっている車のナンバーを見て驚く。『PCT DAD』と『PCT MAM』と書いてある。自分で言うのもどうだろうと思ったが、そのアピール具合はアメリカ人ならではだし、実際にそれだけのことをしているので嫌みがない。
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 『The Almost World Famous Baring Store』。こうストアの入り口に書いてある。これまた自己アピールが大きい。とてもクラシックな作りで、店内も古き良きアメリカの雰囲気が漂う。古いポストオフィスのカウンターの雰囲気がまた良い。

 今日もまた何も無くのんびり。あまりにも何も無く。Snoqualmie Passでもそうだったが、いつもなら街に下りても次への準備で慌ただしい。でも、全ての手は打ってある。『万事を尽くし』、ということか。いいなぁ、このダラダラ具合。This is Life!

 ストアの人達、地元の人達、みんなハイカーフレンドリーで楽しい。なのに、夕方の時間に早い夕食を食べに行くと、その女性の対応がひどい。この店終わる時間が早い。だから、これから準備するのが面倒なのだろう。それは分かる。けど、いかにも嫌そうに、これなら作れるからこれにして、と一方的にホットドッグ決められ、しかも中まで温まっていないという手抜きぶり。がっかり。腹が立つよりも呆れてしまう。日本じゃ絶対許されない対応だろう。でも、いかにも人間的とも言える。むしろ面白く、感心してしまう。昔マーチャンダイジングを学んでいた頃、アメリカの高級店の接客や対応に習え、と先生に言われたことがあったが、そのピンからキリまでがこの国にはあったりする。きっとこの店以上にひどいところもあるだろう。しかし、それを選択出来ることが良いことなのだ。何に置いても自分の選択次第で気持ち良くも悪くもできるのだろう。心持ち次第ということだ。肝に銘じよう。

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 また、雨が降っている。なかなか降り止むことがなさそうだ。遅い時間になって、イスラエル人ハイカーのブラックが到着する。Snoqualmie Passの前で別れたが、のろのろしているうちに追いつかれてしまったのだ。そのブラック、レインウェアを持っていないらしい。確かにここまでの間、最悪無くてもなんとかなるような状況が多かった。晴れる日だけを選ぶこともできただろう。けれど、ここに来て雨が降り続き、その都度待っていては先に進めない状況になっている。やっとその必要性を思い立ったが、雨具を帰るような場所は近くにあるわけない。かといってあげられるレインウェアは今の僕には無いのだ。
“ブラック、どうするつもりだい?”と尋ねる。
“シアトルに出ようと思っているんだけど。ヒッチハイクできるかな”
ここからは相当な距離がある。なんだか心配になってしまうけれど、今の僕にできることなんて無い。ごめん。

 天気予報はかんばしく無い。向こう数日は雨の日が続くらしい。もう覚悟を決めよう。毎日雨だって歩くしか無い。心が決まれば、気持ちもすっと落ち着いてくる。靴擦れの対策も忘れずにしよう。予定では、あと9日!
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by hikersdepot | 2013-04-25 23:15 | PCT 2010 by Turtle
Snoqualmie Pass, WA to Dinsmore’s / Day145– 147/ Hiking Day116- 118/ 2402.8mi-2476.6mi/ 73.8mi/②
9/15(Wed) Hiking Day118/ 25mi/ 6:40am- 6:20pm (11:40) /NB 2477mi
“Another Hiker Heaven

 久しぶりにドライな朝を迎える。今日はテント内にも結露がない。久しぶりだな。天気はまずまずだろうか。

 長い一日の始まり。昨日の下りの続きを順調に歩く。トラバースのトレイルなので特長の少ないトレイルだ。反対側の稜線と谷が見えていることくらい。単調に行くのかと思いきや、そう簡単には行かないところがハイキングじゃあないか。
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 大きな登りや下りはないのに、ちょこちょことGapやPassを超えていくのだ。そのどれもが急登、急下降なので、思いの外体力を削られていく。救いは今日も良く見えている先の景色。遠くそびえるあの山はGlacier Peakだろうか。あそこまであと少し。もう少し。崩れた岩が散乱する草原。白い岩と緑のコントラストが美しく思う。行けども行けども距離は思うように伸びていかない。Glacier Lakeが見えるころ、疲れ果てて休憩。ぐったりだ。ちょうど見晴らしの良い場所があるのでバックパックを背もたれに横たわる。
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 休息で気分も変えて再出発。下からはアウトフレームのバックパックを背負った若者達が上がってくる。父親のものを借りたのだろうか。それともThrift Shopで買ったものかな。コットンTと短パン姿はこれぞアメリカンハイカーといったもの。

 空には雲が増えて来た様だ。標高が下がるとまた雰囲気が変わる。森の中を歩くが、中途半端なトラバース道に比べたらこちらの方が歩きやすいし、楽しい。どうやら僕は森歩きが好きなようだ。自分でも思ったことはなかったけど、どうやら僕は結構真面目に野外活動と向き合うようになっていたらしい。いつの間にか自分が変わっていたのかも知れない。だからこそ、何の利害関係もなくこの文化に寄り添っていたいという気持ちが大きく膨らんでくる。とても矛盾する気持ちが渦巻く。でも今は深く考えるのは止めておこう。今すべきはハイキング。歩くことだ。
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 振り返るとこの区間は人工物が少なく、ほとんどジープロードなどとも交差しない。それゆえの人気トレイルだからほかのハイカーも見かけるのだろう。そんなことをぼんやり考えていたら、デイハイカーが向かいから歩いてくる。シルバーの髪が綺麗な年配の女性が目立つ。3人の女性グループだ。
“こんにちは”
“どうもこんにちは”
そのまま通り過ぎようと思ったらむこうから話しかけてくる。
“あなたはPCTハイカー?”
“そうだよ。”
“Wholeで歩いているの?”これは定番の質問だ。
いつもの感じでいろいろ話すがおばさまがたが集まっているので、質問攻めに合っているように次々に聞かれる。するとその内の1人のおばさまが、
“これ食べなさい。”とミニトマトと青リンゴを出してくる。おぉっ!生もの!!と心の中で声を発する。もちろんありがたく頂くしかない。
“Thank you so much!!!”
びっくりするほど美味しいトマトだ。それを伝えると、これはHomemadeで彼女が作っていると言う。とても気持ちも入っているのだ。それをくれることがうれしい。
“きっとこれから雨になるけど、もう少しだから気をつけてね。”と励まされる。
“ありがとう。本当にありがとう。そちらこそ気をつけて!”
いつの間にか総勢5名になっていたおばさまグループに別れを告げて先を急ぐ。それにしても本当に美味しいトマトとリンゴ。あとに残しておこうと思ったのに止まらない。あっという間に全て食べきってしまう。
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 時刻は午後4時を回り少し過ぎる。小さな丘をひと越えする頃、いよいよ暗くどんよりとした空から大きな雨粒が落ち始めた。一気に降る強さが増して来たので、すぐに大きな木の下に行き、そこで雨具を着る。おばさま達は大丈夫だろうか。どこまで行く予定だったのか、心配だ。雨は止む気配なく降り続ける。

 Lake Susan Jane を通り過ぎると大きなPower Lineが見えてくる。急に人里の雰囲気が増す。目の前には急な登りが待ち構えている。これが最後だと思いたい。気合いを入れて一歩一歩足を前に出し続ける。Gapに着く頃に雨は、降った時も急だが、急に止んでくる。ガスも取れて景色も開ける。Gapに着くと近くにスキーリフトの降車場が見える。Stevens PassもSnoqualmie PassやWhite Pass同様にスキー場のある峠なのだ。
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 Passまでもうすぐ、急いで下っていく。下の方にはセンターハウスだろう建物も見える。気持ちにやっと余裕が生まれる。ところが、これも突然に急に訪れる。腹が痛い。この雰囲気は明らかにPoopが僕を呼ぶ声だ。でもすぐにTHだからなんとかそこまで我慢してもらおう。見えている建物のどこかにはトイレがあるはずだ。ところがトレイルは建物を避けるように違う方向へと進んでいく。
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 頭は真っ白。高いConcentration のなせる技だ。あっという間にTHに到着。ところが見渡す限りトイレらしきものはない。小さな建物があるが、人気は無い。これは無理だ、きっとトイレは無い。しかし、僕の腹は暴発寸前の危険ブザーが鳴り響いている。すぐさま人の目につきにくい場所を見つける。
<しばしお待ちください>
この旅一番の焦った時間に違いない。無事に用が済んだことを感謝。

 THに出る手前には大きなクーラーボックスのTrail Magicがあり、感謝しながら頂く。時間はすでに午後6時を回っているのであんまりゆっくりもしていられない。

 Highway 2、Stevens Pass。雲に巻かれ視界が悪い小雨の降る中人気もほとんど無く寂しさが漂う。車の通りは少なく不安がよぎるものの、そんなことで負けていられない。神経の図太さはスルーハイカーの専売特許だ。それにしても、今日は6つも7つも8つも登っては下り、登っては下りを繰り返し、本当に疲れる日だ。まるで人生そのもの。

 何台目かの車が来る。いつになったら止まってくれるかな。そんなことを考えていたら、車が近づいてきて止まる。まあ、なんてすごい荷物が一杯の車だろう。ミニバンの車内一杯になんだか分からないけど物が詰まっている。ルーフにはカヤック。人の良さそうな、ちょっと個性的おじさんが顔を出す。
“やあ、こんにちは。どこまで行くんだい?”
“Baring に行きたいんです。”
BaringはトレイルエンジェルのDinsmoreの家がある町。その手前にはSkykomish という街もあるのだが、Snoqualmie でたくさんお金も使ったし、少し節約したい。
“Baringには何もないけど。”
そういう彼に地図を見せながらなんとなく説明する。すると彼はDinsmoreの存在を少し知っているようで、すぐに把握してくれる。そうして、助手席にも一杯だった荷物をよけてくれて僕の座る場所を確保してくれる。

 車は西へ走る。23miくらいあるから、しばらくはおじさんとの会話を楽しむ。いったいこの人は車が家なのか。でも家があるのならなぜ車にこれほどのものが溢れるのか。もちろんこの近くに家があるからDinsmoreのことも知っているのだろうから、この車で生活しているわけはないのだけれど。Skykomishは小さい街なので、まともに買い物出来るお店は無いようだ。Cheveron くらい。その割には宿が二つあるようなのが面白い。Dinsmoreのところにも小さなストアがあるらしいのだが、まだ空いているだろうか。
“BaringにはGeneral Storeがありますよね?”
まだ空いていると思うか聞くと、この時間ではやはり閉まっていると言う。一瞬Cheveronに寄ってもらいたいと思ったが、さすがに言うのは気が引ける。そう思った瞬間に車はSkykomish を通り過ぎていく。まぁこれで良いあきらめがつく。
 
 森に囲われた道路はいつまにか線路に沿って走っている。家が数件建っている場所が見える。ここがBaringだ。案の定閉まっているストアの前に止めてもらう。
“家の場所は分かるかい?”
“うん、だいたいね。”
“線路を渡って左に行ったところだよ。”
“なるほど。ありがとう!”
おじさんはたくさんの荷物と共に去っていく。Stevens Passからは思っていた以上に距離がある。戻る時のヒッチハイクに少し不安を感じる。

 幹線道路とアムトラック鉄道の線路が並んでいる。非常に分かりやすい構造だ。ここは交通路の途中にある小さな集落。ストアは案の定開いていない。街灯が点き始める時間。線路を渡り、歩いていく。するとある一軒の家の前に、『Dinsmore’s Hiker Heaven』という看板がある。ここが、もうひとつの、Hiker Heavenだ。

 こんな天気だし、だれも外には出ていない。家と、その奥のガレージ。僕が行くべきはどちらかと言えば、きっとガレージの方になるのだろう。ガレージの窓からは明かりも漏れているし、人の気配もする。ドアを開けると中には数名のハイカーが各自の場所に納まりくつろいでいる。その中には見た顔もある。ちょっとした趣味の部屋のようなインテリア。壁には過去数年のPCTバンダナ。もちろん今年のピンクもある。二段ベッドやソファが適当に並んでいる。どこでも好きにくつろげということなのだろう。

 バックパックをおろし、一旦疲れた身体を落ち着ける。Transient は変わり者のハイカーでこれまでも幾度もすれ違って来ている。久しぶりの再会。Goleden Bear とYuriiのカップルは、トムと一緒に歩いている時、Snoqualmie Pass以前にすれ違ったことがあるのを思い出す。たしかあの時は雨の中で、彼らはその雨で濡れるのをいやがり停滞していたのだ。

 僕はここにも食料ボックスを送っていたのだが、どこでピックアップできるのだろう。すると、初老の男性が入ってくる。彼はここのハイカーヘヴンを開いているDinsmore 夫妻の夫である、Jerry Dinsmoreだ。とっても人の良さそうなおじさんで陽気だ。お世話になります、と挨拶をし、荷物の置いてある場所を聞く。荷物は僕達がいる隣の倉庫の中にあるらしく、室内から鍵を開けたドアから入る。そっちのガレージは、さらに趣味色が強く、ごっつい車はもちろん、かれの趣味らしい様々な模型が飾られている。

 荷物を受け取り、ランドリーやシャワーは自宅にあるので、簡単に説明を受ける。ガレージの中にはHiker Boxもあるし、誰かからの差し入れのフルーツなども少しはある。それ以外にも時間をつぶす為のビデオコーナーやボードゲーム、カードゲーム、それから暖炉などなど飽きずにでものんびり出来るようになっている。街に特になにも無いこともむしろ良いのかも。ハイカーにとってはけっこう遅い時間になっているが、なんだかそんな気がしない。身体の時間がおかしくなっている。とりあえずシャワーを浴びて気持ちをすっきりさせよう。

 いつも街に下りたら、結構贅沢な食事をするのだが、今日はそんな店もないので、あるものを食べよう。ちょうど食料も受け取った直後だし、余っているものは全て食べても良いのだ。外は雨がまた降ってきている。なかなか止まない雨にすこしうんざり。雨の中、外で食事を作っていると車で訪れるカップルがいる。男性の名前はDave(ダイブに聞こえる)、女性はDanielだ。ダニエル?それって男の名前じゃないのか、友達にダニエルという男の子がいるよ、と聞くと、彼女は笑いながら、女性にも使われる名前なの、と教えてくれる。日本の名前だと、まこと、みたいなものかな。

 ダイブとダニエルはPCTを歩き終わっているようだ。シアトルまで出て来てから車を借りて2人でドライブ旅行がてらここに寄ったらしい。そんな楽しみもあったのか、なるほど。2人はそれぞれ違う場所に住んでいるらしく、遠距離恋愛みたいなのだが、もしかしたらPCTがきっかけなのかな?さすがにそこまでは突っ込んで聞けないな。ここからカナダ国境までのことを聞くと、彼らは途中で雪に降られたらしい。その後すぐに融けてしまったということだが、今以上に寒さが気になるところだ。数日前には雷雨がすごかったらしい。雨が予想以上に降るものだから、つらいね。僕はレインカバーを必要無いと思って持ってこなかったが、さすがにこれほど続くのなら、あっても良かったのかと思う。これも今だけの気持ちだし、パックライナーで防水しているから、道具が濡れてしまうことはないので、まあ問題ない。ようは気持ちの問題なのだ。

 今日は本当に長い一日だ。トレイルも6つも7つもアップダウンを繰り返す、けっこう辛い道のりで、身体がじっとりと疲れている。本来ゼロデイは取らないつもりだったけど、明日は一日ここでゆっくりしよう。

 時間がすぐに過ぎていく。Time flies so quickly. この旅の終わりも残り1週間ほどになる。長くてうんざりしていた日々もここまでくれば先が見えてくる。急に寂しくなるもんだ。なんて勝手なものだろうか。思わず笑ってしまう。
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by hikersdepot | 2013-04-18 12:43 | PCT 2010 by Turtle
Snoqualmie Pass, WA to Dinsmore’s / Day145– 147/ Hiking Day116- 118/ 2402.8mi-2476.6mi/ 73.8mi/①
9/13(Mon) Hiking Day116/ 22mi/ 8:00am- 6:30pm (10:30) /NB 2424mi
“Great Day”

 朝はやはり時間通りすっきりとは起きられない。アメリカのTVプログラムは不思議で同じ映画を続けて流したりする。結局ロードオブザリングの興奮覚めやらず、もう一度途中まで見てしまい遅くなってしまったからだ。どうしようもないだめなハイカーだ。それでもゼロデイをとったお陰で体調は良い。日本の妻に電話をして声を聞き、力をもらう。

 トムと昨晩話していた位の時間にモーテルを出る。まだみんなは動き出さないようだ。道路を歩いてTrail Headに向かう。約8:00amにTHから歩き出す。急登からのスタート。大きなスイッチバックをしながら稜線を目指し上がって行く。今日は気持ち良い天気だ。久しぶりの乾いた空気。濃く青い空。山も景色もよく見える。また少し地質や植物が変わったように感じる。登り始めて1時間くらいで稜線が近くなってくる。
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 稜線に出ると景色はさらに開けて美しい。遠くMt. Rainier が見えている。近くを通っている時にはほとんど全貌を見ることができず、やっとご対面といったところだ。ここから見てもあの大きさということは、近くだったらもっと雄大だったに違いない。しかし、これでも僕には十分すぎるほど。
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 山の様相はごつごつとしていて穏やかな雰囲気はない。けれど、小さめな岩山の灰色、限られた場所に根を張る針葉樹の濃い緑と青い空とのコントラストが美しい。振り返るとMt. Rainierを端に、Snoqualmie のスキー場とI-90が見える。トレイル自体はとても歩きやすく、稜線の細かいアップダウンを避けるように巻いている。のんびりと歩みをすすめる。
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 トレイルの上に動いている生き物を発見する。まるまるしているように見える。ありゃなんだ?よく見ればどうやら僕が何度も見たことのある動物、Marmotだ!僕が知っているマーモットが生息出来るだけの標高ではないので、それだけ緯度が上がり寒冷地に入って来ているということだろう。シエラで見たときのマーモットと色が違うように思う。たしかシエラは茶色、ここでは灰色だ。土地柄か、それとも冬毛?食事中なので邪魔をしたくはないのだけれど、僕達は先を急ぐので、申し訳ないが脇を通過させてもらおう。
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 稜線脇にある小さく美しい池、その名もRidge Lake、に到着する。ちょうど昼時なのでここで休憩。ここに着く直前で出会ったデイハイカーも一緒だ。彼が“熊がいるぞ”と僕達に声をかけてくる。確かに反対側の大きくカールした斜面に熊が歩いているのがわかる。あまりに遠くて僕のカメラで写真に収めてもまともに写りはしないだろう。だいぶ北上してきたのでもしかしたらBrown Bearかとも思ったが、トムもデイハイカーの彼もきっとBlack Bearだろうと言う。水を汲み、準備を整えたらまた歩き出す。デイハイカーの彼はここから戻ると言う。互いの幸運を祈りつつ別れる。
 
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 ここから先はもっと素晴らしい景色が広がっている。山肌をトラバースするようにトレイルはすすむ。眼下には大きな湖があり、深い谷になっている。Alpine Lakes Wildernessというエリアで岩山に囲まれた美しい池や湖が点在するところのようだ。歩いているだけで楽しい気分になる。やはり景色を見ながらのハイキングには格別なものがあるな。深い大きい谷の向こう側にはまたMt. Rainier が見える。雲が朝よりも増えているが、それがまた美しさを増しているように思う。ものすごく長い長いトラバース。もし雪がある季節なら雪崩の巣窟だろう。ここからだと前に歩いているハイカーがいるとよく見える。1人僕らの先にいるようだ。また1人見えるがそのハイカーは逆方向で歩いているみたいだ。
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 South Bounderのところに到着。彼は大きく立派なカメラを持っている。彼が言うには、出会うハイカーの姿を写真に撮って歩いているらしい。僕とトムもそれぞれ写真に撮ってもらう。数日前からハイキングしているというのでハイカーの動きについて聞いてみる。昨日は少なかったが一昨日は多かったようだ。やはり僕らの前の大きなグループは約2日先行しているようだ。

 3mi近いトラバース道が終わりGapを越える。そこにはぼくらの前を歩いていたハイカーが腰を下ろしている。景色が開けて綺麗だし、天気も良いし、僕らも少しだけ腰を下ろそう。

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 ここからは大きな下りで山の奥へと入って行く。天気は変わらずに良いままで最高の気分だ。トレイルもおおむね歩きやすく、歩みは軽やか。変化に富んでいるエリアで飽きることがない。今日はまるでシエラネバダのエリアを歩いているような気分だ。Hot SpringのDetourもとても興味があったが、こちらを選んでよかった。またいつかここを歩きに来たときにはこの迂回路を選んでも面白いだろう。

 小さな池を回り込みGapを越えどんどん下って行く。途中には滝が流れ豊富な水を誇る。冬に雪がたくさん降り山に多くの水が蓄えられているのだろう。オレゴンやカリフォルニアのようにトレイルを外れて水を汲みに行かなくて良いので助かる。小さな森林火災跡は長いジグザグ道で下っていく。

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 出発が遅めだったにも関わらず、歩きやすいトレイルと心地よい天気のお陰で、22miをサクッと歩き通し、Lemah Creekに6:30pm到着する。ここのクリークの橋は流出してしまったようで架かっていないが、徒渉も問題なく渡れる。
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 僕としてはもう1mi進みたい。僕としてはあと2日でStevens Passに着きたいのだけれど、トムは3日で良いと思っているらしい。彼らの気持ちも良く分かるし、でも僕は僕のペースで行こうと思う。そうすると、ここでのキャンプがもしかしたらトムと最後になるのかも知れない。そう思うと、あと1mi先に行くことができない。結局30分も悩んでいたが、ここで泊まろう。続々とみんな追いついてくる。リー、ダフ、リチャード、アグゼラ、ガットフック、テンジンと勢揃い。それほど広くもないキャンプサイトがとても賑やかだ。

 楽しい時間だけれど、長くは続かない。まだ明日もあるし。みんなあと3日かけてStevens Passまで行くつもりのようだ。僕1人が2日で行こうとしている。食料はあるけれど、でもここは自分を信じて進もう。明日は25〜27miを歩く。長いなぁ。でも1人、久しぶりにのんびり歩こう。それも悪くない。眠くて眼が痛いな。



9/14(Tue) Hiking Day117/ 27mi/ 6:35am- 7:05pm (12:30) /NB 2452mi
“Hike Alone”

 まだみんなが寝ているか、やっと起き出した頃。僕にとってはいつも通りの時間に出発する。時間は6:30amを過ぎているが、陽射しは森に届かずに薄暗い。日が短くなっていることを痛感する。
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 今日の予定では、大きい登りが二つ。大きい下りが一つ。小さい下りが一つといった感じで、メリハリがある一日になるはず。いきなり壁にぶち当たるように急な登りを黙々と歩く。斜度をなるべく出さないようにたくさんスイッチバックしているので思ったよりも歩きやすい。昨日Gapのところで会ったハイカーが先行している。彼は手作りに違いないシンプルなバックパックを背負っている。せっかくなので写真を撮らせて欲しくて声をかける。彼のトレイルネイムは“Tick”。Tickはそのままダニと言う意味だ。どうしてこの名前なのだろう。気になって尋ねてみると、大きなバックパックを背負って手足が少しだけ出ていて動いている様が似ているからだと言う。なるほどね。彼は話を聞くところによるとテンジンの友達らしい。彼もTangent と同じく1995年にPCTをスルーハイクしている強者なのだ。写真を撮り終え、“じゃあまたね”と先を進む。
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 上に上がってくると周りの山がよく見える。陽当たりの悪いところにはびっしりと雪がついている。このまま万年雪として来年もあそこに残るのだろう。突然“がさっ!”と音がするので見てみると鹿がのんびりと歩いてくる。こいつはずいぶんのんびりやなのだろう。今日も天気が良くて気持ちよく歩けそうだ。雪解けの綺麗な水はとても冷たい。あまりお腹が空くような感じがしないのでとにかく先を急ぐ。ひたすら歩く。あの複雑な山の形は雪に削られたのだろうか。

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 うんざりするほど長い下りが続く。下る、下る、歩く。下りだけでも6〜7miあるのだからすごいもんだ。
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 結局休み無しで、Waptus Riverまでの14.4miを歩く。さすがに疲れたのでここで一休み。橋の上が陽当たりが良いので、昨日湿ったテントを干して気持ち良くドライに。昨日よりもだいぶ暖かく感じる日で、道具は日向、僕は日陰がちょうど良い。暖かい陽射しは喉を乾かすからだ。
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 一つのめの大きいアップダウンの次は二つ目の大きな登り。今度は急登ではなく、緩やかに長い。約8miだけれど、登りということもあってか思う以上に時間がかかる。前半飛ばしたせいで疲れもあるのだろう。ずっと谷の中なのでこれといった大きな変化もなく、黙々と歩くのみ。浅く水がとても綺麗な川を越えるとDeep Lakeに着く。疲れたので湖までは近づけない。湖の上にはCathedral Rockがそびえている。周りは平らで広い高原となっていて美しい場所だ。こんなところでのんびりキャンプができたら楽しいだろう。みんなはきっとここまででキャンプだろうか。僕もしばし悩む。時刻はまだ午後5時前。まだ歩ける時間はある。一休みしたあと、この後水が無さそうなので夜の分の水を担ぎ先へと進む。
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 3miの急な登り。ここもスイッチバックが多いので歩くのはそれほど大変ではないけれど、水を担ぎ疲れた身体にはとても辛い。木々の間から見える景色の美しさが救いだ。Lakeが望める。テントが張ってあるのが見える。まさかトム達ではないだろう。Gapまでたどり着くと、Cathedral Rockが目の前。上の方は少しだけ紅葉が始まっている。素晴らしい景色だ。ハイカー達とすれ違う。彼らはDeep Lake を目指しているのだろう。
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 ここからは下り。Stream Junctionという場所を目指すが、名前とは大きく異なり水はないらしい。下りていくと小さなPondをいくつか見かける。さらに下りていくとどこからか流れの音がする。結局小さなクリークから水の流れもあるし、なんの為に水を担いで来たんだか。少し急な下りをおりきると、開けて平らな場所が現れる。どうやら目的に到着のようだ。なぜ流れの合流点となっているのだろう。あたりを探索してみると、確かに流れの跡がたくさん交錯している。そのどれにも水はなく完全に枯れたクリーク。でもこの谷を少し詰めていけば水のあるところが見つかるような気がする。
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 たくさんキャンプしやすそうなところがあるのでむしろ悩んでしまう。困ったことだ。時間は午後7時を少し回ったくらい。日暮れまでには着くことができて良かった。それでも辺りは休息に暗さを増していく。日に日に駆け足で迫る冬の気配。乾いてとても良いキャンプサイトだと思う。水が流れた跡のない場所を選び今日の家を準備する。
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 今日も良く歩いた。慌ただしく一日が過ぎていく。明日はStevens Passにおりる日だけれど、そこまでもまだ25miもあるのだ。長いなぁ。とほほ。
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by hikersdepot | 2013-04-11 12:44 | PCT 2010 by Turtle