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Mt. Shasta, CA/ Day 104
8/3(Tue)  a Zero Day
“Driving North California”

すっきりした朝。
やはりベッドで寝ると疲れの取れ方が違う。
まずは目覚めのシャワーを浴びる。  
体だけじゃなく、頭の中がすっきりとする。
チャーリーの朝シャワーを待ったら、Breakfastだ。

いつものYogi’s に書いてあるおすすめのレストランに出かける。
場所もこの通り沿いなので迷いようが無い。
ところがその店は定休日。
ショックだが、他の店を探してみよう。

アムトラックの駅前の通りに行くと、ちょっと洒落たカフェがある。
隣には雑貨屋があり、中で繋がっているようだ。
選ぶほどの店も無いのでそこに入る事にする。
店内は地元客で繁盛している。
おそらく、あの店が休みな事も影響しているだろう。

店内に張ってあるチラシに太鼓のイベントのものがある。
こんなところで日本人のがんばりを見られて嬉しい。
メニューはこれといって普通だが、ワッフルが売りらしい。
たまにはパンケーキでなくワッフルも良いと思い悩む。
フルーツソースがいくつかあり美味しそうだが、ちょっと高め。
ブレックファストメニューもあるのでエッグとベーコンの“いつもの”にする。
チャーリーは大好物(いくつもあるが)のワッフルにフルーツソースたっぷり。
さらに、カリカリベーコンをリクエストして作ってもらう。
その上には“いつもの”シロップがけは店員もあきれている。

にぎやかな店内を後にしてモーテルに戻り出発の準備をする。
もう一度バスの時刻を確認し、モーテルの主人にバスについて聞いてみる。
すると、ここのモーテルの前にも止まるらしい。
この田舎町で、この長距離を走るバスにしては本数が多い。
日本のように電車が無いことを考えれば普通なのかもしれない。

午前9時51分のバスに乗り込む。
既にバスには5、6人の乗客がいる。
車社会のアメリカでは、大都市を除き、バスを使うのは主に貧困層だ。
そのほとんどはマイノリティが多い。
僕達スルーハイカーのほうがよりマイノリティだろう。

長距離のバスだが日本の高速バスとは違い、普通の路線バスだ。
ハイウェイが無料なので、それでも十分に成り立つのだろう。
ハイウェイ使い小さい町を繋ぎながらバスは進んで行く。
バスの揺れは日本でもアメリカでも心地よく眠りを誘う。

今日の目的地のMt. Shasta という街も通りすぎ先へ進む。
集落とも言えるような小さい町の度にハイウェイを降りバスは止まる。
一杯になるという事は無かったが、需要のある大切な路線なのだろう。
周りの風景は荒涼とし、広くどこまでも広がっている。
PCTが進む山脈沿いの東側にはこういう大地が広がっているのだ。
しかし、今までと明らかに違うのは独立峰が多い事だ。
一つ一つが火山のようで、円錐体が見られる。
そのうちの大きな一つが、あのMt. Shasta なのだろう。
これだけの広い大地ならどこからでも良く見える。
原住民に“神の山”として信仰される理由としては十分に思う。
きっと富士山も、ほんの100年前には、このように見えていたのだろうか。

Dunsmuir を出てから約二時間近くが経った頃、やっとYreka に到着。
バス停は町の中心のショッピングモールに止まる。
バスの運転手にレンタルカーの話をすると場所を教えてくれる。
僕達はもう一つ先の工場街の様な所でバスを降りる。
ありがとう、の言葉を残しバスを降りる。

車の修理工場や、大きなガレージが建ち並ぶ場所で他には何も無い。
運転手の言葉を思い出しながら歩いて行く。
バス停から数分の所にHarts の看板を見つける。
中に入ると、カーパーツも並んでいる。
ここはカーパーツやカスタムをするお店なのだろう。
それと同時にレンタルカーの営業もしているようだ。

チャーリーは予約しているので直ぐに済むかと思ったが先客がいるためしばし待つ。
日本でもアメリカでも田舎町の店は殺風景なのはなぜなのだろう。
それはそれで好きなのだが、観光客向けでは無いということか。
受付を始めるとほどなくして車に案内される。
チャーリーは店員とハイキングの事についても話しているようだ。
とても興味を持って僕らの事を見ている。

車は日本車。
レンタルカーでも壊れずに使える車という事だ。
乗り込むと、PCTで3度目の、チャーリーと車の旅が始まる。

マイカーなら寄り道が無いので1時間もしないでMt. Shasta に到着する。
お腹が空いてしかたないのだが、チャーリーは平気そうな顔だ。
マウントシャスタで滞在するモーテルはどこにするか話をする。
Yogi’s でも紹介しているものもあるし、安いモーテルを探す。
“チャーリー、この通り沿いに結構あるね。”
そう言うと、チャーリーはにやりと笑って
“そんな安い所には泊まらないよ”と言う。
チャーリーはもとからリッチな雰囲気を出していたが、ここに来て全開か。
まだカジノで儲けた分もあるということなのだろう。

街の中心部には小さな店が建ち並びにぎやかな雰囲気だ。
大型のグロセリーやファーマシィも中心部から近く十分歩いて行ける。
中心の十字路を曲がり、ショッピングモールの隣にBest Western がある。
チャーリーはそこに行くつもりらしい。
Best Western はどこでも必ずランドリーもあり、朝食付きだ。
そう考えると安いモーテルより良いのかも知れない。
しかし、ご存知の方も多いと思うが、結構高い。
安いモーテルは、地域差は大きいが、$30から$70といったところ。
高級モーテルは、$100から$200だろうか。

モーテルに行く前にポストオフィスに寄りバウンスボックスをピックアップ。
チャーリーも荷物を受け取っている所を見ると、ここに寄る用もあったのだろう。
ポストオフィスの近くには座り込む若者の姿がある。
まるでスルーハイカーそのものだが、ヒッピーなのかホームレスなのかは判別できない。

昨日もモーテルに泊まっているし、あまりお金をかけたく無いアピールをする。
チャーリーは“心配するなよ”と言って笑う。
Best Westernのフロントに料金を確認しに行く。
PCTからは少し離れた街だが、Yogi’s でも紹介されている街だ。
ダメもとで“PCT Rateはあるかい?”と聞くと、ある、との返答が。
ラッキーだ!
それでも決して安いとは言えないが、チャーリーの意見を汲もう。
PCもあるし、サービスを考えれば、良さはある。

部屋はきれいで広々としている。
二階建ての建物の一階で庭に面していて気持ちが良い。
シャワーを浴びて着替えを済ませ街へと出かけよう。
まずは腹ごしらえだ。

時間は昼を過ぎて、もうおやつの時間になっている。
さっき車で通った時に見た、熊のレストランに行く事にする。
店の名前はBlack Bear Diner 。
熊は駆除の対象にもなれば、看板にもなる。
それだけ人にとって身近で、また大きい存在なのだろう。

チャーリーも初めて見る店だと言うが、どうやらチェーン店らしい。
カリフォルニアだけでなく、オレゴンやワシントン州にもあるらしい。
メニューはHome Made を特徴としたものになっている。
おおむね、僕らの大好物だと言う事だ。
新聞の様になったメニューを見ながら、結局“いつもの”になっている。
食後にはデザートが欠かせない。
“Fresh Strawberry Milk Shake”なんて、頼まずにはいられない!
もう胃袋はパンパンだ。

食事の後は街の中を軽く流す。
もう一度全体を把握しておきたいとチャーリーの提案だ。
そのついでに夕食の場所を探すことになる。
昼食を食べたばかりだというのに。
街の中心の十字路を南西に進むとモーテルが建ち並ぶ場所になる。
人気は少なくなるが街は綺麗だし、治安は良さそうだ。
途中にアメリカらしいメキシコ中華の店がある。
チャーリーが興味を持ってメニューを見に行く。
店内も不思議な雰囲気に包まれている。
場末のスナックのような色合いだ。
外にはヒッピーのような人達が多く見られる。
顔の感じから、メキシコ人でもなさそうだ。

後に知った事だが、もともとネイティブが多く住む街だったらしい。
そして、神聖なMt. Shasta がある事からヒッピーも多く集まった歴史がある。
そういった事がこの街の雰囲気や人を作り出している。
いかにも西海岸カリフォルニアの街ということか。

さらに道路を西に行くがすっかり静かな雰囲気になっていく。
そろそろ戻ろうとした時にまた中華レストランが見える。
この店は全体に綺麗で店員も中国系の人がやっているようだ。
またメニューを見せてもらうと、なにやら良い雰囲気だ。
特に派手という店内でも地味でも無く、なかなか良い料理を出しそうだ。
夕食時にまた来るよ、と挨拶をして店をでる。

街の中心部に戻り、歩いて散策する事にする。
小さいエリアだが通りにはたくさんの店がありにぎやかだ。
この街には二件のアウトドアストアがあるのでどちらも行ってみよう。
Base Camp という店はYogi で親切な店と褒めている。
しかし、実際に行った店は小さくほとんどものが無い。
というよりもウィンター向けの店のようだ。
スキーやスノーボードのチューンナップを受けたりもしている。
これといった収穫も無く店を出る。
裏通りにも小さなグロセリーがあり、人が多い。
近くには大きなグロセリーRays があるのに、きっと何かの需要があるのだ。

ぐるりと回り込むようにメインストリートに戻る。
Hardware store や本屋や土産屋があり外から見ているだけでも楽しい。
Book & Café の店に入り、ポストカードを探す。
久しぶりに日本に手紙でも書こう。
とても清潔感のある良い店だ。地元の人達の楽しそうな会話が心地よい。

中心の交差点に戻って来る。
角にはもう一件のアウトドアストアのFifth Season がある。
ここはYogi’s で酷評されている店だ。
店員がものを知らず、対応が良くないと書いてある。
どんな店なのだろうか、興味津々だ。
ところが、店内はいたって普通のお店。
物量も豊富に揃っている。
靴だってREIよりもましかと思えるほどだ。
店員は女性の若い人が多いのは不思議だが、皆親切だ。
僕は浄水剤を、チャーリーは新しいソックスを買う。
レジでの対応も気持ちよい。
Yogi’s もたまには外れる事もあるようだ。

一通り見終わってモーテルに戻り、チャーリーはパソコンに向かう。
ジャーナルのアップが溜まっているのだと言う。
僕はその間に二人分の洗濯をしよう。
チャーリーにはそれくらい世話になっている。
フロントでコインを両替し、洗剤を買う。
いつものようにコインをセットして“ガチャン”。
待つ間はフロント脇のパソコンで暇つぶしでもしよう。

もう手慣れたものだ。
何度か部屋とランドリーを行き来して片付ける。
Zero とはいえハイカーの休日は決して暇ではないのだ。

昨日のモーテルでダニにやられたのか体がかゆい。
あちこちに赤い発疹が出て来る。
まさかこんなところでやられるなんて、蚊より質が悪い。

気づけば時間は夕方になっている。
昼飯の時間が遅かったので大してお腹は空いてない。
チャーリーは夕食の後に映画を見たいと言う。
僕も食料の調達等をしなければならない。
変に遅くなって食いっぱぐれるのも嫌なので行くことにする。

モーテルから車で5分以上かかるのでそこそこの距離だ。
昼間に目星をつけておいた中華レストランへと到着。
店の雰囲気はもちろんスタッフの対応も良い。
味は広東風だろうか。
チャーリーが、食べられる、というので多めに注文。
しかし、予想通り早々にお腹が膨れてくる。
どうせ直ぐにお腹も空いてしまうだろうから、胃袋の限界まで詰め込む。
口には出さないがチャーリーとの最後の夕食になるかも知れない。
なんと無く会話が弾まないまま夕食が終わる。

げっぷが止まらない状態でモーテルに戻ってくる。
映画館もグロセリーもモーテルの直ぐ隣だから楽で助かる。
“じゃあまた後で”と挨拶を交わして僕は買い出しに行く。
買い出しはいつも楽しい。
どうせ買うものは決まっているのだが、何か発見が無いかとわくわくする。
アメリカではフルーツも一つで買えるので、味見がしたくなってしまう。
特にカリフォルニアのオレンジは本当に美味しい。
日本に輸出するのとは完熟度が違うのだろう。
それからネクタリンも欠かせない。
日本では滅多にお目にかかれない、大好物だ。

このアジア人はいったい何者だ、という目で見られながらレジを通る。
パンパンに詰まった袋を三つ下げてモーテルまで歩いて戻る。
夜風が、心地よい、と心から思う。

部屋に戻り荷物の整理をするが余計な事に気が散って進まない。
次のセクションはやや長く、6日くらいの行程になりそうだ。
増やしたくない食料と食欲との折り合いをどこで着けるのかが本当に難しい。
そうこうしているうちに時間だけが過ぎてしまう。
チャーリーも映画から帰ってきて、ご満悦のようだ。

今日も一日が終わる。
とても充実した内容の濃い一日だ。
チャーリーとの最後の夜になるのだろう。
でも、いつも通り。
テレビを見て、二人で笑い合い、夜が更けて行く。
準備は万端だ。

明日はどんな一日になるのだろう。
一人の旅が始まる。


-"eating" Turtle
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by hikersdepot | 2012-02-29 17:49 | PCT 2010 by Turtle
Old Station,CA to Dunsmuir,CA and Mt.Shasta, CA/ Day98 – 103/ 1382.8mi – 1510.0mi(127.2mi)/part4
8/2(Mon) Hiking Day80 / 34.2mi /6:30am-8:00pm (13:30) /NB 1510.0mi
“Our Destination”

やはり洗った靴下は気持ちが良い。
今日は良いスタートを切る。
快調に下っていくと、1時間くらいでAsh Camp に到着。
Trail Head になっていて車がここまで来られるようだ。
トイレも設置されているし、その奥には整地されたキャンプサイトがある。
その下には強い流れを持った川が流れている。

朝がゆっくりなキャンパー達はやっと起き出したくらいだ。
チャーリーは先に進み、僕はせっかくなのでトイレで用を足す。
外でするほうが自由で良いが、残さなくて良いものは残したく無い。
まあ、これがちゃんと処理されるのかはわからないが。
閉鎖された空間でできるのは精神的に落ち着くものだ。
蚊の脅威に怯える必要も無い。

外に出ると、キャンパーのテントからは湯気が上がり良い匂いがする。
淡い期待が頭をよぎるが、そんな都合の良い話なんてそうそう無い。
さあ、チャーリーを追いかけて歩かなきゃ。
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川を渡ったあとに、その川の下流に向かい沿うように歩いて行く。
林道とはいえ車道も近いせいか、とても道は整備されていて歩きやすい。
水平に伸びるトレイルを快適に歩く。
少しカーブしたトレイルに座るチャーリーが見える。
朝出発してから2時間位経ち休憩の時間だ。
チャーリーはきっと先に行ってしまうのだから、急ぐ必要もない。
ゆっくりと朝食のサンドイッチを食べてから一服する。
予想通り先に行くチャーリーの後を、のそのそと付いて行く。

向こうから人の声が聞こえる。
立って話をしているチャーリーが見える。
そして歩いて行くハイカーの姿がちらほら。
昨日僕達より先に進んで行ったみんなだ。
みんなの今日のスタートが遅かったのか、追いついたようだ。
クロエーションは靴下を洗濯している。
“水場がしばらくないだろう、その前にと思ってさ”という事らしい。
服はほとんど洗濯しないし、本当のTrash のように汚い彼でも足下は大事らしい。

ゆっくりとトレイルは登り始める。
山肌を縫うように上がって行くのでなかなか標高は上がらないが歩きやすい。
尾根を一つ越える度に景色が開けていく。
目線の端には、より近づいたMt. Shasta が横たわる。
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ずっと山が連なって伸びている。
その山の側面を歩くので、当然陽当たりもそれほど良く無い。
景色も開けていないし、花も無いのでは歩くしか無い。
少しでも先に進む為に淡々と歩みを進めて行く。

今日も体の動きが良い。
休息の大事さをまた改めて感じる。
長い距離を、長い月日を歩く為には体力を回復させる休息を取らなければ。
そこで蓄えたもの出しながら歩く。

それにもう一つ大切なのは食事だ。
もう僕の体に蓄えられる燃料は無く、投入し続けるしかない。
カロリーももちろんだがタンパク質が欠かせない。
チャーリーを真似して始めたサラミとビーフジャーキーを貪る。
次の補給まで残りも少なく、途中買うことも出来た。
そのため、食料は十分にあるのだ。
昨日の夜はたらふく食べる事ができた。
今日の動きの良さの一因でもあるだろう。
しかし、それでも食べ続けられれば、動き続けられる。

休憩を挟み、チャーリーを追うように歩き続ける。
チャーリーは昨日のへたれ具合が嘘のように元気いっぱいだ。
途中休憩するHuiを追い抜いて行く。
道が単調でいまいち自分の位置を理解できないまま進む。
やっとトレイルが下りた先に小さな橋が架かり、強い水の流れがある。
ここがSquaw Valley Creek だろう。
細い谷だが、キャンプサイトもあり陽が差し込んで美しい。
川の下に下りる道がありそこで水を汲めるようだ。
その川沿いの木々の間にチャーリーは座っている。

陽射しが暑く、日陰が欲しい。
チャーリーのそばに座ろうと思うが良い場所がない。
クモの巣は多いし、斜めだが、横になってしまえば良いか。
水は上から見たよりもゴミが多く、少し濁っている。
食事を取っていると、Hui が追いついて来る。
彼も僕らの近くに来る。

クロエーション達4人も到着。
彼らは僕らとは離れた場所に陣取る。
“ドボン!”突然の大きい音に驚く。
クロエーションが飛び込んだのだ!
そんなに深い所があったんだ。
ノットアチャンスやテンジン達も次々に飛び込んで行く。
お風呂代わりに最適だ。
ぼくも飛び込みたかったが遠慮しておこう。
きっとチャーリーはもうすぐ立ち上がってしまう。

案の定、しばらくして歩く準備を始めるチャーリー。
“さて、行くか”と心でつぶやく。
トレイルはさっきの下りを取り戻すように急に登る。
今日の時間配分は悪く無い。
次の水場までが長く10mi以上、約4時間といったところか。
そこで水を汲んで、次のジープロード付近でドライキャンプを狙う。
まだ先は長いがこのまま行けば十分余裕を持って着ける。

チャーリーの脚は相変わらず早い。
あのペースだから傷めるのではないかと言ってやりたい。
こっちはこっちのペースで歩いて行こう。

一つ林道を跨いで更に進むと徐々に景色が開けてくる。
今日もとても気持が良い天気で、ハイキング日和だ。
のんびり歩く僕をHui が追い抜いて行く。
稜線の近くに出ると、向かう方向の稜線がきれいに見渡せる。
目で見てしまうと更に長そうに感じるのはなぜだろう。

とにかく飽きないように歌を歌ったり、無になり歩いたり。
ただ何も無いからといって退屈でも無く、虚無でも無い。
心の中は満たされていて、とても気持ちが良いのだ。

地図ではジープロードとなっている道を過ぎると途端に景色は広がりを見せる。
いよいよ間近に迫ったMt. Shasta が見える。
昨日よりも山の細かい状態がわかる。
まるで富士の宝永山の様な側火山まである。
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カーブを曲がるとHuiが座っている。
携帯をいじっているのでどうやら恋人と連絡を取っているようだ。
ここは電波の状態が良いのだろう。
Interstate Highway が近いから通信設備もしっかりしているからだろう。
立ち止まり、軽くスナックを食べる。
チャーリーはどこまで行ってしまったのかな。
せっかくだから一緒に歩きたかったのに。
Hui はまだ携帯と相対しているので先に歩き出す。
きっと彼なら直ぐに追いついて来るだろう。

トレイルの進む先のCastle Crag が見えている。
景色はだいぶ近づいて来ているようなのに遠い。
トレイルが大きく迂回して進んでいる為だ。
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北に向かうはずがずっと西に進み、今度は南へ向かい始める。
2miほどでやっと北を向いて歩けるようになるが、まだまだだ。
救いなのは緩やかな下りということ。
筋肉の負担が大きくなるほどの斜度も無く、とても歩きやすい。
しかし、いっそのこと急斜面でも真っすぐなら早いのにと思う。

細く急なGully から水が勢いよく落ちている。
ここが水補給を予定していた、Fall Creekだろう。
ここから下はCreekなのかも知れないが、ここはどうみてもGully だ。
予定通り水を汲んではみたものの、チャーリーの動きは全く不明だ。
いったいどうゆうことなんだ。
ずいぶんと時間が経つが全く彼の姿を見かけずにここまで来ている。
もしかしたら、トイレに行っている彼を追い抜いてしまったのかも知れない。
いやそれとも本当にただの暴走だろうか。

状況は読めないがここで待っていても始まらない。
少しでも先に進むのが良さそうだ。
この先にジープロードとぶつかる場所がある。
一応そこが今日の終了点になるはずだ。

ここまで同様これといったものが無く退屈なトレイルだ。
下にはトレイルに並走するように通るジープロードが見える。
トレイル沿いには平坦でキャンプできそうな場所はない。
けれど、ジープロードのほうにはできそうな所も見られる。
もうすぐトレイルとジープロードが出合う。
チャーリーは待っているだろうか。
時間は午後6時を過ぎている。

ジープロード出合いに着くと、道路上も広くキャンプできそうだ。
しかし、先日と違い、気持ち良い場所では無い。
“チャーリー”と声をかけてみる。
どこかにいるはずだと思うからだ。
ここが今日の終了点と一緒に決めたはずだからだ。
僕はそれほど特別な事を願ったつもりは無い。
だが、うすうす予感はしていたが、チャーリーはいない。
先に行ってしまったのだ。
それを証明するものが地面に残されている。
“← Coke”
意味が分からない。いや、意味はわかる。
でも理解し難い。いや、理解したく無いのか。
そんな無理してまでコーラに依存しているわけではない。
ただ、なんだかこんな稚拙な事に乗る自分がいやなのだ。
でも乗るしか無いじゃないか。
こんなことでチャーリーと離れるのは嫌だ。
ったく、昨日のあの泣き言はなんだったんだよ。
禁断の、禁忌の、一歩を踏み出す。
そう、残り約5mi を歩き、30mi を越え、街に行くということだ。

禁忌を破った僕にできる事は、ただひたすら歩き続けるだけだ。
余計な事を考えるだけ疲れる。
体は音を立て異常を知らせる、心はブレーキをかけようとする。
それを自ら操り、隠し、伏せて進むのだ。

所々、チャーリーからのサインが残る。
“Bed”“Pizza”“Ice Cream”こんなことでごまかされるか!
適度な斜度の下り道は脚を速める。
しかし、負担は大きく辛い。
その負担を少なくする為にはブレーキを少なくして、走るように歩く。
集中力を維持し、素早く判断して歩き続ける。
景色は流れる速度を増して行く。
歩け歩け、進め進め。

途中空腹に勝てず、立ち止まり残り物を食べ尽くす。
今更残しても意味が無い。
開いているものは全て食べてしまおう。
腹は十分にふくれ、あとは歩くだけだ。

エネルギーを供給された体は動きを活発化させる。
トレイルは歩きを加速させる斜度を再び作る。
もう面倒なので走り始める。
滑るようにいくつものカーブを避けて行く。

突然現れた看板はトレイルの終わりが近いのを告げているようだ。
急に人里の雰囲気が周りにしてくる。
Gate を過ぎると直ぐに道路に出る。
長かった、本当に長い下りに感じた。
ここにもチャーリーはいない。

道路に沿って歩いて行く。
久しぶりにあるくアスファルトは硬くて歩きにくい。
小さな橋を渡ると踏切がある。
R×R と書いてあるのは、Railroad(鉄道)の略らしい。
線路を渡り道に沿って下って行くと、車の音と大きい高架が現れる。
あれが、I-5 だろう。
道を下りきったところのカーブミラーに寄り掛かりチャーリーが座っている。
勝手な行動に腹が立ったので何か言ってやろうと思っていたけれど、もうどうでも良い。
しかし一言“You are So Crazy!”と言ってやる。
それでもチャーリーは笑顔で、楽しかっただろ、と無邪気だ。
もうお手上げだ。
バックパックを下ろして座り込む。
“サインは見たかい”
“ああ、見たよ”
疲れも大きく、しかしゆっくりもしていられないので立ち上がる。
時間はもう午後8時、結局34mi を歩くロングデイとなる。
陽ももうすぐ暮れる。

このI-5 に着いた所で何かある訳では無い。
南西にしばらく歩けば、Castella に着く。
Small Town だと言われているが街にはほど遠いようだ。
小さなストアとキャンプ場のシャワーとポストオフィスがあるらしい。
ハイカーにとって必要充分で贅沢な状況だがここでは久しぶりのZero Day を取るつもりだ。
Zero Day を満喫する為にはなんとも乏しいのだ。

ここから北東に行くと、Dunsmuir という街がある。
そこまでは5.5mi、約9キロの道のりがある
歩くのがハイカーの仕事だ。
しかし、道路を歩くのは本当に辛い。
ましてやこの時間だ、あと二時間も歩きたく無い。
だからこそヒッチハイクをするのだが、上手くできない場所もある。

ここはInterstate Highway、日本で言う高速道路だ。
その周辺でヒッチハイクするには入り口前しかないだろう。
ところが田舎の道路の入り口じゃ交通量もたかが知れている。
何台かにアピールするも芳しい反応は無い。
二人とも面倒な気持ちになっている。
Echo Lake で二時間近く待ったのもトラウマになっているのだ。
だったら危険を承知で、高速道路上でヒッチハイクをすることに。
僕もチャーリーも迷いが無く、そうする事に決めて坂を上る。

Interstate Highway 上は普通のHighway よりも面白いほどのスピードで車が走っている。
ちょっとだけここに上がった事を後悔する。
しかし、ぐずぐずしていても進めない。
Hiker to Town のバンダナを掲げる。

当然ながら、ものすごいスピードなので運転している方も良く見えないのだろう。
通り過ぎる直前に運転手と目が合う事はあっても止まる事は無かった。
何台も、何台も通り過ぎて行く。
インターチェンジから上がって来た車も止まらない。
下でヒッチハイクしていたら止まったのだろうかと考える。
あの時のトラウマはまだ癒えていないのだ。

また下から車が上がって来る。
どうせ止まらないだろうと思っていたら、その車はスピードを緩める。
近くに来て初めて気づいたのは、それがHighway Patrolだということだ。
“おい、おい。やばいな。”
車は僕らを通り過ぎたあと路肩に止まる。
チャーリーと目を合わせる。
車から降りて来たのは、30代前半だろうか、一人の警官だ。
顔はスペイン系で、優しそうな目をしている。
でも、何を言われるのかわからない。
“ここで何をしている”
そう問いかけられてチャーリーが話をしている。
僕達がPCTハイカーだと言う事。
そして街に行きたい事。
その為にヒッチハイクしている事。
警官は怒っているようには見えないが、思案しているようだ。
なにか無線でやり取りをした後に“街まで送って行けると思うよ”と一言。
意外な展開になる。
先程の無線は、本部へ許可を取っているらしいのだ。
チャーリーと再び目を合わせて、心の中で親指を立てる。
無線でまた話をした警官は僕らにIDの提出を求める。
身元を確認した上で“車に乗りなよ”と気軽に声をかけてくる。
どうやら本当にパトロールカーをヒッチハイクしてしまったようだ。
急いで荷物を担いで車に駆け寄る。
前席と後部席はフェンスで仕切られているが、凶器は無いかと尋ねられる。
今までずっと旅を共にしているビクトリノックスを渡し、後ろに乗り込む。
僕らはとても臭い。本当に臭い。
そんな僕達を乗せてくれて本当にありがとう。
感謝の言葉しか無い。

歩いたら遠いはずの街“Dunsmuir”も車だと10分もかからない。
車はまっすぐモーテルに向かって行く。
他にもあるのかも知れないが、街の中心部に近いようだ。
それに、この街を良く知っている人が案内してくれたのだから間違いないだろう。
モーテルの前に止まるパトロールカー。
その中から出て来るハイカー二人。
一体どんな光景なのだろうか。
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“忘れ物はないかな”
本当に感謝を言葉でしか伝えられないし、伝えきれない。
“Thank you!”
車はあっという間に見えなくなる。

モーテルの入り口を入りカウンターで受付をする、
出て来たのはインド系の人だ。
チャーリーはジャグジーが無いかと尋ねている。
残念ながら無かったようだが、料金はそれほど高く無い。
他に行くつもりも無いので、ここに部屋を取る。

部屋に入るとチャーリーがと言う。
“彼はパトロールカーが来てびっくりしたらしいよ”
そうだろう、乗せてもらった僕たちでさえ驚いているのだ。
部屋は普通の二人用の部屋だが、とても清潔で気持ち良さそうだ。
しかし、部屋を楽しむよりも先に腹を満たしに行こう。
もうぺこぺこだ。
せめて顔くらいは、と思って洗う、すると茶色い水が流れ出す。

ついついのんびりしたくなってしまうが、急いで食事に向かう。
時間はもうすぐ午後9時になる。
日本の飲食店ならまだ閉める時間では無いが、アメリカの田舎町は平気で閉まる。
まだ開いているかどきどきしながら急ぎ足で歩く。
もしも開いていなかったら、なんの為に無理して歩いたのかわからない。
この街はメインストリート一本の中にほとんどの店が入っている。
それ以外は特にこれといったお店もなさそうな小さな街だ。
しかし、ここもゴールドラッシュ時代に栄えた街のようだ。
他の店のほとんどが閉まっている中、目的のPizza Restaurant は開いている。

もちろんお腹は減っている。
しかし、残った食料をありったけ食べて歩いたせいか、いつも程ではない。
ピザの大きさで悩んでチャーリーに話すが“食べられるさ”と二人でLarge を一枚注文。
トッピングはチャーリーの大好きなペペロニにトマトだけのシンプルなピザだ。
飲み物はもちろん、ダイエットコークとレギュラーコーク!
ピザの出来上がりを待つ間にカップの中はあっという間に空になる。
もちろんおかわりはFree だ。

大きいピザの前にPCTハイカー二人は敗退する。
チャーリーは疲れすぎて、僕はやはり食べ過ぎのようだ。
ハイカーは本当に良く食べる。たくさん食べる。
しかし、胃が小さくなるのかいっぺんには食べられないのだ。
今どんなに満腹でも一時間もすればまた腹が空いて来るだろう。

店もちょうど終わる時間のようだ。
店内を掃除し始めている。
残ったピザを持ち帰りにして店を出よう。
最後に追加したコーラのカップを持って。
通りはすっかり暗くなり静かだ。
帰りに鉄道の駅をチェックして帰る事にする。
チャーリーは明後日の朝、ここから旅立って行くのだ。
駅前の通りはメインストリートよりも更に静かだ。

モーテルまでの帰り道にグロセリーに寄って、スナックとアイスクリームを買う。
さっきお腹一杯になっていたはずじゃないのか、俺の腹!
二人上機嫌で、気持ちの良い夜の空気を吸いながらモーテルへ向かう。
途中にバスストップがあり、時刻表が書いてある。
明日はこのバスに乗って、Mt. Shasta へ向かう予定だ。
時刻表を見ると、ふと気づいた事がある。
“そういえば、チャーリーって本当はどこまで行きたかったんだっけ”
というのは、彼は当初車をレンタルするはずだった。
しかし、どんなに探しても近くの街に見つからず諦めていたのだ。
Yreka で借りられるのは知っていたが、そこに行く手段が無かった。
“Yreka までならバスで行けるみたいだからレンタルできるんじゃない?”
“Sounds good!”
アムトラック鉄道は高いし遅いし、チャーリーとしては仕方なくという感じだった。
“ありがとう!”とチャーリーは上機嫌。

部屋に戻りシャワーを浴びて綺麗になろう。
チャーリーは早速鉄道の予約を解除する為に準備している。
ところが、ハプニング発生。
“携帯が無い!”チャーリーが叫び出す。
なんてことだろう。
きっとパトカーの中に落としたのだろう。

チャーリーの落とし癖は今に始まった事じゃない。
僕も落とし物が多い方なのだが、チャーリーは上をいっている。
サングラスは既に二回無くして今は三個目だ。
クレジットカードも一度無くしている。

電話を掛けてみるとコールはするのでどこかで生きているのだろう。
パトカーに乗る前まではあったのは覚えている。
僕の携帯で警察署に電話するように言うが遠慮している。
以前に通話料が高いのを話していたからだろう。
海外通話ができるテレフォンカードがあるので、それで電話することに。
事情を説明して、あとは待つだけだ。

僕達は本当にハプニングに恵まれている。
だからこそ人生は楽しいのだと、やっと思えるようになった自分がいる。
シャワーを浴びて汚れを落とし、最低限のものを洗い明日へ備える。
そのままでは臭すぎる。
バスタブに湯を溜めてゆっくりと体を癒す。
疲れが少しずつ流れ出ているような感覚がする。

バスルームを出るとチャーリーが興奮している。
“携帯が戻ってきたよ!”
僕がシャワーを浴びている間にあの警官が届けてくれたようだ。
なんて親切な人なのだろう。
本当に感謝、感謝だ。

なんとか今日も無事に一日を終える事ができるようだ。
僕はベッドに横になり、テレビを見ながらコーラを飲みくつろぐ。
ああ、なんて幸せな瞬間なのだろう。

Hui はどうしているだろう。
なんとなく申し訳ない気がする。
また会う事ができたら良いな。

明日はMt. Shasta という街に行き、補給をしながらZero をとる。
どんな一日になるのだろうか。
二人で“Bed 最高!”と言いながら夜が更けていく。


-"soda pop"Turtle
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by hikersdepot | 2012-02-15 03:17 | PCT 2010 by Turtle