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Ashland, OR to Mazama Village, OR/ Day 115–118/ Hiking Day 89–92/ 1730.8mi –1833.6mi/ 107.2mi/②
8/16 (Mon) Hiking Day91/ 30mi/ 6:30am- 7:30pm (13:00) /NB 1808mi
“Force the Pace”

思ったよりもすっきりとした目覚め。
熟睡したようだ。
ただ疲労の蓄積ともいえるだろうが。

妻のメールで元気をもらい、今日もいつもの時間に出発する。
昨日同様の火山岩の中を歩いて行く。
キャンプ地がどこだか把握していなかったが、HWY140まで4〜5miと計算。

結構飛ばしてスピーディに歩いたが、HWY140に着いたのは出発から約2時間後。
おおよそ6mi弱あったようだ。
車の通りは少ない道路を渡ると、勢いの良い川が見える。
その脇は開けていてキャンプの跡がある。
そこで休憩、朝ご飯をやっと食べることにしよう。
3者3様、いつもの様に自分の選んだ食事をする。
テンジンは今日も朝からしゃべりっぱなし。
歩いているときもそうだからすごいものだ。
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ちょっと歯が痛いのでしっかりと歯磨きをしてから出発しよう。
もちろん一服は欠かせない。
この前はあんなにのんびりしておいてなんだが、今日は急ぎたかった。
いや急がなくとも、長く歩きたかった。
明日にはCrater Lakeに着ける。
しかし、そのあとの水無し区間が長い。
あまりタイムロスも嫌だし、調整で待つのも避けたい。
となると今日なるべく近づいておいて、明日早めにCrater Lakeに着きたい。
目標は30miだ。

2人はおしゃべりをしながらのペース。
ここから僕は少し飛ばし始める。
膝と足首は変わらず痛いが、ごまかせているといった感じだ。
今日も森の中だが、昨日よりは山に近いこともあり、歩いて楽しい。
その勢いに任せて休憩も取らず歩いていこう。

トレイルの分岐を過ぎ、ひたすら北に向かう。
地図を見ると向かうは北だ。
カリフォルニア、特に北部は大きな山を迂回するのに西へ東へ忙しい。
その為、歩いている距離の割に北に近づいていないのだ。

しばらく進むと、またトレイルの分岐が現れる。
一気に8miも歩いてしまう。
西に小さな池と東に大きな池、どちらにも池がある。
少しPCTから逸れないといけないが、休憩と水補給に東の大きな池へ向かう。
Squaw Lake というこじんまりとした池だ。
その先にはFourmile Lakeという湖があるがそこまではやや遠い。
池の周りは平で開けた場所もある。
よく見ると馬が入った跡も見える。
トレイルから池の方に向かうとキャンプもできそうだとわかる。
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じんじん痛む足首と膝を冷やす。
とても気持ちよい。本当は先が長いので早く行きたいところだが、急ぐと余計にひどくする。
とにかく焦らず、無理の無いペースで進み、でも長く、遠くまで行きたい。
少し冷やしただけでも足はだいぶ楽になっている。

PCTに戻るとちょうどブラックベリーとテンジンが休んでいる。
休憩している間に追い抜かれたかと思っていたが、2人は予想以上にゆっくりのようだ。
彼らを待たずに歩き出す。

ずっと森の中を気持ち良く進んで行く。
この先にあるスプリングを最後にしばらく水の無い区間になる。
キャンプもする必要があるので、そこで水を多めに汲まなくては。
Christis Springはトレイルから少し下がって行った沢沿いにある。
池と違って湧き水は冷たくて綺麗だ。
しかし、流れが強く無いため汲みづらい上に蚊が大量にいる。
これには結構参った。
2人もすぐに追いついて来たが、3人して蚊に刺されながらの水汲みだ。
ノーザンカリフォルニアは蚊が少なくなっていたが、ここに来てまた多い。
水汲みのあと、場所を移して休憩していても、蚊がぷんぷんと飛び回っている。
刺されれば、アメリカの蚊は大きいので、痛いし、かゆい。
でも毎日のように外にいれば、当然だし、むしろこっちから出向いているので文句も言えない。
そうしているうちに少しずつ慣れて来てしまうから不思議だ。
手慣れたように蚊を避けながら遅い昼食を食べる。

ここから先2人はどうするのだろうか。
僕はできる限り少しでも先に行きたいという気持ちがある。
今日はハイペースで歩いていて、既に20miくらい歩いている。
そろそろキャンプする場所を探しながら歩いて良い頃だろう。
でも僕はここからあと10miを目指す。
時間にすると4時間くらいだろうか。
ここからは気持ちの問題だ。
ゆっくりでも良いから歩き続けられれば行ける。
テンジンとブラックベリーの2人はそんなにがんばれないと言う。
僕も何が正しい選択なのかわからない。
それでも、自分の選んだ道を信じるしかないだろう。
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痛む膝をごまかしながら歩き続ける。
想像以上に蓄積した肉体的、精神的な疲労に戸惑う。
思うように身体が動いてくれない。
気持ちで身体を動かし続ける。
ずっと続いた森の中のトレイルはやっと外に顔を出し始める。
景色が開け、空がよく見える。
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またここで予想外の展開。
少し足を止めたとたんに蚊の大群に襲われる。
久しぶりのモスキートヘブンだ!
時間帯も影響しているのかも知れないけれど、慌てて逃げるように歩き出す。

森のトレイルも標高を上げて行くと岩が目立つようになる。
小さなピークが続いている稜線だ。
久しぶりの稜線歩きは気持ちが良い。
ここまで上がってくると蚊も少ないようだ。
向こうには目立つピークがある。
きっとLuther Mtn. だろうか。
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山を巻いて進んでいく、少し下りると開けた場所にでる。
平らなスペースが多く、ここでキャンプするのは楽だろう。
でも、もうあと数mi歩いてみよう。

見える山はなかなか近づかない。
稜線を辿るので真っすぐは行けないからだ。
肉体以上に精神的な疲れもあり、速度はゆっくりと、でも止まらずに歩く。
しかし、ここで無理をしてもしかたない。
止まってみても蚊が寄ってくる気配がないので岩場に腰を落とす。
少しだけスナックを食べて元気をだそう。

休みの効果はあまり無く、気持ちは元気になって来たが足が思うように動いていない。
身体を引きずるように一歩一歩前に動かして行く。
エッジの様な細い稜線を進み、久しぶりにデリケートな岩場の通過をする。
山頂へのサイドトレイルを通りすぎて行くと、また歩きやすい道に戻る。

細い稜線が一旦終わり、開けいるところにまた分岐がある。
おそらくこの東のトレイルは#3739だろう。
ここで一応の目標に到達する。
ここから先は再び細い稜線になりそうだし、30miを歩いた。
終了とする。
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見晴らしの良い場所は好みでは無いが、綺麗に平らだ。
ステイクと石を利用して幕を張り、マットに倒れ込む。
“つかれた”静止、沈黙。
しかし、暗くなる前に食事を済ませてしまいたい。
余計な水を持っていたのも後半のスピードダウンに繋がったのかも。

それでも、とくに急ぐでも無く、淡々と歩いてここまで来られた。
疲れないように歩く大切さを改めて感じる。
そして少しずつでも脚の調子が良くなることを祈ろう。


8/17 (Tue) Hiking Day92/ 26+2mi/ 6:30am- 5:10pm (10:40) /NB 1834mi
“Occasionally Hailstone”

見晴らしが良いということは風も良く抜ける。
朝方になって風が吹いたが問題なく今日も良く眠れる。
いつもと同じ6:30amに出発し、北へ向かう。
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今日の目的地はMazama Village。
ここはOregon でもっとも有名な国立公園であり観光地のCrater Lake に属する。
とても美しいことで有名らしく、とても楽しみだ。

まずは昨日と同じ細い稜線歩き。
一晩寝れば、すっかり回復する身体に我ながら感心するしかない。
ぐんぐんと良いペースで歩いて行く。
Mazama Village までは約28miある。
相当な距離だと思う。
だからこそ昨日少しでも先へと歩みを進めたのだが。
今更ながら初日の出遅れと二日目の朝食を思う。
とんだぐうたらなハイカーに自分でも呆れて笑ってしまう。
もし今日着けないと予定が一日変わってしまう。
それは避けたくて、だからこその昨日だ。
とはいえ、急がず焦らず、進んで行こう。
Devils Peak の脇を抜けて標高を落として行く。
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小さなクリークが山からの水を集めている。
綺麗で美味しい水を飲み、山からの力をもらう。
今日も良い天気で陽射しが暑い。
夏を感じさせる空気が漂っている。

標高を下げるとまた森の中のトレイルとなるが心地よい。
所々ぬかるみもあるが気にしないで歩いて行く。
少し大きなクリークはHoneymoon Creek。
面白い名前だが、理由は良く分からない。
でも周りは小さな湿原もあり、かわいい場所だ。
さっき水を汲んだばかりだが、ここからMazamaまで水無しとなる。
たっぷりと水を担いで行こう。
水は重い。
食料がほとんど無いのが幸いだが、水の重さは堪える。
改めて、急がず慌てず、を心がけて歩く。

縫うように森を抜け、尾根を乗っ越して進む。
だいぶ時間も経過し、身体も疲れてきた。
大きな木の下の影に憩いを求め、幹にもたれかかる。
真っ白い大きな雲が青い空に浮かぶ。
みるみるうちに育って行く姿が自然の雄大さを感じさせる。

その雲は大きく、僕のいるところにも来そうなほど成長している。
風が少し出て来て、これは、と思い急いで出発することに。
歩き始めるころには、ぽつぽつ、雨粒が落ちて来る。

ここからは一気に標高を下げながらMazama Village へと向かって行く。
しかし、まだまだ距離は意外にあるのが困ったものだ。
雨は本降りにはならず、ぽつりぽつりと降っているだけで良かった。
空はすっかり雲に覆われてしまっている。

また大きな粒が空から落ちてくる。
粒が大きいからか痛い。
“タッ!”
“パ、パッ!”
そんな大きな音が一気に増え始める。
身体に当たるだけでその衝撃が伝わる。
痛いわけだ。
なぜならそれは雨では無く、大きな雹だ。
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ビー玉よりは小さいけど、パチンコ玉よりは大きい。
そんな雹が一気に空から降ってきて、地面に当たり跳ねている。
“バタバタバタッ!”周りからはすごい大きな音がする。
雹は地面を一気に白く染めていく。
一旦木の下に隠れるが、じっとしていてもしかたない。
いつ止むともわからないし、当たれば痛いが歩き続けることにする。

フードを被っていても、薄い素材では衝撃はあまり変わらない。
帽子も被っているので頭や顔は防げるが、耳に当たると強烈に痛い。
思わず声が漏れるほどの痛さだが歯を食いしばり歩き続ける。

時間は10分か15分だったのかも知れない。
標高が下がったせいもあるが一気に雹は雨に変わり、勢いも衰えてくる。
しかし、今度は湿気で蒸し暑さが増す。
さらに蚊の量が増し、歩いていても刺されるほどの量になって行く。
道はジープロードを兼ねているのか幅が広がり歩きやすい。
身体も疲れているのがわかるが止まらずに進む。
2人ほどソロのハイカーとすれ違うが挨拶を交わしただけ。

距離は相当あったが、一気にトレイルヘッドまで歩ききる。
車が止まっているのは、さっきすれ違ったハイカーのものだろうか。
トイレも何も無いTH。
国立公園内にしては簡素だと思う。
手前には数張りテントを張れるような場所もある。

トレイルはHWY62を挟んでリムへ向かって登って行く。
僕はこのトレイルを東へと歩いて行く。
東の空には真っ黒な雲が、また降りそうだ。
20分位道路を歩く。
ヒッチハイクを試みるも、数も少なく止まる気配もない。
たくさんの人と車が見える、Mazama Village には5:10pm到着。

Mazama Village はYosemiteと同じようにレストランやグロセリーがある。
グロセリーの裏手は広いキャンプサイトになっている。
そこで泊まることもできるが、僕としてはすることを終えたらTHに戻りたい。
まず、グロセリーに向かう。
まさしくストアではなくグロセリーと言って良いほどの品揃え。
安く無いのだけが玉に傷だ。
シャワーとランドリーもあるのでここで全部綺麗にしよう。

“ザァァァァッ”
再び強い雨が降り始める。
今度は先程よりも強く、雷も伴って大きなストームとなる。
何から始めようか。
雨を眺めて困っていると、突然声をかけられる。
そこにいたのはLone Ranger だ。
Lake Tahoe の手前で別れた以来の再会。
もうずっと先に進んでしまったと思っていたのだ。
事情からすると、奥さんとここで会い数日過ごしていたようだ。
今日奥さんは家に帰り、明日出発予定だと言う。
キャンプサイトに空きがあるからおいでよと誘われる。
しかし、雨はどんどんひどくなるばかり。

まずは食事にしよう。
考えて動かずにいるくらいなら、飯を食った方が元気がでる。
雨の中レストランにダッシュしていく。
レストランの中はお土産屋も入っている。
基本的にここはブッフェとなっている。
たらふく食えるのであれば大歓迎だ。

さすがにまだシャワーも浴びていないので臭いだろう。
周りの人には申し訳ないと思いつつもレストランに入る。
Yosemiteほどの種類はないもののどれも味は良く十分だ。
今ここでどんなにお腹いっぱいにしても明朝には空腹なのが残念だ。
僕が連れて行かれた奥の方にはハイカーらしい姿が他にもある。
臭い奴らはこっちにということか。

これでもかというほど腹に詰め込んで、またストアに戻る。
雨はやっと少し収まってきたようだ。
ストア内で自分のパッケージを受け取り、シャワーとランドリー用に両替をする。

シャワーですっきりとした後、汚い衣類を一気に洗濯しよう。
しかし、コインランドリーはとても込んでいてなかなか思うようにならない。
洗濯はスムーズにいったが、乾燥機が空かないのだ。
なぜみんなこんなに必要としているのだろう。
そう思って見ているとどうも乾かしているものが普通じゃない。
寝袋や枕やチェアなんかまで。
そう、さっきの雨でびしょ濡れにされた人達が慌てて来ているようだ。
切実なこっちを優先させて欲しいが、順番を待とう。

ランドリーの中は暖かいが、外はだいぶ涼しくなっている。
ランドリーの中にはレストランで見かけたハイカー2人がいる。
お互い時間はあるので、何となく会話が始まる。
彼らはサウスバウンドで歩いているようだ。
次の補給地点Shelter Coveについて聞いてみる。
スナック類は買えるらしいが、大したものは無いらしい。
食料は送ってあるが、燃料が心配だ。

7時を過ぎようとしたころだろうか、ハイカーがこっちへ来る。
TangentとBlackberry だ!
2人ともずぶ濡れで悲惨な姿だが笑っている。
“大丈夫かい?”“ああ、なんとかね”
彼らはさっそくシャワーに向かって行く。

やっと僕も乾燥が終わり、着替えて全て準備が終わる。
雨はすっかり上がり、空気は湿っているが気持ちよい。
レストランにいるテンジンとブラックベリーに会いに行く。
彼らは見違えるように綺麗になっている。
特にブラックベリー、一段とかわいい。
同じ席に座っている女性はスルーハイカー“Bump”。
初めて会う人だ。
彼女はローンエンジェルと同じキャンプサイトにいる様だ。
僕はこのまま出発するよ、と言ってみんなと別れる。

真っ暗な道路の中またTHに戻って行く。
明るいうちに目星をつけておいた場所に素早く設営し就寝。
時間はいつもよりだいぶ遅いが、考えていたよりは良さそうだ。
明日は約30mi近い水無し区間を通る。
みんなそれぞれの考えに基づいてここをクリアしている。
僕は一気に31miを歩こうとしている。
できるのか否か。
食料もここから大量に再び背負っている。
しかも、水もたくさん背負わなければ。
考えると不安はあるが、それでも自分の信じた道を進もう。
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by hikersdepot | 2012-08-28 18:06 | PCT 2010 by Turtle
Ashland, OR to Mazama Village, OR/ Day 115–118/ Hiking Day 89–92/ 1730.8mi –1833.6mi/ 107.2mi/①
8/14 (Sat) Hiking Day89/ 22mi/ 12:00pm- 7:30pm, 9:00pm-9:30pm (8:00) /NB 1753mi
“My little Friend”

眠い目をこすりながら起きる。
昨日の寝不足が今日どんな結果になるのか。
7時にKiwaさんの旦那さんでRobert が迎えに来るはずが来ない。

電話をした方が良いだろうか、気になって外に出てみるとうろうろしている男性が。
しかし、部屋番号は伝えてあるから尋ねてくるはずだ。

女性のハイカーが一人出て行くのが見える。
彼女もPCTハイカーだろうか。

そろそろ心配になった頃、さっき外にいた男性が部屋に尋ねてくる。
彼がロバートさんだ。
来ていたのにずっと待っていたようで、彼も心配になり家に電話したという。
ケイラブとトレインに別れを言う。
車は小さいオープンカーで男三人がギリギリで乗り込み出発だ。

家までは車だと5分もかからない。
7:30am頃に貴和さんの家に到着。
すると家からまだパジャマ姿の太朗君が飛び出してくる。
彼は日本語と英語の発音が混ざった独特な言葉で元気に話しかけてくる。

家に入ると直ぐに目に飛び込んでくるのは太朗くんの電車のオモチャだ。

挨拶もそこそこにタロウ君との話が始まる。
ロバートさんは日本語はほとんど話せない。
なので会話はHuiに任せることにしよう。
こっちは太朗の世話でいっぱいだ。
お母さんの貴和さんの言葉を無視していっぱい話しかけてくる。

しばらくして朝食の準備ができる。
お腹はぺこぺこだ。
太朗は貴和さんの隣が定位置だが、僕の隣に座りたがる。
ずいぶん気に入られてしまったようだ。
ぼくもこの小さい友人がかわいくてしかたない。

テーブルには美味しそうなフレンチトースト。
それと大好きなパテソーセージが並んでいる。
楽しい会話をしながら朝食のスタートだ!

旦那さんのロバートの仕事は大学の美術教師だったという。
だった、というのは失職してしまったからだ。
こんなところでアメリカの経済状況をしることになるとは思わない。
しかし大学の経営も厳しいのだという。
Huiは美術に興味があるらしく、部屋に飾ってある絵にも興味を示す。
2人が話に花を咲かせている間に、日本語で貴和さんと太朗と話をしよう。

今日の招きになった理由は太朗が僕に会いたがってくれたからだと言う。
昨日バスで別れ家に帰った後、しきりに話をしていたらしい。
“また会えるかな”“戻ってくるかな”“会いたいな”
そんな風に言ってくれていたのだと貴和さんが言う。
なんてかわいいのだろう。
ちょっとすれ違っただけの僕に。この出会いは全て太朗くんのお陰ということだ。
隣に座っている小さな友人に心から感謝しよう。

食べても食べてもきっと直ぐにお腹が空いてしまうだろう。
そう思い、詰められるだけ胃袋に詰め込んでいく。
貴和さんの作ってくれたフレンチトーストはシンプルだがとても美味しい。
きっとどこかに日本人の味付けの塩梅があるからかも知れない。

子供はみんなそうだろう。
知らない人や友達がくると少し背伸びしたくなる。
いつもは甘えてあれ取ってこれ取ってという太朗。
なのに今日は自分で牛乳を注いだり、食べ物を取ったりすると貴和さんは言う。
がんばれ太朗。大人への一歩だぞ。

これもまた子供ならでは。
食事に飽きて遊びたがる。
もう少し食べたいのでごまかしていたが、そろそろ遊びにつき合ってあげよう。
一緒に電車の本を見て話をする。
太朗の詳しさにびっくりだ。
日本の電車のおもちゃが多いのはなぜだろう。
それは貴和さんの妹がかわいい甥の為に送ってくるのだという。
無理もない。

トイレの中にも絵が飾ってある。
どうやらロバートの描いた絵のようだ。
二階にロバートの絵が飾ってあるというので見に行く。
主に抽象画のようだ。
それよりも気になったのが大きな積み木。
それは太朗を身ごもってから貴和さんが作り始めた牛乳パックの積み木だ。
相当な量な上、一つ一つが大きい。
子供への大きな母の愛を感じるものだ。
しかし、今の太朗は電車に夢中。

太朗は一階のリビングで線路を並べ電車を走らせ始める。
あれあれ。
どっちみち早くは出られないと覚悟していたので、ギリギリまで付き合おう。

遊びながら貴和さんと話をしたり、パソコンを借りてメールのチェックをしたりと時間を過ごす。
太朗ともっと遊んであげたいが、そろそろ旅立たなくては。
本当に名残惜しい。
子供は本当に勘が良い。
徐々にそわそわしてくるのだ。
ごめん、太朗。

別れをしたいのに太朗はかくれんぼを始めてしまう。
それを捕まえて、強く抱きしめる。
たくさんの元気をありがとう。
たくさんの勇気をありがとう。
きっとこの思い出だけでずっと歩き続けられると思う。
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後ろ髪を引かれる思いで出発。
一路、THへと向かう。
車内でもロバートとHuiは良く盛り上がって話している。
THの場所を知っているというのでおまかせだ。

しかし、来た時とはだいぶ違う道のようだ。
でもこの方が近道なのだろう。
それにしても時間がかかるし、道はくねくねと山に向かっていく。

途中からわかっていたが言い出せずにTHに到着する。
ここは僕達が行きたかった場所よりもだいぶ進んだところだ。
時間も遅くなってしまったし、ここから歩きたいのは山々だ。
でも戻ろう。
Huiと2人説明をして道を戻ってもらう。
とんだ時間ロスだがしかたない。
少し仮眠でもとろうか。

結局HWY99のTHに到着したのは12:00pm前。
申し訳なさそうにするロバートさんだが、大丈夫、これも人生。
本当に感謝だけ。
固い握手をして別れる。
本当にありがとう。

ロバートが去り、Hwy99の向こう側にあるTHに向かう。
道路を歩きながらHuiが僕に尋ねる。
“あの子は誰の子供なの?”
何を言っているのか、意味が分からない。
しかし微妙な顔をして僕を見るHui を見て察する。
“違うよ、僕の子供じゃないよ。間違いなくロバートの子だよ”
たしかに、太朗はパッと見には日本人だ。
けれど、ロバートの小さい頃の写真を見ると太朗に良く似ている。
今の太朗もよく見れば日本人らしからぬはっきりとした顔だ。

THに着くと、大きなクーラーボックスが置いてある。
そこの張り紙には、
“PCTハイカーは必ず2本以上飲むこと!”
とすごいサインが書かれている。
その下には、Croatian Sensation & Not a Chance、の名前がある。
思わずHuiと2人笑い合う。
お腹はいっぱいだが、遠慮なく頂こう。
実はもう既に少しお腹が減ってきている。
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ひとしきり準備が済んだらいよいよ出発のときだ。
いかにも里山といった雰囲気の山を進んで行く。
出発が12:00pmちょうど位だろうか。
陽射しは完全に強さを手に入れ、じりじりと暑い。
しかし、そんなことには負けずに歩かなければ。
膝の状況は悪く無い。
Huiは相変わらず早くて姿が見えなくなってしまうが気にせずマイペース。
とりあえず何mi歩けるか解らないが、遅れた分を少しでも取り返したい。

トレイルはなだらかで、小さなジープロードと時折交わりながら進む。
歩き始めて10miくらい、いくつか目のゲートの中に水場がある。
そこには先客が、Tangentだ。
どんな水場だろうと思っていたが、立派な水道がある。
蛇口をひねるとゆっくりだが綺麗な水が出てくる。
ありがたい。
陽射しを避けられる場所は少ないがここで一休み。

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テンジンは水を浄水するために鍋に一度水を溜めてからポンプにかけている。
すると鳥も飲みやすいその鍋に水を飲みに来たようだ。
突然地面がぼこぼこと浮き上がる。
何事かと思って見ていると、モグラが地面からひょこっと頭を出した。
出て来たものの人はいるし暑いしで、急いで穴に戻っていく。
こんなモグラの姿を見るなんて初めてで面白い。
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いつまでも休憩していたいが、時間は限られている。
さあ、先を急ごう。
しっかりと水分補給をしてから出発だ。

少しずつ植生は雰囲気を変えつつある。
ここには木から垂れた藻のようなものがある。
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今はこれだけ乾燥しているし暑いがきっと湿ることが多いのだろう。
陽は傾き始め、目に映る景色はややオレンジ色を帯びて見える。

所々街が見える場所がある。
こう見るとAshlandは山間の街なのが良く分かる。
大きなダム湖はこの周りから流れ出す水を集めているのだ。
これだけ乾燥した場所であれば、こういう水の集め方もしかたないのだろうか。
いままで漠然とダムを批判していたが、それは水に恵まれた日本の傲慢なのかも。
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とにかく黙々と歩いていく。
何mi歩いたかを考えるより、少しでも先に進みたい。
目標はHyatt Lake だったが、そこまでは辿り着けなさそうだ。

HWY66は今日ロバートが間違って来てしまったTHだ。
もう時間は19時を過ぎている。

濃い樹林帯の中、山肌に沿うように歩いていく。
比較的なだらかな地形の今日は水場が少ない。
地図で表記してあるほとんどがダメだで、最後に汲んだのはテンジンと会ったところ。
この先にも、Water Faucetのサインがある。
しかし、Yogi’s にはそれは動いていないと書いてある。

前から歩いてくる人の気配が。
こんな時間に歩いているのは変わり者のハイカーだけだろう。
カップルのハイカーと一人のハイカー。
彼らはSouth Boundで歩いているハイカーだという。
Canada Borderを6月終わりに出発してきたのだ。
“この先は水が無いよ”
親切に教えてくれる。
でも、もう少しがんばれば川に出られるはずだ。
それよりも気になったのは、Hyatt Lakeのレストラン。
“すごい美味しかったよ!今日はスペアリブの日だ”
週末限定でスペアリブが出るらしい。
しかし、もうどんなにがんばっても時間は待ってくれない。

彼らとお互いに励まし合い別れる。
僕らはNorth Bounder は残り900miだが、SBはあと1700mi。
向かう方角こそ違えど、同じ目的の仲間よ、幸あれ!

しばらくするとまた人の気配を感じる。
今度はがやがやと大人数のように思う。
すると川が流れ、小さな道路に飛び出す。
Little Hyatt Lake に辿り着いたらしい。
目的のHyatt Lake までは残り1.4mi。
僕は行くつもりでいたが、Huiがここで終わろうと言い出す。
無理して歩き続けるより、水場のあるここでゆっくり食事をしようと言う。
なんだか不完全燃焼のようなやりきれない気持ちはあるものの、時間は8時を回ろうとしている。

あまり綺麗な水ではない。
この上のLil Hyatt Lakeから流れ出しているからだろう。
湖や池の水は濁りがちだ。
それでも貴重で大切な水をありがたく頂こう。
各自“いつもの”食事をすまし、少しのんびりとする。
空は闇に覆われようとしている。
ところが、雲が大きく違和感を感じる。

“ゴロゴロ”
怪しい音が聞こえる。
でもこの音が聞こえたということは、そういうことだ。
“ポツポツ”
大急ぎで荷物を撤収する。
結構大きな雨粒は一気に僕らを濡らしていく。

川辺でもキャンプはできそうだったが、湿っていて虫も多い。
さらに人も道路も近すぎてうるさい。
真っ暗な中少し上がって行くと大きな木が立ち並んだところに出る。
しかし、この辺は微妙だと思い、もう少し先に。
そこから斜面を上がらなければいけないようだ。
森に入っていき、スイッチバックで登っていく。
斜面だし、下草や倒木が多く、寝やすい場所が無い。
するとHui は“戻ってテントを張る”という。
川辺からもろくに離れていないし、だったら川辺でいいじゃん!
そう心で突っ込みながら、僕とテンジンは先へと歩いていく。
Hui は斜面を降りて行く。

そんなに歩いていないと思うが、すぐに登りきり、平になる。
真っすぐなジープロードを横切ると少しだけ開けて平らな場所に出る。
3人は厳しいが、2人なら十分なスペースを取れる。
“ここにするかい?”とTangent 。
“ここで十分だよ”
時間は午後9時を過ぎている。

各自いつもの家を建て終えて、まだ雨が降るので中に入りながら話をする。
彼はこのPCTスルーハイクが2度目だという。
一度目は1997年。
今から13年も昔のことだ。
背も小柄で、一見若いかと思っていたら、どうもそうでは無いらしい。
彼が初めて歩いた時はまだ道もしっかりと整備されず、トレイルエンジェルもいない。
大きく発展したのは、2003年にYogi がPCTにチャレンジして以降だろう。
そう、まだYogi’s Book も無い。
GPSも出たばかりでろくに使えない上に高価では手が出ない。
そんな時代にPCTを歩いた人に会えるなんて。
彼も結婚していて、奥さんの理解の上、またこうして歩いているのだ。

今日もまた新しい発見と出会いが多い一日だ。
まだ雨は降っているが、だいぶ収まったようだ。
きっと明日の朝には晴れているだろう。
時間もだいぶ遅くなってしまう。
これからのことだが、約束できることが一つ。
きっと今晩は、熟睡に違いない。



8/15 (Sun) Hiking Day90/ 25mi/ 9:45am- 8:30pm (11:15) /NB 1778mi
“Each and All”

湿った朝、いつもの様に起きる。
撤収も手際よく、テンジンと2人で歩き始める。
Hyatt Lake のキャンプ場まではあっという間に着いてしまう。
こんな近くまで来ていたのだ。
だったら昨日の夜も、と今更考えても詮無いことだ。

Huiもすぐに追いついてくる。
ここのキャンプサイトにはシャワーがあるらしい。
できたら一汗流したいと思う。
Huiは、必要ない、と先を急ぐという。
Tangent と僕はとりあえずシャワーということに。
トイレとは別にシャワー棟があり、結構綺麗に手入れされている。

さっぱりとした後は朝食だ。
実は湖の近くにレストランがあるのだという。
昨日あんなにたらふく食べているのだから我慢できないわけじゃない。
でも食べられるのなら食べてみたいと思う。
“テンジンはどうする?”
“ああ、どうしようかな”
そう言って僕と一緒に行くようだ。
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広く綺麗な湖だ。
ここも人口で作られた湖なのだろうか。
不意にテンジンが声を上げる。
水の中に中がいるようだ。
よく見てみるとそれはBeaver だ!
とても良く知っている動物のはずなのに本の中でしか見たことが無かった。
時々湖面に顔を出しに浮いてきたり、また潜ったりしている。
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建物のある方へ歩いていく。
そこにはレストランととても小さな売店があるくらいだ。
ここのレストランは夕方からしか営業していないよう。
まあ、それなら諦めてコーラだけ飲んで先に行こうか。
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売店で買ったコーラを飲む。
テンジンも売店から出てくると言う、
“もう少し離れたところにレストランがあってそこならBFが食べられるらしいよ”
言われなければ気にしないのに、言われてしまうと気になってしまう。
悩まずに“じゃあ行ってみようよ!”と言っている自分に驚く。

テンジンもなんだかんだ言いながら付いてきている。
いったん道路に出て、少し歩かなければ。
右か左かも良く分からない。
すると湖の整備車が近づいてくるので場所を尋ねる。
“あぁ、あっちだよ”と気さくに答えてくれる。
すると、“乗ってくか?”の言葉。
待ってました!!

整備のおじさんはとても良く髭が似合っている。
どう見てもハイカーの僕らにどのくらい歩いているのか尋ねてくる。
さっと事情を説明したが、とても驚いている。
こんな近くで働いているのにPCTがあるのを知らなかったようなのだ。

ありがとう、そう言って車を降りる。
ここはたくさんのコテージが並ぶ別荘地らしい。
一棟ごとのコンドミニアムといったところだろうか。
時間はどんどん過ぎていくのにおかまい無しな僕らはほんとのんきだ。
結局レストランのオープンまで数分待って店の中へ。

メニューはこれといって特別感はない。
まあ期待していた訳じゃないので問題ない。
しかし、ウェイトレスのおばさまは優しく、感じの良い店だ。
さっさと注文をして待つ。
テンジンとはあまり話が弾まない。
彼という人がいまいち見えてこないが、きっとぼくと違ってステディなタイプなのだろう。
そういう人が僕に付いてきてしまったので少し焦っているのかも知れない。

店内には次々と客が入ってくる。
モーターバイクの団体客が入ってくる。
一気ににぎやかな店になったものだ。
出て来た料理は大満足だ。
普通にとても美味しい。
突飛な美味しさじゃないが、とても大切で十分だと思う。

ゆっくり朝食を食べたあと、歩いてTHへ戻る。
結局、3時間遅れのスタートになる。
これは失敗なのか成功なのか。
不思議にも何の迷いも無く行動していた自分のびっくり。
朝食大好きチャーリーが乗り移ったのかもしれない。

遅ればせながらトレイルに戻り先に進む。
今更急いだところでなんだが、先を急いでおこう。
黙々とトレイルを歩き続ける。
これといって特に特長の無い道がずっと続く。
Nカリフォルニアは岩山も多く、アップダウンも続きメリハリがある。
しかし、オレゴンは前評判通り、なだらかで特徴のない道だ。
飛ばすことは飛ばせそうだが、どう飽きずに歩くかが課題になりそう。

お腹もいっぱいで快適に飛ばしてHuiに追いついてやりたい。
ところが彼は歩くのが早い。
追いつけないだろうな。

Grizzly Creek の沿ったジープロードの日陰で休憩する。
昨日濡れたシェルターなどを干しながら軽く食事をする。
おそらく用水路なんだろうが、不自然に真っすぐな流れ。
水もけっして綺麗では無いが、少しだけ水を補給する。

その後も単調な道は続く。
少しずつ山に入ってきている様で、木々も斜度も変わってくる。
ふとしたカーブの先、小さな木の下の木陰に人が横になっているのが見える。
昨日の朝モーテルで見かけた女性のハイカーだ。
“やあ、こんにちは。調子どう?”
“やあ。暑くて。少し涼んでいたの”
彼女の名前はBlack Berry。
木の実と携帯とのどちらを意識した名前なのだろう。
彼女は陽射しが暑いので休憩しているのだという。
突然ぺらぺらと話し始めるテンジン。
びっくりした、彼はこんなにおしゃべりだったのだ。
日本人の僕相手に話しあぐねていたのだろう。
そんな彼女とも一緒に歩き始める。
それぞれ違うペースだが、ここで出会ったのも縁というものだ。

今はただただ前に向かって歩き続けるだけだ。
ひたすら森の中を抜けて行く。
そして時折ジープロードが交差してくる。
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Griffin PassにはWater signがかかっている。
少し道は逸れるが、Spring(湧き水)があるらしく、美味しい水を飲みたい。
フェンスに囲まれた区域があり、ゲートを通る。
木道が敷いてあり、管理整備されている様子がうかがえる。
その一番奥まで行くと下から水が沸き出している。
本当に綺麗な水で、とても冷たい。
この暑さから少しでも解放されるのはありがたい。
3人順番に水を汲んで、またそれぞれ歩き出す。

徐々に風景が変わり始める。
少し目立つ岩が多くなって来ている。
どうやら火山岩のように思える。
小さなピークを巻き、整備された道路を越える。
しばらく歩くと立派な道標があり、PCTを逸れて曲がる。
するとそこには、小さなShelter(小屋)がある。
Brown Mountain Shelter には大きな井戸もある。
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もうだいぶ良い時間になっている。
ベンチとテーブルもあるし、休憩をする。
腹も減ったし、ここで夕食を食べてしまうことにしよう。
食事の準備をしていると遅れた2人がやってくる。
彼らもここで一休みするようだ。

シェルターの中はそれほど広くは無いが3人くらいなら寝られるかもしれない。
ハイカーレジスターには懐かしい名前がたくさん見られた。
White Beard、3rd Monty にはまた抜かれてしまったようだ。
ほんの一日、二日前なのに、同じようなスピードで進んでいるので追いつけないだろう。
僕はTurtleにふさわしい歩き方がいつかできるようになるだろうか。
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陽射しは傾き、空の明るさが変わって来る。
もう少し先に進もうと思い、水を汲み出発。
ここからは3人で歩みを揃えて進んで行く。
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Brown Mountain は火山でトレイルの周辺はまるで富士山麓の様だ。
たくさんの気泡の跡が残る火山岩。
その山をぐるっと回り込むように進む。
所々歩きにくい場所もあるのだが、整備の仕方が丁寧で歩きやすい。
岩の間に土を入れ、土嚢(のう)で整えて平にしてあるのだ。
ここまでするのかと思うが、だからこそ他に道を作る必要も無く、山は荒れない。

道は歩きやすくて良いのだが、岩も多く、平らな場所が少ない。
小さなキャンプ跡は見るが3人は寝られない。
別に仲良く並んで寝る必要もないので別々になろうかと話をする。

さすがに陽は落ち、いよいよ月と闇の時間となる。
もういい加減に決めなければと思ったころ、木々の間にスペースを見つける。
少し斜めになってたり、地面も整えたほうが良さそうだが、十分だ。

僕がテントを立てているとブラックベリーが珍しそうにしている。
テンジンが“日本の軽量テントらしいよ。本当に珍しいよね”と説明してくれる。
クラシックな三角だがフレームも無く、でも綺麗に立てることができる。
かつ、軽い。

2人は食事をまだとっていないので、夕食に取りかかる。
僕は食べ終わっていたが、もうお腹が減り始めている。
お菓子でもつまもう。
テンジンは超マシンガントークで話し続け、楽しそうだ。
ブラックベリーも乗りが良く、2人はなかなかお似合いだ。
けれどどちらも既婚者で、ブラックベリーは最近まで旦那と歩いていたらしい。
住んでいるのはカナダで彼は仕事で帰ってしまったが、彼女は一人オレゴンを抜けるまで歩くつもりらしい。
こういうセクションハイクのやり方も楽しいと思う。

こんな場所でまさかと思っていたが、携帯の電波が届く。
電波が入るところではできるだけ日本にメールをする。
そのあとは、しっかりと体操をしてのんびりしよう。
少しだけ必要なものをREI.comで買うことにする。
終わってから考えてみたが、きっとこの通信料高いんだろうな。
過ぎたことだが、高い代償な気がする

これも良い勉強か。
これも一つのHiker Directionと割り切ろう。
ああ、今日も遅い、寝不足だ。
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by hikersdepot | 2012-08-21 18:04 | PCT 2010 by Turtle
Ashland, OR / Zero 2 Days / Day 113 – 114
8/12 (Thr) / Zero 22
“Busy Day”

今日はゼロデイだが、ゆっくりもしていられない。
午前中から忙しく動き出す。
まずはダウンタウンへと向かうためバスに乗る。
昨日は歩いたし、歩けなくは無いが時間がもったいない。
中心部は大学もあり、人も多く栄えてはいるが小さい街だ。
それでもバスがあるというのはそれだけの人を抱えた街なのだろう。
そして大きい街のように複雑でないのは助かる。

バスはループのようにダウンタウンとを回って走っている。
ここは大きなグロセリーもあるし、小さなショッピングモールになっている。
そこからバスに乗る。
バスは昨日歩いた道よりも少し大きく回り込み、民家の多い通りを行く。
そこからアジア人女性とその子供が乗り込んでくる。
その親子は日本語で話しているので少し嬉しくなる。
まさかこんなところで日本人に会うとは思わない。
なんとなく話しかけてみる。
彼女はこの街に住んでいるようだ。
そして子供、男の子は“タロー”君というらしい。
観光ですか、と聞かれ事情を説明する。
いまいち理解できないようだ。
PCTを知っていればまだしも、これが正常な反応だろう。

ダウンタウンに着くまでの時間は短いが日本人に会えて嬉しい。
タロー君はとても元気で大きな声で“バイバイ”と言って別れる。
まずPost Office の場所を確認する。
帰りにバウンスボックスをピックアップする予定だ。
西も東もわからないけれど歩いていれば少しずつでもわかってくる。
街を流し歩こう。
Oregon 初の街。
何度も訪れたことのあるアメリカだが、オレゴンは初めてだ。
やっと州を越えることのできた嬉しさ。
初めて訪れる街。
初めて訪れる州。
いろいろな喜びがあり、心は踊る。
道路に面したお店を覗きながら歩く。
ふと、大好きなアウトドアショップが目に入る。
州が違えば置いてある商品も違うかも知れない。

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とはいえ寂しいかな大きくは違わないものだ。
けれど、それでも楽しんでしまう。
浄水剤のアクアミラ液体タイプが売っている。
カリフォルニアは州法上販売が禁止されているので買うことができない。※1
しかし、ここはオレゴン、迷わず購入。

その後、ふらふらと街を歩く。
最近は夜になると冷える。
手持ちのニットキャップをSeiad Valley で無くしたので、代わりを探す。
以前Bishop で買ったフリースキャップだけでは寒くなり始めたからだ。
ダウンタウンのメインストリートにはたくさんのお店が並ぶ。
人の通りも多くとてもにぎやかだ。

広場のようになったところにはたくさんの人々がそれぞれに楽しそうにしている。
その近くにもう一つ小さなアウトドアストアを見つける。
見えている店舗はとても小さく、アパレルメインの品揃え。
しかし地下もあり、割と面白い店だ。
結局気に入ったニットキャップは見つからず、薄手のネックゲイターにする。

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学生の街だからか、飲食店の価格は抑えめな店も多い。
昼食を食べてからまた通りを歩いていく。
ランニングショップや飲食店が並ぶ。
その角地にかわいい看板のアイスクリームショップがある。
アイスメーカーからの仕入れでは無い、オリジナルのアイスクリームらしい。
ミルクシェイクもあるようだ。
これは美味しそうだ。
ここは飲んでおくしかないだろう。

ミルクシェイクを持って外に出ると、偶然にもShade に出会う。
僕の持っているものを見て、俺も、と店の中に入っていく。
2人でミルクシェイクを飲みながら、外のテーブルで話をする。
彼もまたHostel がいっぱいで僕とは違うモーテルに泊まっているようだ。
そのモーテルにはWalking Sisters や他のハイカーも泊まっているらしい。
彼は今日一日ゼロデイを取って、明日には出発するようだ。
僕はもう一日足の様子をみたい。

その後、ランニングショップで膝の痛みに効きそうなものを探すがあまり無い。
Shade と別れてモーテルの方へ戻る。
モーテル近くの安売りストアやグロセリーストアで買い出しをする。
ここから先のオレゴンでは今までのように自由に食料の調達がしにくい。
この街から数カ所の街に送らなければいけない。
いくつか方法はあるし、必ずしも送らなければいけない訳ではない。
けれども、送っておいた方が無難だ。
Crater LakeのMazama Village。
Odell Lake のShelter Cove Resort
McKenzie Pass の北にあるBig Lake Youth Camp
Mt. Hood 中腹のTimberline Lodge
この4カ所。
買い出しの量は尋常じゃない。
この旅で最もカートの中がいっぱいになる。
支払額もなかなかのものだ。

大量の食料をモーテルまで運びこむ。
今度はこれの仕分けが必要だ。
もう一度ストアに戻り、Cardboard Boxを分けてもらう。
大した作業ではないはずなのだが、時間をずいぶん費やす。

外から人の声が聞こえる。
どうやらハイカーが来たようだ。
外に出て挨拶をする。
Flashback というハイカー以外に2人、計3人のグループだ。
彼らに会うのは初めてで、いつ頃の出発なのか尋ねたら、なんと6月だという。
6月出発で追いついてくるなんて、異常な早さだ。
信じられない。

今日の夕食はグロセリーのデリで適当に買ったものだけで済ます。
でもコーラだけは欠かせない!

だんだんと疲れて来て頭が回らない。
時間だけが過ぎていってしまう。
今日はスムーズとは言えないが、一日よく動いた。
スルーハイカーの休日は忙しい。


※1 2012年4月、店舗によってはカリフォルニア内でも販売している。州法が改正されたのか、薬品自体が変更されたのかは未確認。



8/13 (Fri) / Zero 23
“Lazy Day”

昨晩遅くまで送る荷物の仕分けをしていて寝不足。
何となくいつもの習慣で目を覚ますが体は思うように動かない。
というよりも動きたくない。
TVのドラマに釘付け。
僕の大好きなドラマがたくさん放送されている。

だらだらと動き始める。
まずはUPSでしか送れない(ことになっている)荷物を持っていく。
今のモーテルはダウンタウンから離れているが、UPSストアが近くにあるのはありがたい。
その後一度モーテルに戻り、大量の荷物を持って隣のファマシーへ。
ここの中にはポストオフィスがあるので、今度はここから荷物を送る。
General Delivery 宛の荷物はその街の中央局にしか送れない。
なので、受け取りはダウンタウンへ行かなければならなかったが、発送はここからできる。
Ashland での行動を考えると、THへも近いし、ここのモーテルはベターな選択だ。
本当はもっと早く終わっても良かったが、やっと昼前に荷物を発送し終える。

モーテルに戻り部屋へと向かう。
ふと見えた室内には見慣れた顔がある。
思わず部屋をノックすると、出て来たのはCarabだ。
ベッドの上にはTrain の姿もある。
三人で再会を喜び合う。
Hat Creek Rim の手前、Subway Cave で会った以来だ。
Hui も一緒にいるらしいのだが、彼はグロセリーに行っているらしい。
彼らはビールが大好きで、既にサイドテーブルには空き缶が積まれている。
これもまたスルーハイカーの姿。
欲望がどんどん素直に現れてくる。
またあとで Hui に会いに来るよ、と部屋を出る。

特にすることもないのだが、ふらりとダウンタウンへ向かう。
できればインターネットで調べたいことや、日本へ連絡をしたかった。
ところが、今日は平日にも関わらず図書館は休みだ。
アシュランドの図書館は親切で、金曜を休む代わりに土曜日に開けている。
しかし、僕との相性は悪かったらしい。
残念だがしかたない。
まあどこかにインターネットカフェがあるだろう。

ところが、どこにもコンピューターがありそうな場所が無い。
試しに観光案内所でも聞いてみるが、さっぱりわからないらしい。
今のアメリカでは、カフェのほとんどがFree Wifi になっている。
そして、みんなが普通にコンピューターを持っている時代なのだそうだ。
旅行にもノートコンピューターは普通のようだ。
さらにスマートフォンやタブレットが拍車をかけているのだろう。
残念ながら、まだ僕は携帯電話だ。※2

結局目的は果たされず、ただ街を散策する。
中心から少し外れたところに、オーガニック中心のグロセリーを見つける。
今のアメリカではこういったグロセリーがどんどん増えている。
ちょっと中を見て回るがどれも高くて、ハイカーの僕には必要が無い。
外にでると、Flashback 達が座っている。
てっきりもうトレイルに戻ったのかと思っていたが、補給中らしい。
それにしても時間はもう午後、こういうペースもありかと思う。
スルーハイカーには時間がたくさんあるのだから。

彼らに別れを言い、帰ろうと思うがもう少し街をぶらつく。
昨日のアイスクリームをまたとも思ったが気分じゃなかった。
結局何もせずに帰ることになったが、まあそんなこともあるさ。
のんびりバスを待って帰ろう。

バスに乗ってびっくり。
昨日出会った日本人の親子、タロー君に出会う。
いくら狭い街とはいえ偶然とは思えない確率だ。
昨日は聞けなかったが、名前を尋ねる。
池田貴和さんと太朗君だ。
ここAshland に留学に来ていて出会った人と結婚し住んでいると言う。
もちろん名字も変わり英語の名前もあるのだが、日本人には日本名で通しているらしい。
短い時間であまり話はできないが、とても嬉しい再会に会話は弾む。
また会えると良いな、そう思うが僕は明日には出発する。
コンピューター使わせて下さい、と喉まで出かかって飲み込んだ。

モーテルに戻り、部屋でのんびり。
久しぶりに一人部屋でのんびりとだらだらする時間は素晴らしい。

そろそろ夕食の時間になろうかとしている。
Train達の部屋へ行くとHuiが戻っている。
彼らに明日の予定を尋ねると、Hui だけ明日出発するという。
どのようにTHまで行くのかが問題だ。
様々な人の交差する街からだとヒッチハイクは難しくなる。
もちろん時間をかければできないことは無いが、できれば無駄を無くしたい。
それじゃあ、ということで明日はHui とタクシーでTHまで一緒に戻ることにする。

Train達が言うには、Ashland にCroationとNot a Chanceが来ているという。
家族が来ていて、街から少し離れたところに泊まっているようだ。
今夜、Ashland にあるBreweryで待ち合わせているという。
いつものごとく飲んだ暮れるつもりなのだろう。
今でさえ、この部屋には数えきれないほどの空き缶があるというのに。
一緒に行くかい?、と誘われるが明日があるので断る。
“2人によろしく”

彼らの部屋を出て、一人また近くのJapanese Restaurant へ行く。
Korean とJapanese のミックスはたまらなく美味しい。
なにより腹一杯に米が食べられて嬉しい。
今日はプルコギを頼んだ。
既に間違いなく日本食ではないものの、美味いことは素晴らしいことだ。
本当の美味さは、国も好みも越えて、旨い。
帰りにグロセリーに寄って甘いものを調達。
もちろん一緒にコーラもだ。
甘いものを食べたあとのコーラのスパイシーさが癖になる。
明日からまた少しの間、美味しい食事はお預けなのでフルーツも買っておこう。

モーテルオーナーの女性はとても親切だったので、明日出ることを伝えに行く。
彼女は、Ashland にはもっと楽しめるところがあるからまた来てね、と言う。
あぁ、いつかまた来たい。
来られる日を心から願おう。
それと彼女から渡されたのは一枚のメモ。
さっき電話がかかってきたのよ、と言うのだ。
そのメモには電話番号とバスで出会った女性の名前が書いてある。

部屋に戻って、気持ちを整えてから電話をかける。
アメリカ人の旦那さんがでたらどうしよう、なんて説明しようか。
そんな心配はまったく必要なく、受話器からは女性の声が聞こえる。
時間的に夕食の誘いが外れてしまったのかと思っていた。
ところがそうでは無く、明日の朝食の誘いとTHバックの提案だ。
断る理由もない。
心からの感謝とともに彼女からの提案を受けることにする。
しかし、Hui のこともあるので、一人友達を連れて行くことは付け加える。

電話の後、Huiに説明をしに行くが、彼はいまいち事態が飲み込めない。
それはそうだろう。
僕もなにがなんだが良く分からないが、これもTrail Magic なのだろう。
とりあえず、明日の予定は大幅に変更となる。

誰かにこのことを話したい。
日本にいる妻に電話をする。
その為には夜遅くまで起きていなければならないが苦にはならない。
久しぶりの長電話でたくさん話をする。
それでも話しきれないたくさんの思いが胸に詰まっている。

全てに感謝する気持ちが胸にあふれている。
強い身体を与えてくれた、父と母。
兄夫婦、甥と生まれたばかりの姪。
今まで迷惑ばかり掛けた親友達。
僕の背中を押してくれた上司。
アメリカでのサポートをしてくれたロスの友人。
折れそうな心を何度も救ってくれたトレイルエンジェルたち。
僕の大切な相棒、チャーリー、ダニエル、ジョー。
たくさんの同じ目的を一緒にする同士、スルーハイカー達。
なによりも、言葉では言えないほどの感謝を、妻に。

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※2 今はiPhone を持っています。PCT上の街でもwifi が使える場所が増え、PCが姿を消しつつあります。モーテルやホテルはほぼ全てがwifi 環境にあります。都市部ほど有料が多く、郊外や地方ほど無料wifiが普通です。ヨセミテやグランドキャニオンといった大きく有名なNational Park では一部のカフェで無料wifiの環境があります。今後、アメリカのトレイルもしくはロングハイキングに行く場合はPCの環境は当てにできません。
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by hikersdepot | 2012-08-15 17:51 | PCT 2010 by Turtle