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Cascade Locks, OR to White Pass, WA/ Day134– 139/ Hiking Day106- 111/ 2155.2-2304mi/ 148.8mi ②
9/5(Sun) Hiking Day109/ 27mi/ 6:30am- 7:30pm (13:00) /NB 2260mi
“Colder”

 朝寒い。寒い。

 順調なペースで歩き始める。でも寒い。昨日と同じような道を歩いて行く。またトレイルの上で寝たらしいブラックを抜いてジープロードへと出る。その手前にはトレイルマジックがある。ちょうど暖かく甘い飲み物が欲しいと思っていたら中にはインスタントのカフェカプチーノがある。これは今夜のお楽しみにしよう。それ以外にもアップルペーストがあり、本当にリンゴの擦りたてのようでうまい。ブラックも来て2人で腰掛けてちょっと話をする。

 彼と同じイスラエルのハイカーがいたという話をする。Noga が確かそうだ。するとブラックはもちろん知っていると言う。でも彼女はそろそろトレイルを外れるのでは、と言う。親戚の結婚式か何かで帰らなければならないらしいのだ。ブラックはここからTrout Lake という小さな街に下りるようだ。

 一人先を急ぐ。長い登りを上がっていく。けっこうな登りのように感じるが、よくよく地図を見てみれば2000 ft は登るようだ。標高が上がれば当然寒くなる。時々陽は射すが今日も曇り空。まともに陽射しを浴びられないので体がぐっと冷えてくる。

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 昨日よく見えていたMt. Adams がさらに近く見える気がする。どうやら僕はMt. Adams に向かっているらしい。トレイルは4miほど近くまで来てから進路を変えて進む。この時期であれだけの雪がまだ残っている。あれはもう融けずにさらに雪が降り積もるのだろう。

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 風の避けられそうな木々の間を見つけて休憩する。とはいっても寒い。気温自体がずいぶん低いのだ。でも僕の持っている服でろくなものはない。とりあえずダウンジャケットを着るがなかなか暖まらない。馬乗りが来て挨拶をする。“どうだい?”と声をかけてくる。“寒いよ”と答えると、“服着ろよ”と言われる。ごもっとも、ですがそれが無いんですよ。

 今日のペースは悪くないはずなのに時間がずいぶんかかっている。登りがながかったせいもあるし、疲れが溜まっているのか。寒さも原因の一つのように思う。有名な山を見ながら歩けるのだから人気があるのだろう。風の避けられる西斜面で立ちながら休憩。親子らしいハイカー2人とすれ違う。彼らの着ているフリースが本当に暖かそうでうらやましい。

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 時間はもう5時になるところ。急ぎ先へ進む。また馬乗りの今度は女性2人組みとすれ違う。山から流れる小さな清水は多いので水には困らないが、それ以上に寒くて喉もろくに乾かない。MT.アダムスの裾野をずっと辿りながら標高を落として行く。徐々に緩やかさは増し、西側のトラバース斜面だったのも平坦になっていく。

 森の中に入るとぐっと暗さが増す。スピードも落ちてくる。空腹も増す。早く休みたい。もう辺りは暗く、かろうじて明るさが残るころ、突然不思議な形をした塊が現れ、そこからは美しい水が流れている。Lava Springに到着する。時間は7:30pm。

 キャンプサイトが少しだけ上がった丘の上にあり。2人のキャンパーが焚き火をしていた。話て見たが、彼らはスルーハイカーでは無いようだ。なんとなく距離を感じて、少し離れたところでテントをたてる。乾いたグラウンドだし、悪くない。

 結局昨日と同じくらい歩いたものの、明日が長い。僕も目標だと明日は29miになってしまう。しかも今日以上の長い登りと険しいと思われる道。食べ物は大丈夫と思いつつ、やはり不安は残る。明日を乗り切れば。行くしかない。明日歩きながら決めるとしよう。


9/6(Mon) Hiking Day110/ 29mi/ 6:35am- 8:35pm (14:00) /NB 2289mi
“Wonderful Washington”

 寒く、湿った朝。少し雨が降っているようだ。歩き始めると雨は上がり、陽射しも出てくる。平に伸びた道。ほとんどがジープロードのようだ。順調にTHまで出て、そこで雨具類を急ぎ脱ぐ。濡れることには慣れているが、雨で濡れた下草が歩く度に落ちて来て靴を濡らす。それがとても冷たい。

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 今日もハックルベリーがところどころに実を付けていて、ありがたく頂きながら先を急ぐ。今日は長い。目標は29mi。そして、Goat Rocks Wilderness のKnife’s Ridge を越えるつもりだ。とにかくひたすら歩くしか無い。気力は十分で一回の距離を長く取るつつ進んで行ける。

 ここ数日と違い、変化に富んだ山の景色がある。赤くなった木々。点在する池や湖。馬の放牧もあるようだ。山の作りも岩が多く目立って来たように思う。オレゴンから今まではたおやかな、丸みのある山が多かったので、それらは比較的単調で少々飽きがきていたので、メリハリのある歩きは楽しい。


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 広く大きく削られた谷や、ニップルの様な岩山も久しぶりに見る。シエラの後の山に良くあった形だ。チャーリーをふと思い出す。彼は今どうしているだろう。まだオレゴンだろうか。それとも、カスケードロックスに着いているかも知れない。

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 約4時間で10miを歩き、クイックに出発する。これが掛ける三になれば12時間という計算だが、そうは問屋が卸さない。さて体力も気力もいつまで保つのやら。

 雨は朝から降ってはいないが、曇り空のまま。時々陽射しが出るので、それに期待する。テントをバックパックの外側にぶら下げ、乾かしながら歩く。晴れると信じよう。

 久しぶりの山岳風景に心躍る。その山々を眺めながら歩けるなんて本当に気持ちが良い。日本の山は稜線に出てしまうので、十分に山の風景や自然を楽しめないばかりか、余計な危険まで背負わなければならないのに、いつから日本人はこういう自然との向き合い方を忘れてしまったのだろう。でも少し雲が余計だよ。晴れていたら、今僕が思っている以上に素晴らしい景色に違いない。

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 雲の切れ間がさっきよりも大きくなる。何人かのハイカーとすれ違う。人気のある場所なのだろう。花がたくさん咲いている。こんなにたくさんの花を見るのは久しぶりだ。これらの秋の花が終われば一気に冬が訪れるのだろう。それまでの間のわずかな季節の恩恵を僕達は受けて歩いているんだ。

 流れの強い小さな沢を超え、続いて小さな滝を越える。そのすぐ先には綺麗に整備されているキャンプサイトがある。4:00pmくらいに到着。そこで腰をかけて休憩。約23miを歩いた。もう十分といえば十分だ。ここからなら明日White Passに入れるのは間違いない。でも、入るのが夕方になってしまえば、ストアのBusiness Hour に間に合わないかもしれず、その為にももう少し先に行きたい。でもこの先は細い稜線になり、6mi先までキャンプサイトはないだろう。2mi/1時間として、あと3時間。1.5mi/1時間として、あと4時間。ハイカーが僕の行くほうから下りてくる。

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 1人ハイカーが下りてくる。僕がこの時間から先に行こうとしているので何か思っているのだろうか。大丈夫だよ、スルーハイカーだからさ。なんの根拠も無い自信だ。さぁ、行こう!そうした時に、突然トレッキングポールのグリップが割れる。縦に割れるって!僕の使っているガレージメーカーのものは一般のものとは構造が異なるため、こういう事象が起きてしまうのだろう。とりあえず使えるように直すのに時間をロスする。これは何の前触れだ。でも、行くと決めたからには行くのだ。

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 ここまでの道のりと異なり、斜面は急になり、斜度を増す。体力が低下している僕には辛い。集中力の低下も食い止めることはできず。のろのろと登って行く。周りは大きな岩が点在する不思議な景色が広がっている。そのあとは石の多い歩きにくい道になる。時間だけが過ぎて行くのに距離は伸びず、じわりと疲労が広がっていく。僕の心に合わせるように、雲が濃くなっていき、気づいたら巻かれている。

 気づけば周りは雪ばかり。季節は9月。本来ならまだ残暑残る頃。標高は7000ft前後で8000ftには満たない。それでもここには万年雪、氷河、Glacier が広がっているのだ。それほどの雪の量だということか。それともそれほどの北の緯度ということなのだろうか。

 すっかり雲の中、雪の斜面をあがる。当然スノースパイクなんて持っていない。融けて締まった雪は良く滑るので、トレースを外すとこわい。体力も気力も落ちているので余計に辛い歩きだ。

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 道標があり道が分かれている。そこにはStock PCTとHiker PCTとがあるようだ。僕の持っている地図ではStock PCTを薦めている。しかし、ストックルートは歩いてみると、相当の傾斜があり、また雪も多く滑るので万が一滑落すると一大事だ。慎重に分岐まで戻り、 Hiker PCTに進む。Hiker PCTは急傾斜をピークに向かって上がっていく。アメリカのトレイルでこれほどの登りを選択するということは、それ以上の危険性がストックルートにはあるということだろうか。時間は午後7時になる。

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 ピークに上がっている途中から少しずつ雲が取れて来て景色が広がる。それでも多くの雲に覆われているが、それがまた別の美しさを作っているように思える。かろうじて見えるのは、Mt.Rainierだろうか、それともMount St. Helen。きっともっと雲がなければMt.Adamsの美しい山容も眺められたのだろう。そしてピークの頂上からはまた違う美しい景色が見られる。この辺り、PCTの中でも最も美しい景色の内の一つ、ということになっている。言わずもがな。来て見ればわかるこの素晴らしい景色。東北東面には多くの残雪が残され素晴らしいコントラストを生む。氷河の水の為か深い緑の池が見える。これから進むべき北の山々。そして、いま歩くべきKnife’s Ridge。だがナイフリッジというよりは、ノコギリ山、といった方がしっくりくる稜線だ。

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 平たく崩れた岩が積み重なる不安定な急斜面を慎重に下る。しかし、時間が7:00pmを回り、気持ちがあせって無駄に急いでしまう。膝をかばいつつ歩くも、軽く膝をひねって痛みが増す。どうしてもゆっくりになってしまい、気持ちが空回り。さっきまでは写真を撮れるくらいの明るさがあったが、一気に暗さを増してくる。歩きやすくなってからも思いの外長い稜線に先が見えない。薄暗いなかの細い尾根道に、久しぶりに恐怖を覚える。

 やっとの思いでエルクパスに到着。ここでヘッドライトを出してから下り道に入る。今日初めての下りじゃないかと思えるほど。こういう時でも頼りになるような明るさの強いヘッドライトを使っているはずだ。でも先がまったく見えない。特に下りは斜面との距離が長くなるため先へ光が届かないのだ。トレイルも不明瞭でさぐりながらゆっくり下りていく。地図に書いてあるAlpine Campという場所が近くにあるようなのだがそれが見つからない。もちろんキャンプスポットも無いので止まれずにずっと歩き続ける。前にも感じたことだが、暗くなると時間の間隔も失いがちだ。

 道を見失いながらも、立ち止まり見つけては歩き、また止まり、歩きを繰り返すが、とうとう完全に道を見失う。やけに平らで広い故に道がより不明瞭打からだ。これが明るければどうってことないのだろう、と思いつつ、これ以上むやみに動くことは避けたい。うろうろしていると、突然明らかに人が使っているだろうという平たい場所に立っている。“よし!もうここにしよう。”迷いは無かった。時間は8:30pmを回っていて、予定よりも一時間以上遅い終了となる。休憩をした滝近くからは6mi/3時間以上ということだ。

 とにかくなにも考えられなかった。いつもならグラウンドの水はけや小石などのチェックをするが、そんなことどうでもよかった。この旅を始めた頃、Fuller Ridgeの近くで雪の中ロストして日暮れまで歩き、倒れるように眠ったあの時のことを思い出す。急ぎ飯を食べて、寝袋に入り込む。体が沈むような感覚。泥のように眠る。


9/7(Tue) Hiking Day111/ 15mi/ 7:10am- 2:20pm (7:10) /NB 2304mi
“White “wet” Pass”

 朝まで一瞬だったように思う。熟睡以上に深い眠りに入っていたような気分だ。当然前日の疲労感は濃く残っている。外は少し雨が降っているようだ。昨晩見た空は星が広がっていたのに。昨日のうちに歩いてしまって結果オーライということだろうか。

 降り方がまるで日本のようにしとしとと降っている。疲れきっていて気がつかなかったがどうやら水が溜まりやすいところに寝ていたらしい。きっと人が多く使う間に窪んだと思われるほど小さいものだがそれでも溜まる。少し水に浸かっていたが、防水シートを内側に敷いていたので何も濡れずに済んだ。

 雨準備をしてから、いつもより少し遅めの7:00amスタート。雨は小降りで、降ったり止んだり。昨日ロストしたところも予想通り、明るければなんてこと無く、すぐに道を見つけられる。

 もう今日でアメリカにきてから140日目となる。ざっと4ヶ月半を過ごしているのだ。どおりで長く感じるわけだ。終着は五ヶ月を越えるのは間違いなさそうだ。

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 細かい砂礫のトレイルもしばらく歩くと終わり、森の中に入っていく。向かいから歩いてくるハイカーがいる。彼の名はスコットと言い、チャーリーと同じ傘をさして歩いている。しとしと降る雨には傘が最適だよ、と彼のことば。ごもっともなのだが、残念僕は傘を持っていない。チャーリーを思い出す。彼は今頃どの辺りにいるだろう。もうCascade Locksに入っただろうか。

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 長い下り。森の遠くに先日見たのと同様の雄々しい鹿の姿をみる。お尻の筋肉が隆々として普通の鹿ではないことは良く分かる。まだ続く下り。周りに雪は無くなり、振り返る山の上にばかりとなる。また1人ハイカーとすれ違う。やはり人気があるルートなのに違いない。またその先には白い大きなテント。いやテントというよりはソフトハウスと言うべきだろうか。煙突があるところからすれば当然薪ストーブも完備なわけで、本当に暖かくて気持ち良さそうだ。それにしてもこんなにたくさんの道具をどうやってこの山奥に運び込むのだろう。ヘリコプター?いや、そんなわけないな。

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 ずっと下りが続くと思っていたら(地図にはそのように書いてあったはずなのに)、登りがはじまってからはずっとずっと登る一方。美しい森の中、退屈はしない。でも、昨日の疲労が原因なのか、足が思うように動かない。休みを取りながら先へ。時々雨が強く降るようになる。今日は本降りになりそうな気がする。やっと登りが終わったらしい。今度はWhite Passまで一気に下りだ。

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 なにも考えずとにかく歩いて歩いて。狩りの季節のようでボウガンを持つ人達を見かける。全身迷彩服で、バックパックやボウガンまでもが迷彩だ。アメリカのアウトドアメーカーでも盛んに迷彩ものを作っているところがあるが、なるほどそれなりの需要があるということだ。日本でも一昔前であれば、金持ちの遊びの一つだったろうし、江戸時代も鷹狩りなんてやっているわけだし。ぼくもアメリカに住んでいたら、一度くらい狩りは経験してみたいものだ。そうかあの白いテントはハンターのものだろう。

 山の雰囲気が変わってくる。急に人の匂いがしてきたようだ。今日は馬も良く見かけていたが、したから馬が上がってくる。その馬は荷物を満載している。ああそうか、馬であのテントなどの重い荷物を上げるのだ。そしてトレイルは一気にHWY 12 へ飛び出す。2:00pm頃、White Passに到着だ。Cascade Locksから6日。久しぶりのロングセクションを歩き終える。

 ここは町じゃない。スキー場の下にあるLodge と小さなGeneral Store & Gas Stationだけだ。ジェネラルストアはPCTハイカーの荷物を預かってくれる。僕も送っているのでまずはそれをピックアップしに向かう。雨の降る中、建物はとても安心感を与えてくれるのはなぜだろう。バックパックは外に置き、中に入る。コーヒーや簡単なホットミールがカウンターにある。それからロッジで食べられるような簡単な食品、冷凍食品などもある。アイスクリーム、ジュース、スナック類も量は少ないが十分なほどある。イートインスペースもあるようなのでとりあえずここで腹を満たしていこうか。

 フライドチキンやピザがあるが、それ以外にもサンドイッチを作ってくれるようだ。とりあえずできたての食べ物を欲しているのでサンドイッチを頼む。“どのハムにするの?”どうやらハムを選べるようだ。ターキー、チキン、ビーフ、ポーク、とあるのだがさてどうしたものかと思っていると、“全部でも良いわよ。”の声が。それでは考えるのも面倒なので全部お願いします!兄弟なのかな、女性2人でお店をしているようだ。とても優しい2人だ。サンドウィッチが出てきたが、これはサンドウィッチと言ってよいのだろうかというほど、ハムの厚みがすごい。さらにフライドチキンとコーラ2缶をいただく。食べていると他のお客さんがちらほら。ガソリンを入れにくる人や、ちょっと休憩しに寄ったハンターも。やっぱり全身迷彩服。

 とても気さくな人で“ハイキングかい?”と声をかけてくれる。“雨が良く降るから大変だね。景色もこの辺りは本当に美しいんだよ。”とハンターのおじさん。“そうなんですか?ワシントン州は雨が多いと言うからこんなものかと思っていたけど、、、”“いやいや、海岸沿いは雨が多いけど、内陸はそうでもないんだよ。でも今年は本当に雨が多くて嫌になっちゃうよ。異常な天気だね”そうだったのか。それでも僕達はあるがままを受け入れるしかない。ついでに疑問だったことを聞いてみる。“あの。Deerよりも大きい姿を見たんですけど”するとハンターのおじさんは“あぁ、それはElkだよ”と言う。“僕もエルクをハンティングしに来ているんだ。”そうするとお店の女性が“エルクは美味しいよね。”と言う。“僕はDeerを食べたことあるんですけど”“エルクはそれ以上に美味しいぞ!”食べてみたいものだ。

 腹も満腹。今日はここのロッジに部屋を取ろうと思う。濡れたものも乾かしたいし、洗濯もしたい。洗濯機はストアにしかないので、あとで戻ってくることにしてロッジへ向かう。ロッジは思っていた以上に敷地が広く、部屋数もありそうだ。遠回りしてやっと受付を見つける。当たり前のことだがシーズンオフでとっても暇そうだ。営業してくれていただけでもありがたい。部屋の外にはスキーの板が入るロッカーがあったり、部屋の中も最低限のものだけで、スキーロッジらしい雰囲気。でも暖かくて、屋根があって、ベッドで寝られるだけで十分すぎる。

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 急いでシャワーを浴びて着替えを済ます。さっきピックアップした荷物の中には新しい靴を入れてあり、それに履き替える。クッションがものすごく効いていてふわふわした感じがする。ランドリーの為にストアに戻ると、お店の人が洗濯中のようだ。その間ストアのレジスターを見たりしながらのんびりする。そういえば、アルコール燃料を買わなければと思い店内を探すが見つからない。“HEETないの?”と尋ねると“そこに無ければ明日の入荷かな”と。ふむ。まぁギリギリ燃料は保ちそうだから、もし無くても良いが明日の朝にまた来てみよう。

 とりあえず洗えそうなものは全部洗ってしまう。テントの撥水も著しく低下しているのでそれも洗ってしまおう。洗濯ネットの代わりにあるスタッフバッグも総動員。乾燥機が終わったストアの人達のタオルを代わりに畳んで、乾燥を待つ。僕が洗濯物を畳んだのを知ってお店2人が感謝のお礼に残り物のピザをくれる。だいぶお腹いっぱいなのだがせっかくなので頂こう。またコーラをもらい一緒に食べる。そこうしていると男性2人のどう見てもハイカーがお店に入ってくる。アンクルトムとジェネラルリーだ!挨拶をして他の面子のことを聞く。2人はロッジに部屋を取っているようだ。けれど他のメンバーは何か用事があるらしく下の街へと向かったという。彼らは部屋でピザを食べると言い、ホールで買って行った。僕はシュラフとダウンジャケットの乾燥を終え、キムチヌードルとコーラ、冷凍のハンバーガーをさらに買って部屋に戻る。いったいどれだけ食べるのか自分でも呆れる。

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 部屋でのんびりくつろぐ。バスタブがあったので湯にも浸かり体を癒す。この部屋には古いナショナルジオグラフィックがありとても興味深い。外はまだ雨が降り続いている。明日も雨の様な気がするが、それでも進むのだ。
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by hikersdepot | 2013-02-27 00:00 | PCT 2010 by Turtle
Cascade Locks, OR to White Pass, WA/ Day134– 139/ Hiking Day106- 111/ 2155.2-2304mi/ 148.8mi ①
9/2(Thur) Hiking Day106/ 22mi/ 9:55am- 6:55pm (9:00) /NB 2177mi
“Step into Washington”

 とうとうワシントン州に足を踏み入れる朝。早くに日本に電話をする。妻にはもうすぐ、9/5から9/9まで僕の母とグアム旅行なので楽しそうだ。彼女に元気をもらってから、朝食を食べる。モーテルの朝食でも十分美味しい上に高カロリーなのは間違いない。昨晩書いた葉書をPost Officeに行って出して、グロセリーで電池を買う。部屋に戻り荷物を担いで出発だ。

 10:00amより少し前。気が重いのは荷物の重さのせいもある。6日分の食料の重さとここから先の上り下りの多さ。しかし、少し心を軽くしてくれるのは今日の天気の良さだ。さぁ、橋を渡ろう。Bridge of Gods。ここを渡れば向こうはワシントン州だ。橋は歩く人の為にもちろん作られてはいない。しかもこの橋は下が見えてしまう。おそらく雪が積もらないような工夫なのかも知れないが、川が見えるのは怖くて足がすくむ。車とすれ違うのも怖いが、それもあっという間に終わる。

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 橋を渡り終わると、今度は少し西に進む。向かいから歩いてくるハイカーがいるので、少し立ち止まって話をする。セクションハイクで歩いて来たらしい。彼らにはここが終着点だ。PCTのマークがあるトレイルヘッドから入って行く。しばらくは登り。こころなしか川を隔てただけで植生が変わった気がする。でも、これだけの距離離れていたらそれもあるかもしれない。

 トレイル沿いは木々が濃く、苔も生えている。ちょっとだけ北八ヶ岳みたいな感じもするな。小さなクリークが頻繁に現れ、森の水の豊富さが分かる。標高も少しずつ上がってくると見晴らしが良くなり、振り返るとCascade Locksの街が見える。これも晴れて天気が良いお陰だ。本当に気持ちが良い。南を振り返ると、Mt. Hoodが見える。北に見えるのはなんだろう。おそらくMt. Adamsか。なんて素晴らしい。しばらくぶりに気持ち良く歩けている気がする。そう思いながら歩いていると向かいから見慣れた顔が現れる。“Carhop! How’s going?”びっくりするほど彼とは良く合うものだ。他のハイカーに聞いても良く合うらしいのだが、向かいから歩いてくるのだからそれも当然か。むしろ同じ方向に向かっている僕の方が合わない顔も増えて来ている。みんな速度も上がっているが、それが同じような速度だけに、以前みたいに交わらないのだ。“今日は本当に良い天気だね。楽しもう!”そう言って別れる。

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 所々にりんどうの花が咲いている。尾瀬で働いている時によく見ていたし、日本の山でもよく見る花だ。あの頭がつぶれた山はなんだろう。特徴的な形だ。どんどん歩いて行くと、またハイカーに出会う。こちらは同じ方向に向かっているスルーハイカーだが、見たことがない。挨拶を交わすと、MayerとGenius というトレイルネイムだ。名前はレジスターで見かけてはいたが、会ったことがない。まさかここまで来て初見のハイカーがいるとは驚きだ。それにしても、どちらもずいぶん自信を持ったトレイルネイムだ。

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 途中からはジープロードが平行したり、交わったりしながら道は進んで行く。標高が3000ft前後と低い里山だからということもあるだろう。深い森の単調なトレイルを歩く。飽きないようにすることもこういう時には大事なポイントだ。とても歩きやすくペースをつかみやすいトレイルのお陰で、遅いスタートの割には距離を稼げる。太陽の傾きがはっきり分かる時間になる。本当に日暮れが早くなったことを実感する。途中で今晩の水を確保し、ジープロードへ出る。地図ではここから少し東に行くとキャンプスポットがあると書いてある。水場もあると書いてあるが、行ってみると悪い予想通り水場はない。そして、確かにキャンプスポットなのだが、とても汚い。ゴミが散乱している。車で来られるからだろうが、あまり気乗りしない。誰かが夜中に来ても怖い。

 かといってそんなに歩く気も無くなっていたので、道を逆に行ってみる。PCTを横切り、少し登ると道路脇に小さなスペースを見つけた。もちろんキャンプスポットというわけではない。でもここで良しとしよう。地面は固いがステイクもなんとか刺さる。急に暗くなってくる。さっさと食事をしてからストレッチと眠る準備。いつもと変わらない順序で行動する。

 そろそろ終わりの日にちが具体的に見えてくる。明日は大きな登りが待っている。自分らしく進もう。一日、二日遅れても25日にはカナダ国境に着けるだろう。明日の目標距離は27mi。あぁ、長いなぁ。


9/3(Fri) Hiking Day107/ 28mi/ 6:30am- 8:10pm (13:40) /NB 2205mi
“Carefree”

 いつもより暖かい朝。森側の方だけ内部に結露が見られる。思ったよりも湿度が高いのだろう。気にせず行こう。いつも通りの時間に歩き始める。いきなり登りのスタート。標高差は700ftくらいだが、思った以上に長い。雲はあるが、今日も天気が持ち良い。登りきると、下りも長い。Day Hikerとすれ違い、すこしうんざりしていたら励まされる。ありがとう。
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 Trout Creekは水が豊富に流れ、キャンプにも良さそうだ。そこで昨日出会ったメイヤーとジーニアスがいる。彼らにどこで抜かれたのか分からない。水汲みをしているよう。何か話そうと思ったが、2人の世界に入りづらい。彼らの他にも一緒に歩いていたハイカーがいなかったっけ。そもそも彼はSteadyな関係だったか?まぁいいや。彼らをパスして進む。
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 道路に出る。PCTは道路を横切っているが、僕は2.5miほどにあるカントリーストアに寄ってみることに。それほど遠く無いはず。後ろから来た車に声をかけられ、“乗らないか?”と言われたが、せっかくだから歩こう。感謝して断る。

 Wind River Roadにぶつかるが、近いはずのストアが見つからない。Eric the Devil aka Eric the Black の地図には道路の東側にストアがあると書いてある。だが、無い。しばらく捜しあぐねるが、たまたま家の外に出ていた子供に聞いてみる。家といっても本当に数件しか無く、たまたまあるから良いようなものの無かったら困り果てていたところだ。その子は僕が来た方を指差す。“あの角にあるよ”。確かに、そこにはストアがある。それは地図に記されているのとは逆の方向。さらに道路の西側だ。Erick the Blackよ、ありがとう。君の地図のお陰で僕は何度目かの道迷いをしたぞ!

 そのストア、Stabler’s Country Store(※1)は本当に小さく、以前はガソリンも販売していたようだが、今はそれも止めている。店は小さく最低限のものしかない。しかし、十分だ。近くにキャンプグラウンドがあるから、そこで足りないものを買いにくるキャンパーもいるのだろう。調味料やレトルトフードが充実している。だが、調理をしないで簡単に食べられるものは冷凍食品くらいだ。でも、悪くない品揃えだと思う。それに冷凍食品は安いからありがたい。ストアのおばさんもぱっと見よりは人当たり良い。コーラにハンバーガーを読みながらレジスターを眺める。Neon、Hui、Guthookもここに来ていたよう。食べ足りないので自分のパンを食べて、さらにアイスクリームを食べる。

 危うく腰が埋まってしまう前に歩き出す。しばらくまた道を北上してからPCTへ復帰。平坦な森の中を抜けるとまた道路に出る。すぐ近くにあるキャンプグラウンドにトイレに立ち寄り用を足す。時間の浪費かも知れないが、トイレの方がゆっくりできる。

 ここからは一気に登りとなる。スイッチバックしながらグングン標高をあげる。お腹がいっぱいなので力も一杯だ。スピードを一定に保ち歩き続ける。メイヤーとジーニアスをパスしてひたすら登る。8.5miほどあるのだが、長く、何も考えず、歩みは止めない。

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 途中で少し休み、また歩く。思った以上に時間がかかったが、6:30pmころトップポイントへ到着。しばらく下り途中のSpringを目指す。スプリングに到着する時に人の姿を見た気がする。誰だろう?水場はちょっと分かりづらいがサインがあり、奥の方へ行くと水が流れている。この辺りはキャンプスポットにもなっているらしい。今日は寄り道も多く、7:00pmを過ぎているけれどもう少し先へ進む。水を大量に担ぎ出発。

 下る道は雑木林で単調。黙々と進んで行く。なんとなく当てずっぽうでキャンプ出来るだろうと思って進んで行くが、なかなか良さそうなところが見つからない。下草や木々が多過ぎて、トレイルの上くらいしか開けた場所がないのだ。

 8:00pmを過ぎて一気に暗くなってくる。何となく見える道を進む。心は焦る。
すると突然広い場所に出る。目を細めて良く見てみるとテーブルにファイヤーサークル。整備されたキャンプスポットに飛び出した。“やった!”思わず声を上げる。素早く今日の家を立てて休む準備。ゆったりテーブルの上での食事をし、しっかりとストレッチをおこなう。今日は暖かいので外にいても気持ちが良い。オレゴン州の終わり辺りはとても寒かったので、昨日今日の暖かさはうれしい反面、ちょっと不思議だ。気温は15℃もある。

 星がよく見える。明日も晴れたら良いな。今日は予想外に歩いてしまって疲れたが終わりよければ全て良し。明日は少しショートにしようかな。それは明日考えよう。

 明日は明日の風が吹く。


*1 Stabler’d Country Storeは2011で閉店している。あの状況では無理も無いが、むしろ良いときはあったのだろうか。それでもハイカーにとってのオアシスが一つ失われたことはさみしい。




9/4(Sat) Hiking Day108/ 27mi/ 6:30am- 7:00pm (12:30) /NB 2233mi
“Hackle Berry”

 昨日の夜星が見えていたので晴れを期待して今日も出発だ。朝は10℃。夜よりは低いが歩きやすい気温だ。陽射しもあるし、さあ行こう!歩き始めてすぐに久しぶりの姿をみる。Chipmunkだ。シエラの高山帯にはいたが、こんな標高の低いところにいるなんて。それだけ寒い場所に来たということなのだろう。

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 期待とは逆にすぐに雲に覆われて気温が上がらない。ふとトレイル上に座る人が見える。どう見てもハイカーだが、もしやトレイル上で寝ていたのか?“やぁ、おはよう”声をかけると彼ものそりと動き僕の方を向く。“あぁ、おはよう”と不意な顔をする。いやいや、むしろ僕が驚いてるよ。彼の名前はBlack。初めて見る顔で、もしかしたら昨日の水場で見かけたのは彼かも知れない。

 単調なトレイルが続く。存在感のあるゴミ箱がある。なぜこんなところに、という場所だ。ま、そんな時はトレイルマジックしかないでしょう。中にはスニッカーズなどのスナック類がたくさん入っている。しかし、たくさんはもらわないことにする。この後に続くハイカーの為にも、今僕が必要な分までに留める。ブラックも追いついて来て中を覗く。彼はイスラエルから来ているハイカーだと言う。

 そこからすぐにキャンプグラウンドへ飛び出す。Crest Horse Campはジープロードも通っているので人が入りやすそうだ。キャンパーなのかハイカーなのか分からないが、3人組みがテントを張っている。ここでトイレを済まし、また先へ。

 Berry Mountain というなんとも魅力的な名前だ。そこを通っている途中にまたCarhopに出会う。どこまで縁があるのだろう。今日はいつも以上に特色の少ないトレイルだ。急な登りも無く、アップダウンも少ない。でも歩きに集中できるし、余分な体力も使わなくて済む。これはこれで良いものだ。それにしても寒い。気温以上に風の冷たさが堪える。ウィンドシャツが手放せずにいる。昼過ぎには少し陽射しも出て天気回復傾向か。

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 池をいくつか通り過ぎて行く。森は水分を多く含んでいるのか、苔むして美しい。深い森が広がる。見晴らしの良いところから美しい山の姿が見える。Mt. Adamsだ。距離はずいぶん離れているはずなのにとても近く見えるのはそれだけ山が大きいのだ。

 街から街が長くなるとどうしても食料に不安が出てくる。ところが今日は朝のトレイルマジック以外にも2つのトレイルマジックがあり、スナックを補給しながら進める。本当に助かる。感謝感謝しかできない。寒いので、休憩を伸ばし伸ばし歩き続ける。

 平坦な道を行く。この辺りは少し色づいている。さすがに9月ということか。Road 24に出る。ここはTrail Headになっているようで車が何台も止まっている。広く開けたところで色づく木々の向こうにMt. Adams が見える。
それとは違う方向にもう一つとても特徴的な山がある。山頂付近が妙に平らになっている。きっとMount St. Helens だろう。おととい見た山もそうだったに違いない。大昔、人々が神とあがめた意味が良く分かる。天気が良ければどこからも見えるし、時には怒る荒ぶることもあり、そして人智の及ぶところではない。

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 それにしても赤く色づいた木々が多い。しかもそれには黒い実が付いていて、知っている果物に似ているのだ。そしてどうやらその実を摘んで食べている少年がいる。“ねぇ、この実はなんだい?”、そう少年に尋ねる。“これはHuckleberry だよ”。Yas もとても印象に残っていると言っていたこれがHuckleberryか。少年は僕に続けて説明してくれる。“Huckleberryは野生のBlueberry で甘みが強くて、大きいものが美味しいよ!”。それは良いことを教えてもらった。さっそく食べてみる。それは想像以上に美味しく、甘く、生ものに飢えた体にはありがたかった。

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 それからの道すがら多くのHuckleberryがあり、足を何度も留めては摘みながら進む。がんばって奥の方まで大きい実を求めて手を伸ばす。自然の恵みに感謝する。

 気づけば遅い時間になっている。歩きやすさもあってか、距離は25miを越えるところか。本当はもう歩き終えたいがあまり良さそうなキャンプスポットが見つからない。これでは昨日と同じようになってしまう。それは避けたい。地図にはもう少し先にキャンプグラウンドがあると書いてあるが、それでは30mi超えてしまう。

 森の奥に鹿の姿が見える。でもその鹿は僕が今まで見たどんな鹿よりも雄々しく美しい立ち姿だ。写真を撮る間もなく去っていく。あれはいったい?

 ちょうどひと張り分の小さなスペースを見つけ、ここで強制終了とする。だいたい27miだろうか。今日も良く歩いた。これで十分だ。上り下りが少なかったので膝の調子はまぁまぁ良し。テントを立て終えた頃、ブラックが追い抜いて行く。
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 夜になりグッと気温が下がってくる。風も強い。気温は7℃くらい。しかし、星空は綺麗だ。明日もきっと良い一日になる。White Passまであと3日か。ここも以外に携帯の電波が入り日本にメールを送る。妻にも良い一日が続くことを願って眠りにつく。
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by hikersdepot | 2013-02-20 02:33 | PCT 2010 by Turtle