「ほっ」と。キャンペーン
<   2011年 08月 ( 4 )   > この月の画像一覧
Tuolumne Meadows, CA to South Lake Tahoe, CA / Day76 – 82 / PART 3
7/9(fri) Hiking Day 59 / 21mi /6:15am-4:45pm (10:30)
“Break, Brake”

朝から快適に飛ばす。
やや下り気味のトレイルを谷に沿って進む。
やがてトレイルは一気に急斜面を登って標高を上げる。
せっかく降りた谷のリッジに向かって上がって行くのだ。
e0128835_12493636.jpg


途中でボストン&カーヴィに会う。
彼女達は本当に淡々と早い。敵わない。
休憩する彼女達に挨拶をして先に進む。
シエラネバダとは歩く景色が大きく変わる。
開けたところは少なく、細かい地形となる。
木々が多く、標高は上がりすぎないように道は進む。
e0128835_12494886.jpg


トレイルを二つ横切り、三つ横切る。
体がとても疲れている。
思うように歩けない。
みんなぐいぐい歩いて行くのに、僕は付いて行くこともできない。

みんな先を急いでいる。
Lake Tahoe までは長いので、少しでも前に行こうとしているのだ。
そんなに急ぐ必要も無いと思う。
もっと自分の速度で進みたい。
付いて行かなければ良いだけなのだ。
でも、上手く行かないのが人生なのだろう。

今日も花がたくさん咲いていてとても綺麗だ。
心が癒されていく。
e0128835_1250259.jpg


一歩が重い。
追いつけない自分が悔しいのか。
歩くのが辛いのか。自然と涙が流れる。何を泣いているのだろう。

e0128835_12502074.jpg


ゆっくりの速度でもなんとか追いついていく。
シャツの肩部分を引っ掛けたら簡単に破けてしまう。
いままで浴びた紫外線と摩擦、様々な原因があるのだと思う。
腰部分も既にぼろぼろだ。
手の付けようも無い。

日本と似たような花がたくさん咲いている。
e0128835_12503289.jpg


今日は暑い。少しでも涼しい木陰で休む。
チャーリーは飛ばし過ぎて、再び膝が悪化してしまう。
自分の無理の無いペースで歩くことが、ロングトレイルには必要なのか。

e0128835_12504377.jpg


標高は全体に9000feetを下回り、暑さが厳しい。
ガレたクリークを渡り、谷を上がり、下る。
湿地帯のような場所で大きなトレイルの分岐”Wolf Creek Pass”を通過する。
e0128835_12505489.jpg


よくよく見れば間違ってはいないのだが、ここからはひたすら登りとなる。
こんなに登るなんて思ってもみなかったのだが、ジグザグ山肌を上がる。
結構長い。先が全く見えない。
地図のエレベーションよりも高いところまで行きそうだ。
Erick The Black にはだまされてばかりだ。

遅かった僕もいつの間にかみんなを追い抜き、先頭を歩いていた。
トラバース道はいつまでも続くような気さえ起こさせる。
不意に前が開ける。
まだあるが、先は見えた。

登りきったPassには名前も無く、しかし標高は9500feetを越えていた。
これほどにわかりやすい地形を地図のポイントにしないなんておかしな話だ。
南側は日当りも良く雪は無かったが、越えた向こう側を覗くと多くの雪が残る。
ローンネンジェルが上がって来た。
なかなか大変だったな、と疲れ気味だ。
彼は“今日はどこまで行くのか”と聞いてくる。
あと二日でLake Tahoe まで辿り着きたいと考えているようだ。
距離だけで言えば行けなく無いかもしれない。
少しでも早く着きたいと思うのも、正直な心。
なかなか悩みどころだ。

やっと上がって来たチャーリーはご立腹。
PCT Atlasにだまされた、と言う。
僕と同じことを思いながら歩いて来たらしい。
遅かったのは、トイレに行っていたのと、膝の痛みが原因らしい。

座り込み辛そうな顔をするチャーリー。
昨日までは“あと三日でLake Tahoe まで行くぞ!”とやる気だったのに。
今では、僕の方が先に進める気持ちになっている。
しかし、チャーリーはこれ以上今日は歩きたく無いと言い出す。
膝が本当に痛くて辛いようだ。

雪はたくさんでは無いが、トレイルを隠すように付いている。
下に見える池に向かって適当に降りて行く。
ふらふらしながら降りるとトレイルにぶつかる。
ローンネンジェルは一人沢を下降して行ってしまった。
やはり少しでも先に進みたいということなのだ。
完全にトレイルは外してしまったが、いつかはトレイルが沢を横切るので大丈夫だろう。

Noble Lake は小さい池で、場所も限られ、快適なキャンプサイトでは無かった。
しかし、チャーリーは終了。
時間はまだ5時前で、正直もう少し歩きたかった。
チャーリーは“行きたかったら一人で行ってくれ”、なんて言う。
かといって“はい、そうですね。”と言える訳が無い。
今日は終了だ。
ボストン&カーヴィがあっさりと追い抜いて行く。

チャーリーは速いのだが、持続性が無い。
僕は速くは無いが、もう少し長く歩ける。
今日はなんだが不和を感じてしまう。
お互い疲れているのだろう。ゆっくりしよう。
具合の良いことに、キャンプサイトから見る景色は綺麗だった。

e0128835_1251369.jpg


風が強いが気持ちよい。
ものすごい量の羽虫が飛んでいたが、蚊ではないので良かった。
たまの時間なので洗濯をしたりして時間を過ごす。

下からはここの池に釣りをしに来たハイカー集団が来る。
騒がしく無ければ良いなと思ったが、彼らは対岸に行ったので良かった。
上からは降りてくるハイカーが一人。Ass Face だ!
ずいぶん久しぶりで、Kennedy Meadows 以来となる。
彼と会ったのもかなり最初の頃で、ずいぶんと長い付き合いとなるものだ。

彼も僕らの近くにシェルターを張る。
久しぶりで今までのいきさつをお互いに報告する。
チャーリーは、たまたまここは電波が届いたので、娘と楽しそうに話している。
僕も電話を借りて、スーパーサポーター“Mr. F”に電話をして、折れたポールの手配を頼んだ。

夕方の空気は心地よく、綺麗な景色だ。
今日で5泊目。
ずっとこんな生活だから、平気だけど、さすがに長い。
まだ2泊も残っている。いや、もう2泊しか無い、か?
昨日も同じこと考えていたな。

昨日から続く今日が明日に変わって行く。
その明日はきっと未来につながっている。


7/10(sat) Hiking Day 60 / 21mi /6:15am-5:15pm (11:00)
“Happy Magic”

体がだるい。気持ちが乗っていないのか。
いつものようにいつものペースで歩きはじめる。
本当に空腹で目が覚めるということを何度経験したことだろう。
先が長ければ余計に、食べ過ぎてあとで足りなくなるのが怖いのだ。

空腹は妄想につながる。
昨日もチャーリーと、街に降りたら何を食べようか、と話していた。
やっぱりハンバーガーとコーラかな。

腹は減っても、出るものは出る。
Eat Poop Sleep Hike (E.P.S.H.)
歩き始めて早速強い便意を感じる。
チャーリーに声をかけて、道を逸れる。
こうして何度外でしているのか。
けれども、人間はもともとこうしていたものだ。
なぜわざわざ閉鎖された空間でするようになったのだろう。
人とは不便な動物だ。
外の方が、どれほど開放感がありすばらしいか。

なんて、のんびりしていたら、チャーリーの姿は遠い彼方へ。
追いつこうとかっ飛ばすも姿は見えるはずも無い。
トレイルは森の中に入る。
ここを下りきれば、Ebbetts Pass に着く。
Sonora Pass よりも低いが、それでも8700feetくらいあるのだ。

カーブを曲がってすぐに道標が見え、下にはチャーリーのバックパックが。
トイレかな、そう思ったが近づいてみて道標にはCardboard Boxがかぶっている。
“Trail Magic→”
e0128835_12521760.jpg

チャーリーのジョークかと思ったが、こんなもの用意できる訳も無い。
バックパックは、こっちへ行ったよ、というサインだろう。
こんなわかりやすいTrail Magic 聞いたことも無いし、冗談にしか思えない。
ところが、そんな冗談みたいな本当のことがあったものだ。

思わず、”Wow! What’s happened!?” なんてわかりやすいことを言ってしまう。
ちょうど出た先がTH(トレイルヘッド)になっていて、そこにはトレイエンジェルが待っていた。
テーブルにはフルーツやお菓子。
日陰の雪の中にはビールやソーダ、ジュース類。
そして、大きなバーネキューグリルまで。
並べられたチェアに腰掛けてチャーリーは僕に手を振る。

e0128835_1251456.jpg


二組の夫婦は友人同士。
一人の人はPCTマークの付いたキャップをかぶっている。
彼らは毎年この季節になると、時々ここに来てトレイルマジックを行う。

“まあ、まずは座りなよ”と飲み物と一緒に椅子に座り込む。
“肉は大丈夫かい?今から焼くから。”
BBQグリルで焼きたてのチーズバーガーが振る舞われる。
まるで、夢みたいだ。昨日、チャーリーと話していた通りになった。
他にもポテトサラダ。チェリーにスイカと次々と食べ散らかす。
“まだ食べられるかい?”
次はホットドッグだ。

一通り食べ終わると、一服したくなるのは、人の業。
“まあ、Smoking Hiker なのね”と渋い顔。
“そうなんだよ。それが玉に傷だよ。”と笑いながらチャーリー。

昨日の夜、トレイルエンジェル達はここに来たようだ。
今日は土曜日、週末だからだ。
昨晩、ファジーモンキーや数名のハイカーがいたらしい。
ローンネンジェルや、ボストン&カービィは来ていないらしい。
チャーリーは“ラッキーだったな”と満面の笑顔。
エスフェイスも遅ればせながら合流する。
ここをみた瞬間“Wow!”と言って満面の笑みを浮かべた。

とても優しい人達でチャーリーのバックパックを取りに行ってくれる。
ハイカーは余計な動きはしなくて良いいうことなのだろう。
トレイルエンジェルの一人から質問攻めにあう。
“なぜ日本からわざわざ歩きに来るの?”
世界でも珍しいほどの長さのトレイルに憧れた。
なぜ”Turtle”なの?
亀のように、ゆっくりでも、歩みを進めたいからだ。
“あなたは英語が上手なのね。”
ありがとう。良い先生、チャーリー、のおかげかな。

彼らはハイカーを写真に撮って保管しているようだ。
ふと、“去年も日本人がいたわね”と言う。
Yas だ!
彼女がうなずく。
“彼は、英語はそれほどでもなかったけど、とてもBig Smile だったわ!”
Anderson’s でも同じことを言っていた気がする。
Yas の笑顔はみんなを幸せにするのだろう。
偶然なのか必然なのか。
今日、この時に通らなければ会うことも無い人達との出会いに、心から感謝する。

あとからもハイカーが合流してくる。
セクションハイカーもPCTハイカー同様の仲間だ。

e0128835_1252869.jpg


結局ホットドッグをもう半分食べた。
チーズバーガー、ホットドッグ一個半、スイカ、チェリー、ポテトサラダ、ホームメイドチョコチップクッキー、もちろんコーラが2缶。
さすがに腹一杯だ。もう食えない。

みんなにたくさん感謝の言葉を述べる。
いくら感謝してもしきれるものではない。
本当に、本当に、ありがとう。

道を戻り、Ebbetts Pass に出る。
実際のPass はもう少し上だ。
THにいた時からにぎやかな声が聞こえていたが、自転車のレースをしているらしい。
大会の関係者が上がってくる選手達に声をかけていた。
結構有名な大会らしいが、チャーリーもうといらしく良く分からない。

トレイルは森を進む。
Ebbetts Peak には星条旗がはためいている。
???
チャーリーにも理由が分からなければ、日本人の僕にはもっと分からない。
それにしても良く立てたものだ。
e0128835_12522525.jpg


腹がいっぱい過ぎて、動きがものすごい鈍い。
少し気持ち悪くなってくる。
チャーリーは完全にギブアップしてしまう。
珍しく僕に休もうというのだ。
こんな日があっても良いだろう。
楽しくのんびりと休憩をする。
e0128835_12523525.jpg


少し歩いては休憩を取り、のんびり、のんびり。
“タバコ吸わないのか”と勧めてくるほどだ。
今日の規定本数はとっくにオーバーだよ。
e0128835_12562051.jpg


道は本当に歩きやすく、久しぶりに楽しいのんびりハイキングを楽しんでいる。
こんな感じでずっと歩いて行けたら良いのに。

e0128835_12564774.jpg


谷に降りたトレイルは開けて草原をいく。
そこからは向こう側に越える為に、またPassを目指して上がって行く。

e0128835_12565813.jpg


e0128835_12571696.jpg


たくさんの綺麗な花が咲いている。
やっと本格的な花のシーズンが来たのだ。
山で咲く小さなSunflower。
e0128835_12573239.jpg


Passに着いて、また一休み。
携帯が通じる、とのサイン。日本でも同じようなことがあるな。
ただ、残念ながら(?)僕たちの携帯の電波は届いていなかった。

今日はどこまで行こうか。
どこで泊まろうか。
さすらい、の日々。

下りに入るとトラバース道になる。
景色は開けていて遠くまで見渡せて綺麗だ。
風が強いが、空気が澄んでいるからなのだろう。
e0128835_12574194.jpg


上がってくるハイカー達とすれ違う。
ものすごく満載のバックパックだ。
嫌いじゃないが。
e0128835_12575086.jpg


若者グループは分岐から別れて、Raymond Lake に釣りをしに行くと言う。
何泊かするみたいで楽しそうだ。
リーダー格の若者はPCTのことを知っていて、興味を持っていたようだ。
未来のPCTハイカーになるのかもしれないな。

e0128835_1258054.jpg


降りきったクリークでまた休み、また歩く。
綺麗なキャンプサイトがあったが、蚊が多くて困る。
年配のハイカー達は、僕らに変なものを見るような目を向けてくる。
それとも、アジア人が汚いから気になるのか?

むこうの方に特徴的なピークが見える。
あれが明日目指す“The Nipple”なのだろうか。
e0128835_12581116.jpg


蚊が多そうなトレイルを抜けていくつか湖の間を抜けて行く。
ここに来てチャーリーのペースはぐんと上がる。
先に行くよ、と消えて行った。
まったく子供みたいな人だ。

森の中を向かうのは近くにあるトレイルヘッドだ。
本当にたくさんの小さな池が並んでいる。
全体に湿った雰囲気を持っている場所だ。が、嫌いじゃない。
ところが、ブッシュが濃いためキャンプサイトが探しにくいのだ。

e0128835_12582324.jpg


人の気配が無いところばかりで泊まって来たから、たまにはこんなのも良いと思う。
THへの分岐のところにチャーリーが立って待っていた。
地図よりはトレイルから離れてなく、すぐにParking Lotが見える。
ちょうど綺麗な小さな沢があって水場に良さそうだ。

THの脇が段差になっていて、その上は平らで開けていた。
まだ時間は早い。
5時を回ったところだが、チャーリーの足の調子を考えて、今日も早めに終える。
からっとして蚊も少なく、悪く無い。
トイレもあるのでゆっくりできる。
今日は朝からたくさん食べたので、出るものもそれなりになる。

レンジャーが巡回に来ている。週末だからだろうか。
チャーリーがトイレに行った際に話したら、THから奥に入らないとキャンプは駄目らしい。
そういえば、そういうこともあったな。
けれども、PCTハイカーということで許してくれた。
感謝いたします。

結構な田舎道なのだが、車が良く通っている。
ボートを引いているところを見ると、近くに大きな湖でもあるのだろう。

少しずつ、また元のPCTに戻っている感じがする。
人と自然が近い。
良い風が吹いている。
明日も良い風が吹きますように。


-"easy"Turtle
[PR]
by hikersdepot | 2011-08-17 00:09 | PCT 2010 by Turtle
Tuolumne Meadows, CA to South Lake Tahoe, CA / Day76 – 82 / PART 2
7/8(thr) Hiking Day 58 / 25mi /6:15am-5:45pm (11:30)
“Over Central”

毎日のことで、体が慣れるかと思うが、やはり疲れは溜まる。
今日はどうも調子が出ない。
細かいアップダウンをしながら森の中を進んで行く。
美しいFootbridge も蚊が多すぎてゆっくり出来ない。
e0128835_12453460.jpg


チャーリーは調子が良いらしく、どんどん先に登って行く。
朝食もとらずにどんどん歩いて行ってしまった。
ローンネンジェルも足が速い。

e0128835_124542100.jpg


イライラしても仕方が無いのだが、着いて行けない自分にいらだつ。
一歩一歩自分のペースで先に進んで行く。
疲れだろうか。空腹か。
いらだちは抑えられず、腹の中に溜まったものを全て吐き出すように叫んだ。

チャーリー達も途中、休憩を挟んだが、僕を待つこと無く先に行ってしまう。
ゆっくりと休憩をしたあと自分のペースで進む。

斜面は急に開けてくる。
僕の持っている地図には、ジープロードに合流と書いてあるが、そんなもの無い。
強いて言えば、この開けた道がそうなのだろうか。
道標が立っていて、北を指している。
チャーリー達の姿は見えず、不思議に思う。
かなり遠くまで見渡せるが人影はない。
いくら何でもそんなには早いはずが無いのだが。

心配になり、チャーリーを呼ぶ。
返答は無い。
道を間違ったのだろうか。
いや、さっきあった道標をしっかり確認した。

カーブを曲がると道は半分以上雪の中に埋まっている。
まだ雪からは逃れられないのか。
標高は10000feetを越えていた。
e0128835_12454977.jpg


ローンネンジェルも、チャーリーの姿も見えない。
まさか道を間違えてしまったのだろうか。
道標を見誤って?
人のことは言えないが、ありそうなことだ。
とりあえずゆっくり進むことにしよう。
もしかしたら、本当に僕が遅くて、チャーリー達が早いのかもしれない。

“Yogi”でも、ここの斜面は遅くまで雪が残り怖いところだと書いてある。
たしかに、急斜面のトラバースが長く続いている。
これが冷えて固く締まっていたら恐ろしいが、雪はかなり軟らかい。
ずるっ、と滑りやすいので、丁寧に力をかけながら一歩ずつ前に進む。
ざく、ざく、ざく。
トレースに沿って歩く。
振り返ると、さっきの道標が。その先には、チャーリーとローンネンジェルが見える。
やはり、道迷いだった。
e0128835_1245581.jpg


リッジに近くなると、傾斜も緩やかになる。
反対側は日当りが良いので雪は全くなかった。
チャーリーとローンネンジェルを待ちながらスナックタイムを取る。

二人ともちょっと恥ずかしそうな顔をして上がって来た。
でも、なにより無事で良かったということにしよう。
谷がずっと下まで続いている。
この先には何があるのだろう。
e0128835_1246767.jpg


まだ先は長い。
山肌を北に進んでいく。
途中からまた雪となり、トレースは融けて消えているので自由にルートをとる。
といっても、その分時間はかかってしまう。

雪が切れると、小さい石の多いトレイルとなる。
また雪。トレイル。雪。交互に混ざり合う。
リッジを越えて、雪と岩とのトレイルを進んで行く。
陽射しは暑くじりじりと照らす。

e0128835_12462134.jpg


大きなカール状地に出ると再び雪のトラバース。
かなりぐずぐずで歩きづらい。
融けて割れている場所もあり、下は小さい流れが出来ている。
見上げた上には小さい割れ目“Notch”が見える。
後ろからは高速のハイカーが来た。
見たことの無いハイカーだが、早い。
あっという間に通り過ぎて行った。
e0128835_12463835.jpg


僕たちも遅れること、しばらくして、Notch に到着。
ここを越してもまたトラバースの道となる。
斜めの砂利道の先、リッジに向かう。
こっちの方が地図で示されたよりも“Notch”だった。
この先は一気に下り、そして雪。

トレイルが全て塞がれている。
沢は下に向かって一直線に伸びている。
本来はジグザグに進むトレイルがあるらしい。
進むべき方向は一緒だ。
となれば、やるべきことはグリセーディング。

雪が腐っていて、Sticky な状態だ。
けっこうな斜度にも関わらず、スピードも出ずに止まってしまう。
それでも歩くよりは早く降りられた。

しかし、沢はまだ長い。
トンガリコーンの様になった雪面をかかとを打ち込みながら降りて行く。
もう10miも水の補給が出来ていなかったが、やっと水の音が雪の下からする。
雪が割れたところを飛び越える。
水を汲んでいると上から猛スピードで降りてくるハイカーがいる。
だれだろうか。

一気に降りたが、標高は9000feetを切らないため、まだ雪のミックストレイルだ。
さっきのハイカーが追いついて来た。ミッシングリンクだ。

直ぐ下には道路が見える。
Highway 108、Sonora Passだ。
標高が9628feetもある峠で、道路が通るものとしては国内で最も高いもののうちの一つ。
雪の時期は閉鎖されているし、今年の開通は遅かったらしい。
e0128835_12464846.jpg


ここから西にいくと、Northern Kennedy Meadow こと、Kennedy Meadow Resort だ。
通って来た Kennedy Meadow と間違えないように、この呼び名でPCTハイカーに呼ばれている。
東に行くと Bridgeport の街に行く。
Bridgeport は、独立記念日に行くと町中大騒ぎで楽しいらしい。
が、もう過ぎてしまった。

そして、この Sonora Pass は、PCTAの公式では、中央カリフォルニアと北カリフォルニアの境だ。
つまり、中央カリフォルニアの終了の場所なのだ。

派手さは全くない場所だが、満足感は大きい。

数名のハイカー?散歩?の人達がいる。
チャーリーはしきりに期待していたが、トレイルエンジェルでは無い。
ミッシングリンクはブリッジポートに向かうらしい。
ジラルディア(動物の糞を媒介に水の中に生息する寄生虫)にかかってしまったようだ。
見た目よりもつらい状況らしい。
病院に行くため急いでいるのだが、なかなかヒッチは捕まらない。

ローンネンジェルは、少し不安になって来た食料事情を改善するため、ミッシングリンクから分けてもらう。
ここでやっと昼食を取れる。
もう、2:00pmをまわっていた。

陽射しは暖かいのだが風が冷たい。
今日も雲が多く、ストームにならなければ良いのだが。

犬連れの女性と交渉し、無事にミッシングリンクは街へ降りて行った。
僕たちはまたここから上がって行く。
雲が一気に広がりを見せる中、トレイルをゆっくりと歩いて行く。
南斜面は面白いほど雪が無いのだ。

チャーリーは絶好調でぐんぐん登って行く。
ローンネンジェルもしっかり付いて行っているのには感心する。
僕は亀歩き。

低い轟と共にぱらぱらと雨が降って来た。
また一気にざっとくるのか。
ところが、準備をしたものの風向きが違ったようで、あっという間に終わった。
何事も無かったと言うべきだろうか。

リッジまで上がりきると、下からオフトレイルを上がって来た大男達と出会う。
何者なのかわからなかったが、道に迷った訳でもないだろう。

チャーリー達を追いかけるように稜線直下を進む。
標高は10000feetに近くなり、また雪の領域に踏み込んで行く。
大きい岩とのミックスで、ポストホールも怖く、トリッキィだ。

Wolf Creek Lake はキャンプ地に考えていたが、時間が早い。
それ以前に雪の中で、できるなら遠慮したいところだ。
一気に谷を降りることにする。

途中までは何となくトレイルが見えていた。
しかし、完全な雪の中に隠れてしまう。
まっすぐ降りるだけなのだが、岩も木々も多く、今までと勝手が違う。
鋭角な谷は雪が遅くまで残りやすい。
わかっているけど、できたら避けて通りたいものだ。
今日の僕は体力低下だが、頭は冴えているようだ。
次々と進むべき道を見つけていく。

中央を避けてトラバース気味に下って行く。
グリセーディングのあとに合わせて一気に急降下だ。
9000feet近くなると一気に雪が無くなるが、今度は湿地の中に突入だ。
トレイルを外してしまったようだ。
進むべき方向は合っているがちょっとずれている。

修正すべく西よりに行きたいのだが、チャーリーはまっすぐに行こうとする。
説明したが、どうも上手く伝わらない。
“じゃあ、チャーリーはそっちを探して!僕はこっちを探すから。”
と指示を出して行こうとすると、チャーリーも付いて来た。
僕が進んだ方向に行くと、すぐにトレイルを発見。
ローンネンジェルは“Good Job!”と言ってくれた。

そろそろキャンプサイトを見つける時間になっているのできょろきょろ。
勢いの良いSeasonal Creek を一つ、二つ越える。
トレイルから外れたところに開けたスペースあり、そこを今日のキャンプサイトとする。

蚊もいなくは無いが、快適なキャンプサイトだった。目の前には小さな流れもある。
流れの向こう側に大きな岩の、気持ちの良い場所があり、チャーリーはここで食べようと言う。
道具を運ぶのが面倒で渋ったら、ローンネンジェルがちょっと怒っている。
何も怒らなくても。
結局、行くと二人とも笑顔で喜んでいる。

今日は“シンは冴えていたな”と、話す。
明日はどんな一日になるのだろうか。
明日も冴えてくれると良いんだけど。

今日で、4 nights。
考えるの、やめよう。
明日は明日の風が吹く。
明日も自由な旅をしよう。


-"easy"Turtle

[PR]
by hikersdepot | 2011-08-11 09:09 | PCT 2010 by Turtle
Tuolumne Meadows, CA to South Lake Tahoe, CA / Day76 – 82 / PART 1
7/5(mon) Hiking Day 55 / 14mi /12:45pm-6:00pm (5:15)
“Restart to The North”

e0128835_121882.jpg

なんだろう、このうるさい鳥は。
そして騒がしい車の音。
考えてみれば、道路脇にあるのだから仕方ない。
近くでは大声でアジアの言葉が飛び交っている。
日本人はいないが、他のアジア系の人達が多いのには驚く。
とくにここのキャンプ4にはだ。

良くこんなにお腹がすくものだ。
素早く撤収をする。
ネヴェは、まるでカンガルーの子供のように寝袋にくるまっていて、かわいい。
ローランドファミリーと一緒に朝食を食べに行く。

朝から食欲はおう盛だ!
ネヴェはまねをしたい年頃なのだろう。
チャーリーや僕がエッグを食べると、自分も食べたがり、
フルーツを食べると、フルーツを食べようとする。
抱きしめたいほどかわいい。

ヨセミテロッジでバスのチケットを買い、8:20am、無事トゥオルミに向けて出発だ。
中には何人ものハイカーの姿が見える。
そのほとんどがデイハイカーらしく、僕たちは異様な姿だ。

バスに乗り込み揺られていく。
途中停車した場所で外に出てネヴェと遊ぶ。
リニイに、彼女はあなたの事が好きになったみたい、と言われた。

本当はバスからの景色を見て過ごそうと思っていたが、夢の中に。
気づいたら、もうすぐトゥオルミの近くだった。

急に三人と別れる事となる。
ローランド達はバンクーバーに住んでいて、PCTが終わったら遊びに来てほしい、言ってくれる。
お互いの連絡先を慌ただしく交換して別れた。
彼らは、トゥオルミロッジから入り、ドナヒューパスを越えて、レッズメドウを目指すようだ。
ハプニングから生まれたが、とても良い出会いだった。

トゥオルミのストアの前で下車した僕たちは慌ただしく準備に入る。
ストアのポストオフィスで食料をピックアップする。
必要なものを買い足し、急いでパッキングだ。

観光の夫婦に声をかけられる。
PCTの事は知らないようで、簡単に説明をする。
あなた達は見るからにベテランね、と言って大荷物のハイカー達を指差す。
まあね。と自慢げに僕たちは笑う。

ここからまた一週間の旅が始まる。
なんて、Too Much! 、な食料なのだろう。
必要だから背負うしかない。
体の蓄えが無くなってしまったのか、最近の食べる量は尋常じゃない。
それでもなんとなくホットドッグを腹に詰め込み、準備を整える。
さあ、再び北への旅の始まりだ。

また道路を進み、少しだけJMTを通る。
その後PCTに進路を取り北へと進んでいく。

バケイションのシーズンだけあって、デイハイカーの姿も多く見かける。
親と一緒の若者は少し恥ずかしそうに下を向く。
思春期なのだろう、日本もアメリカも一緒だ。

トレイルには雪のかけらも無くとても歩きやすい。
さくさく簡単に歩いていける。
今日も岩と水が美しい景色を作る。
e0128835_1211825.jpg


上から三段で流れる豪快な滝に出会う。
Tuolumne Falls だ。
水しぶきが遠くまで風に運ばれてくる。
この暑い陽射しにはちょうど良いクーリングだ。
e0128835_1212786.jpg


下まで降りると大きな釜の前は広くなっている。
滝を見ながら腰をかけしばし休憩をする。
何人ものハイカーがいる。
中には大きい荷物を背負ったハイカーもいる。
これからどこを目指して行くのだろうか。
e0128835_1214069.jpg


たくさんのハイカー達とすれ違いながら僕たちは先を急ぐ。
今日は昨日のハプニングで少し出遅れてしまった。

Glen Aulin Camp はとても綺麗で広々とした場所で良いキャンプサイトだ。
トゥオルミからここまで来てキャンプするだけでも十分楽しそうだ。
今日は泊まれないが、いつかまたここに来たいと思う。
e0128835_1215145.jpg


ここを過ぎるとぐっと人影は少なくなり、またPCTハイカーの世界となる。
トレイルは単純になりひたすらに北に向かい伸びている。
チャーリーはぐんぐんペースを上げていく。
僕はいつもどおりに歩いていく。
緩やかに登り下りに入る。
しばらくして前方には湿原、Elbow Hill が広がり美しい景色だ。
e0128835_122171.jpg


ちょうど小さな川が流れていて、水を汲む為に立ち止まる。
チャーリーに声をかけるが無視されてしまう。
夢中になると他が見えないチャーリーだ、仕方ない。
ところがそうで無かったようだ。
気がつくと体中に蚊がたかっている。凄まじい量だ。
今年は雪の多さからか、JMT区間ではそこまでの多さでは無かった。
しかし、ここは今までとは桁違いの量の蚊が飛んでいる。

水を汲むのもそこそこにすぐに歩きはじめる。
歩いていれば大丈夫かと思うとそうでは無かった。
アメリカの蚊は刺されてもそこまでかゆくは無い。
しかし、大きく、針が太いのか、チクッと痛い。
そして攻撃的でどんどん体当たりしてくる。
そのうち、運良くひっかかったものはところ構わず刺してくるのだ。
それが歩いていてもだ。

最強の虫除け、100%ディートを用意しているが、それを使う間もない。
そしてあっという間に十カ所近く刺される。
チャーリーが僕を無視して行ってしまった理由がわかった。
とにかく逃げよう!すぐにここから離れなければ!

疲れた体がこんなに動くのかという位の早さで湿原を突っ切って行く。
森に入ってもまだ追いかけて来ている。
いや、その様な気がするだけなのかもしれない。
襲われる恐怖感に、ただ歩き続ける。

小さな丘を越えた辺りでチャーリーに追いつく。
すごかったな!
開口一番、二人とも同じ事を言う。
下手なホラー映画よりもよっぽど恐ろしい体験だった。

トレイルの分岐を分けて少し進むと川に当たる。
Yogi Book によれば、Dangerous Ford と書いてある。
もう少し歩ける時間だったが、ちょうど川の手前に良いキャンプサイトを見つける。
チャーリーが終了したいと言う。
この時間に徒渉で服を濡らしたく無いと。
もう少し歩きたかったが、チャーリーは完全終了モードだ。

ここにも蚊がいたがさっきほどではない。
しかし蚊取り線香で魔方陣を描き防御する。

と、ハイカーが来た。
Glen Aulin の近くですれ違ったハイカーだ。
彼は、Sun Seeker 、PCTハイカーだ。
僕もここで寝ていいかい?と聞くので。
Off Cause! Go ahead!
と仲間が増えた。

三人で焚き火をして時間を過ごす。
彼はヘビースモーカーだ。
そしてものすごく汚い。
コットンのぼろぼろのシャツ。
コットンのぼろぼろのパンツ。
コットンの変色したキャップ。
ぼさぼさの髪。
ぼうぼうの髭。
安っぽいテント。
ぼろぼろのバックパック。
まさに、Hiker Trash!

まだまだ先は長い。
亀のように歩いて行こう。
人里から山へ。戻って来た。


7/6(tue) Hiking Day 56 / 21mi /6:30am-7:00pm (12:30)
“First Storm”

湿った朝だ。
珍しく結露している。
川の側という事だけではなさそうだ。
嫌なスタートだ。

Sun Seeker はのんびりアメリカンハイカーのようだ。
僕たちが出るときにはまだ寝ているようだった。

いきなりの徒渉から。
危険だと書いてあった割に水量もそこそこで、今の僕たちには何の問題も無かった。
はずだった。

川に入り、慎重に進む。
ちょっとポールを突いた。
そして進む。
またポールを突く。
なんか変だ。
ポールが折れていた。
全く意味が分からない。
なぜ折れた。
負担もかけていなかったのに。
驚き、絶句。

チャーリーに借りたものだっただけにショックだ。
だが、こんな事は、もう慣れた。
さあ、先に進むしかない。

片手ポールは自由度が高いが、体のバランスを崩してしまう。
それが心配だったが、なるようにしかならないだろう。

山を上がり歩いて行くと、樹林の中にはまだ雪が多く残っている。
前方にハイカーが二人いる。その姿に驚く。
雪道をEVA一体フォームのサンダルで歩いている。
もう一人はスポーツサンダルだ。
スポーツサンダルは良しとしよう、裸足はないだろう。

立ち止まって話を交わす。
いままで履いていた靴が足に合わなかったようだ。
途中のハイカーボックスで拾ったサンダルで歩いているという。
そんな彼らもPCT ハイカー。
意外と計画無しの人が多くてびっくりだ。
今まで会ったハイカーのどのタイプでもない。

e0128835_1231037.jpg


彼らを追い抜いて先に進む。
Miller Lake を抜けて、急斜面を上がっていく。
谷に入る頃からまた雪の姿が多くなる。
もう正直雪はお腹いっぱいだ。
と愚痴を言ったところで、進むしかないのだ。

雪解けはかなり進んでいてあともう少しなのだろう。
淡々と登って上がると先が開けて来る。
Pass というには今までと比べてかわいすぎるが、Benson Passに着いた。
ここでも10000feet越えだ。
それでも森林限界下なのに、改めて砂漠気候を実感。
何人かPCT ハイカーがいる。
Kiwi達のグループとマウンテンゴートだ。
ヨセミテでぐずぐずしているうちに追い抜かれてしまっていたようだ。

JMTの区間と違い、谷はだいぶ小さくなっている。
ダイナミックさがなくなった分、雪は減ったが、地形は複雑になっている。
谷底に向かって降りて行く。
樹林が濃くなれば雪も多く、道がわかりにくい。
現在地チェックにチャーリーのGPSを使うが、地図が無い。
JMT区間の地図しかGPSに格納していなかったのだ。

ないからと言ってどうもこうも無い。
コンパスと地図で十分。
チャーリーが向かおうとしていた方向は検討違いでなんとか修正。
9000fettを切ると雪が無くなり快適なハイキングを楽しむ。
少し怪しい黒い雲がかかっていたが動きは早く無い。
e0128835_1231986.jpg


Benson Lake の分岐の前の川を越え、倒木を潜る。
一人のハイカーが座って休憩している。
彼は、Lone Ranger、で年は60を過ぎているのだろう。
Lone Rangerは、アメリカの西部劇の主人公で、チャーリー世代のヒーローだ。
このハイカーがヒーローかは別の話だが。

この辺りはちょうど谷底の湿地のような場所で、いままでと違い苔むしていた。
ご多分に漏れず、蚊もいっぱいいるためゆっくり出来ない。

とりあえずもう少し先まで行ってみる。
ここからは今日二つ目のパスへの登りとなる。
ちょっと上がった先で休憩をする。
e0128835_1233144.jpg


ローンネンジェル(発音に近い読みにしています)はステディに先へ。
陽射しを受けてのんびりとツェルトでも干していたが、さっきの雲がどんどん近づく。
これはくるな、と直感。チャーリーも同じく思ったようだ。

すぐにまとめ歩き出す。
まずは雨が避けられるようにどこか探さなければ。
立ってすぐに降り始める。
雷鳴も響いて来た。ストームが来る。
一気にその勢いは増して、大粒の雨が落ちてくる。
周りは岩ばかりで隠れられない。
谷を上がるトレイルが脇にそれると、壁際には木々があり避難。
ちょうど良いくらい隠れられる場所がある。

ここで雨宿り、そう思っていた。
しかし、アメリカの、いや、高所登山の、というべきか。
雨やストームが来たら、すぐに停滞・キャンプが普通だとチャーリーは言う。
もしくは、動き続ける。
たしかに、ただ闇雲に停滞は体を冷やすし、意味が無い。

降る雨はいよいよ強さを増し、徐々に変化をしてくる。
白い大粒の塊は、雹(ひょう)だ。
パチンコ玉より大きいのもあり、当たるとものすごく痛い。痛い!
e0128835_1234137.jpg


マウンテンゴートがびしょ濡れで上がってくる。
チャーリーが、どうするのか、訪ねると、もう少し歩いてみると言う。

雨と雹は収まる気配が無い。
チャーリーはすぐにでもテントを張って暖まりたい。
僕はじっと待つ。
確信があった訳では無かったが、きっと止むと思っていた。
急に発達したし、風も強いので、上がる時も早いと感じていた。
いらだつチャーリーに、時計を見て、降り始めから30分以上経った。
あと少し、一時間待ってくれと頼む。

体が冷えて寒い。
でもあと少しで、止む。

一時間経つ。雨は、小降りになる。
黒い雲もやや薄くなり、明るさが増して来た。
向こうの空には雲の切れ間。
行ける。すぐに出発だ。

まだ雨は降っていたが、歩く妨げになるほどでは無い。
マウンテンゴートがタープを張っていた。
彼はここで終了の様だ。

今回は僕の判断が正しかったということにしよう。
まだ雨は残るが陽射しが出て来て暑くなってくる。
スイッチバックで斜面を上がる。
苔の多い蒸したトレイルだ。
岩が多くを占め、見晴らしが良くなってくると、池が見える。
ずいぶん標高の高いところにある池だ。
Sparkling Pondというが、泡は立っていないようだ。

池を巻いて通り過ぎ、少し進むと小さい池がある。
Seavey Pass に着いた。また一つパスを越える。
充実感を味わう間も無く、時間に追われるように降りはじめる。
e0128835_1234996.jpg


雪も無く快適に降りられると思いきや、急斜面にはびっしりと雪が着く。
Kerric Canyon への降り口は狭く深い谷だ。
進路を一気に西に取り、川沿いに進むが、平地は全くない。
雪の着いた急斜面をトラバースするしか無いようだ。
結構神経の使うトラバースで、雪解けも進んでいるせいで、ポストホールも怖い。
時間もなく、谷は暗く、気持ちは先へ、歩みは遅い。
雪と岩を交互に歩き進む。
岩は崩れやすく、落ちたら激流に一直線だ。
雪はグリップも効かず、ステップも切れるほど軟らかく無い。
ずるっ、と滑り、少し下に落ちるがなんとかストップ。
一本しか無くなったポールを大事にしよう。

雪が切れてトレイルが現れる頃には斜度は緩やかになってくる。
今度は樹林帯を進むが、やはり雪が邪魔をしてスピードが出ない。
岩の隙間にキャンプするハイカーに出会う。
この先は雪が少ないと言うので、もう少し先にいく事に。
今度は僕たちがキャンプサイトを探す番だ。
谷のトラバースでは開けた場所も見つけにくい。

もっと先の徒渉ポイントまで足を伸ばしたかったが、チャーリーの顔は終わらせたがっていた。
ちょうど水の流れるクリークの場所に来ると、開けた明るい場所に出る。
フラットでキャンプにはちょうど良い場所だった。
時計を見ると、時間は7時になっていた。終わろう。

日暮れ前には食事にありつくことができる。
岩陰に風を避けながら二人よりかかり今日を振り返る。
めまぐるしい天気に翻弄されたが、刺激的な楽しい一日だった。
また一つ先に近づく事が出来た。

谷間から見える空には月が浮かんでいた。


7/7(wed) Hiking Day 57 / 23mi /6:30am-6:15pm (11:45)
“One Thousand”

あっという間に朝が来る。
また今日もいつもの時間だ。
Let’s go happy hiking!

道は緩い下りで簡単に歩ける。
こんなことなら昨日のうちにと思うが、そう上手く行かないものだ。
道がBear valley trailの分岐を分けると目の前には、Kerric Canyonにぶつかる。
脇のキャンプサイトには、ローンネンジェルの姿が。
昨日のストームの時にはPassの近くにいて、そのまま止まらずにここに来たそうだ。
僕たちが来ると思っていたそうだ。
まだ撤収を終えていないので、先に徒渉ポイントを見に行く。
トレイルに沿ってストレートに行くのは難しいそうだ。
見るからに腰まではありそうな水量と流れの速さだ。

いままでと違うのはとにかく木々が多い事。
上手いこと、大きな倒木がかかっているのが見える。
岩場をトラバースして少し上流に向かう。
遠くから見るよりは、細く不安定そうな足場だ。
滑りそうで恐ろしい。
いざとなれば跨いで渡ればなんとかなるだろう。
ローンネンジェルが追いついて来た。
彼は、怖くて渡れないと言うが、チャーリーが叱咤激励する。

距離も高さもそれほどある訳では無い。
渡ってみると、思いのほか簡単に渡れた。
チャーリーもすいすいと歩いてくる。
ローンネンジェルもトレッキングポールを突き、バランスを取りながら
なんとか渡ってきた。
そこからトレイルは山を巻くように上がる。
e0128835_124163.jpg


見知らぬPCTハイカーに出会う。
名前は忘れてしまった。
若いのか若く無いのかわからない風貌と落ち着いた雰囲気を持ってる。

彼を追い抜き先にすすむ。
トレイルが降りたところには、また川が流れている。
美しい流れだ。
強い流れでは無いし、深さもそこまでは無いようだ。
とはいえ腰まで浸かってしまいそうなので浅瀬を探して渡ろうとする。
その隣をずかずかとチャーリーが進んでしまう。
声をかける前に腰までいってしまった。
チャーリーのバックパックの腰ポケットにはカメラ、もちろん防水では無い。

対岸に渡ってチェックしてみたが完全に水没したカメラは動かない。
スイッチを入れるとショートしてしまうから駄目だというのにスイッチを入れようとする。
たぶんもう駄目だろう。

谷に降りては登る。
また登りとなり山を上がって行く。
今度は岩山をぐんと標高を上げて行くようにトレイルは伸びて行く。
標高は全体的に低く、9000feetより上にならないので雪が無い。
景色もそっちのけでとにかく歩く事に集中だ。
途中休憩を挟むが今日もストームの予感、先を急いで行く。

山を降りてまた谷を歩いて行く。
トレイルの分岐を過ぎ、いくつかのクリークを越えて行く。
e0128835_1242716.jpg


大きい谷のうねりに沿ってトレイルは進む。
キャンプに良さそうな湖の周りには日陰が多いせいか雪も見かける。
珍しくPCTハイカー以外に出会う。
そういえば昨日も会ったが、この辺は入りやすく人気のあるトレイルなのだろう。
レンジャーステーションが建っているところからはまた分岐が伸びている。
立派なレンジャーステーションを横目にトレイルは谷に沿うように北に向かいはじめる。
長い大きい谷だ。水も豪快に流れて行く。
トレイルは水の影響でぬかるみ、所々は浸水し、深くえぐれている。
細かいアップダウンを繰り返しながら徐々に登っていく。
e0128835_1244295.jpg


陽射しは暖かく気持が良い天気だ。
昨日も途中までは良かった。
空には怪しい雲がまた出て来ている。

さすがに疲れたので開けた場所を探し、ツェルトを干しながら食事の時間を取る。
今日もなかなか休む間がなく疲労の蓄積を感じる。
ゆっくりと昼の休憩を取り、体を休めよう。

ふたたび歩き出す。
ひたすら単調なトレイルを進んでいくのでやや飽きて来た。
贅沢なものだ。
なんだかさっきから臭いがするので気になる。
シンナーのような臭いだ。
あっ!バックパックを下ろして、見てみると、靴の補修に使った接着剤が漏れていた!
ボトルポケットは接着剤でべとべとだ。
まあいいか。それくらい。
e0128835_1245226.jpg


単調なトレイルは急に大きな湿原へと入って行く。
Grace Meadow という名前がついている。
あいにくの怪しい空だが、それでも優雅で美しい名前通りだ。
もう少しすると、ここもお花畑になるのだろうか。

だいぶ上がって来たようだ。
正面には壁のように、最後の登りが待っている。
9000feetを越えると雪の領域が多くなる。
Dorothy Lake にさしかかる頃には、グシャグシャの雪の中だ。

とうとう雨が降って来た。
昨日と同じで雹も混じっていて痛い。
空は真っ黒な雲に覆われている。
とりあえずレインウェアを着る為に木の下に避難。
風を伴う雨は容赦なく体を濡らす。
光とともに雷が音を響かせる。
体を揺らす、大いなる自然の力だ。

チャーリーは、今日は待てない、と言う。
僕も、今日は歩き続けた方が良い、と言う。
ローンネンジェルも、歩き続けよう、と言う。

雪の上なのか、湖の中なのか、わからないくらいぐしゃぐしゃなトレイルを湖に沿って行く。
恐ろしい音は僕たちを追いかけるように鳴り響く。
雹は体に打ち付けてくる。
これからPassを越えなければならない。
出来たら追い抜いて欲しいものだ

最後の登りは、道はわからないが、小さな沢を登り詰めるだけだ。
登る手前、ちょうど雪が切れているところに石で文字が書いてある。
“1000 mile”
そう書いてあった。
気づかなかった。そうか、1000miを越えたのだ。
とはいえ、これはPCTハイカーの多くが使う、PCT Atlasでの値だ。
公式にはもう少し先のようだ。
雷雨の中、記念写真を撮る。
あと、1650mi。
e0128835_125624.jpg


パスまでは直ぐに着いた。
雨もだいぶ収まり、雷は遠くでまだ音を響かせている。
パスについて眺める景色は一面の雪。
まだ付き合いは長いようだ

今までの経験上トレースは頼りにならないので、だいたいの方角で進んで行く。
トレイルはほんの少しだけ顔を出している。
それをチェックポイントにして歩いて行く。
リッジまで来ると下に、Lake Harriet が見える。
まだまだ雪がいっぱいの様だ。

Lake Harriet くらいの標高でキャンプをした方が、蚊に苦労しない。
それを考えて、本日のキャンプサイトとして考えていたが、雪で覆われている。
チャーリーはどうせなら降りてしまおうと言う。
e0128835_1251471.jpg


適当にバラバラと雪の斜面をヒールキックしながら降りる。
9000feet より下で雪はほとんど姿を消す。
快適なトレイルは蚊によって支配されていた。
しかし、キャンプサイトを探すしか無い。
周りを見ながら先へと進む。

Cascade Creek のfoot bridge を渡る。
この辺りが公式には1000mi という事になるが何も無かった。
この辺もキャンプサイトに良いと書いてあるが、良さそうなところが見当たらない。もう少し先まで行ってみることに。

そうして歩いていたら、トレイルの分岐まで来てしまった。
どうしようか、とチャーリーとローンネンジェル。
僕はトレイル横の崖を見る。
5mくらいの高さを登ったら平らになっているような気がして登ってみる。
すると、三人が十分にキャンプをできる場所が広がっている。
水も、流れは弱いが、近くにある。
Good job!
ただし、蚊はすごい。

まずヘッドネットやウィンドシャツを出して、刺される場所を無くして行く。
手際良く幕を設営して、水汲み、食事とこなしていく。
見上げた空は薄くオレンジ色に染まり美しい。
嵐は完全に去ったようだ。

Lake Tahoeまではまだ長い。
どうやらこの旅最長の無補給になりそうだ。
まあ良い。
歩こう。
また明日も。
明日は蚊がいなければ良いなア。


-"easy"Turtle
[PR]
by hikersdepot | 2011-08-09 12:37 | PCT 2010 by Turtle
Tuolumne Meadows, CA to Yosemite Valley, CA / Day74 – 75
7/3(sat) Hiking Day 54 / 22mi /6:30am-6:00pm (11:30)
“Four Japanese Hikers”

チャーリーと二人出発する。
マウンテンゴートとターボは一足早く出ていた。
みんなもぞくぞくと出発して行く。
“See You Trail !”
再びの再開を願い挨拶を交わす。

周りの岩山に阻まれて陽射しが入らないため、薄暗く寒い。
e0128835_0582964.jpg


道路を通ってJMTルートに入る。
自然観察道のようになっているため、道は綺麗だが道がわかりづらい。
てくてく歩いて行く。
どうやらあちらも道を間違えたのか、マウンテンゴートとターボと合流する。

マウンテンゴートは調子が悪いらしく、腰を押さえていた。
時々痛くなるらしいのだが、今日は歩けないと言う。
一日休みたいそうだ。

ターボは何となく僕らと一緒に歩くことになったようだ。
道路を横切るとやっとトレイルらしくなって、Passに向かって登って行く。

まだ雪の呪縛からは逃れられないようで、雪の残るトレイルの中を行く。
樹林が濃く、今までとはまた違う趣を帯びてきている。
樹林を抜けると美しい岩山が見え、どれも素晴らしい。
その中でもひと際迫力を持って目の前にそびえるのは、Cathedral Peak。
e0128835_0584223.jpg

Cathedral Lake への分岐を通り過ぎ、Passへと向かってもうひと登りする。
すぐに広い湿地帯へと出る。
Cathedral Pass(9,700mi)
JMTの最初のPass。逆から歩くPCTハイカーにとっては本当に最後のPassだ。

これを下れば、Yosemite Valley 、終着点だ。
一休みを終えて歩きはじめる。
道は畦となり、雪に隠されながら伸びて行く。
e0128835_0585045.jpg

適当に歩きやすいところを選んでストレートウォークをする。
下りはじめると日当りが良いのか雪は少なく乾いた広い草地にでる。
数人のハイカーがキャンプの撤収をしているのが見える。
近づいて行って挨拶を交わす。
彼らは、Tuolumne まで歩くハイカーだった。今いる場所が良く分からなくなったらしい。
みんなで地図を見ながら確認してみる。
右手には、Columbia Finger、というわかりやすいピークが見える。

みんないかにもアメリカ人らしいスタイルのハイカーだ。
30年前から変わっていないことに驚く。
e0128835_059197.jpg


再び下りはじめるが、どうもまっすぐ来すぎてしまったようで山よりに進路を変える。
少し遅かったようで、だいぶずれてしまっている。
ガレの斜面をトラバース気味に進み、よじ上るように上がる。

トレイルに復帰するとさくさく歩けるようになる。
もう雪は十分だよ、と笑い合う。
さすが人気のトレイル。しかも独立記念日の前日なのでハイカーが多いのか。
また向こうから上がってきたハイカーはアジア人のように見えた。

いままでに会ったアジア系のハイカーは、中国系か日系のアメリカ人だった。
どこの人かな、と思って見ると、どうも日本人のようだ。
いやでもまさかと思い、Hello! と言ってみる。
向こうも挨拶を返してくれた。しかし、英語の発音の母音が強い。
これは、やはりと思い、“日本人ですか?”と声をかける。
“No”ではなく“はい”と答えが返ってきた。

彼らは日本からJMTセクションを歩きにきた日本人四人組だ。
今年の雪の多さで結局当初の予定を断念してしまったらしい。
歩けなくはないが歩きやすくはない。
レンジャー達としても慎重なコメントにならざるを得ないのだろう。
個人的には歩いて欲しかったが、それもまたHiker Direction だ。
生山(おいやま)さん、佐藤さん、赤星さん、石津さんの四人組。
石津さんは紅一点だ。
みんなとても大きなバックパックを背負っている。それもまたカッコ良くもある。
久しぶりの直接話す日本語に興奮してしまう。
しばし立ち話。
自分がHiker’s Depot という店で働いている(いた。と表現するべきか?)と言うと、
彼らは某大手アウトドアメーカーの人達だと言う。
驚いた。まさかこんなところで業界関係者に会うなんて。
彼らはみんな別々の場所から集まって来たようだ。
素晴らしい、楽しそうな会社だ。
僕らの小さいバックパックを見て興味を持っていたが、時間もあまり無い。
もっと話したかったが、お互いの旅の幸運を祈って、別れる。
e0128835_0591123.jpg


チャーリーやターボもびっくりしている。
時間かけてごめんというと、僕たちだって海外で自国の人に出会ったら一緒さ、と言う。
ありがとう。

標高はぐんぐん下がり、大きな湿原が現れる。
ここが、Sunrise Camp だろうか。
ここまで来ると雪は一切なくなり乾いた台地と引き換えに蚊が現れる。
徐々に木々も濃くなり、自然豊かな表情を見せ始める。
空は乾いて青く広がり、今日も素晴らしい天気だ。
e0128835_0591912.jpg


チャーリーはロッジに泊まりたいらしく、一生懸命電話しているが上手く捕まらないようだ。
独立記念日じゃ高くて、混雑しているのだろう。

見渡す景色は岩の造形美で広がる。
どんどん谷に向かって下降するが長い。
正面には綺麗な半円状の岩が見える。
あれが、あの有名な”Half Dome”だ。
e0128835_0593158.jpg


ちょうどHalf Domeを真正面に見る形のキャンプサイトがトレイルから外れたところにある。
そこで美しい岩山を眺めながら昼食となる。
もうだいぶ降りてきたがまだ先は長いらしい。
ValleyのElevation(標高)は4000feetだ。
10000feet近くから降りてきて、今はやっと7000feet位だった。
時間も正午を過ぎてしまっている。
大急ぎで降りれば、今日のバスでTuolumne に戻れるだろうが、厳しそうだ。
ターボは今日戻りたいと思っていたが諦めたようだ。
となれば、のんびり、休憩をするしかない。

また歩き始めて直ぐの頃川を一つ渡る。
またしばらく行くと看板が立っている分岐にあたる。
その看板には、Half Dome、のくりぬきの文字が。
e0128835_0594090.jpg


ここからは、ほぼ問答無用のPCTパーミッションをもってしてもかなわないエリアだ。
さほど興味の無い僕にとっては問題なかった。

そこからはすぐに、Little Yosemite Valley に着く。
立派なトイレが建っているのを見るといよいよ人の気配が増えてくる。
e0128835_0595047.jpg


明らかにデイハイカーと思われる人の量が増えるのだ。
彼らは、JMTハイカーの様に綺麗では無い僕らを物珍しそうに見る。
そして僕らは物珍しそうに綺麗なハイカーを眺めるのだ。
e0128835_102220.jpg


馬にまたがるレンジャーに初めて出会う。
かっこいい。
e0128835_103378.jpg


日本にも、馬の文化、があったはずなのに、いつから日本はだめになったのか。
そんなことを考えてしまう。
日本には規制しか無いが、海外には規制、ルールの上での自由が広がっている。

もうすぐ着いちゃうんじゃないかと思っていたらここからが長かった。
まずは、Nevada Fall が現れる。
すると、ものすごい観光客で溢れ変える。
な、なんじゃこりゃ!
と思わずお決まりの文句を言ってしまいそうになるほどだ。
ところが、その滝にはものすごい水量が今歩いてきた道の方から流れている。
これには、さすがに興奮が隠せなかった。
三人ではしゃいで写真やムービーを撮りまくる。
柵なんて無粋なものが無いので、ぎりぎりまで行けるが恐ろしい。

この、Nevada Fall は雪解けの時期に現れ、盛夏には姿を消してしまう。
冬には当然滝は無く、この時期だけ現れる滝なのだ。

それにしてもものすごい数のデイハイカーだ。
まるで修学旅行に来たような若者達でごった返している。
それから、アジア系の旅行者だが、バックパッカーのような人種ではない。

やることが済めばとっとと降りよう。
トレイルは岩肌をトラバースするように進む。
上からは水滴がシャワーのように落ちてきている。
これもこの雪解けの時期だけのアトラクションだ。
e0128835_104694.jpg


振り返るNevada Fall。
“Nevada”はスペイン語で“雪”を意味する。
雪がある時期にしかない滝だからこその名前なのだろうか。
e0128835_105595.jpg


ちなみに、 “Sierra”というのはスペイン語で“連山”を言う。
“Sierra Nevada”とは“雪の連山”という意味だ。
スペインには本家、Sierra Nevada がある。
シエラネバダ山脈という言い方をされるが、本当はネバダ山脈なのだ。
ただ、アメリカではそのままの意味ではなくなっている。
だからこそ愛称で、The Sierra、と言うのだ。

トレイルはコンクリートで固められ、歩きやすそうに思うが、足への負担は計り知れない。
疲れた膝に大きな負担になるのは間違いない。
独特の臭いと違和感をまとったハイカー集団はかけるように下って行く。
チャーリーは膝の調子を考え少しスピードダウンだ。
子供達と競争のように抜きつ、抜かれつ標高を下げる。
うんざりするほどのスイッチバックを繰り返す。
腕の高度計の数値はゆっくりとしか下がっていかない。

Stock Route(馬用のルート)を分けてしばらくすると橋の手前に大きな人だかりが見える。
トイレと水道があるところを見ると、ここが登山口なのだろうか。
橋の上は人でごった返している。
e0128835_11435.jpg


しかし、ここは登山口では無く、もうひと下りする必要がある。
岩を削ったトラバースするトレイルを惰性のみで歩く。
向こうに見えるのはYosemite Fall のようだ。

突然道路に出る。
それを人の流れに従って進むと、小さな売店とバスストップが見える。
JMTのスタート点、そして僕らのゴール点、幸せの小島、Happy Isles に着いた。
e0128835_112937.jpg


三人でハイタッチをして、ここまでの労を称え、喜び合う。
とりあえず売店で何か食べよう。
もう時間は午後五時を過ぎているが、夕飯前の腹ごしらえだ。
ホットドッグとアイスとソーダ。大満足だ。

近くにいるレンジャーに、PCTハイカーであることを伝え、キャンプ場の場所を聞く。
もう予約できるキャンプグラウンドは満杯だが、バックパッカーズサイトがあるとのこと。
ターボは一度ヨセミテに来たことがあり、僕たちが泊まる場所もわかるという。

無料の循環バスに乗りたかったが人の量が尋常じゃあ無い。
歩いても行けると言うので、薄暗くなってきた道を人込みの中進む。
右手には大きなキャンプグラウンドが広がるが、どこもいっぱいだ。

North Pine というキャンプグラウンドを抜け、川を渡った先にバックパッカーズサイトはある。
ここはハイカーやバックパッカーが予約無しで泊まれるところだ。
まだなんとか泊まれそうだ。
エリアぎりぎりに今日の家を建てる。

一息ついたら今日の夕食にありつきに出かける。
少しは空いたバスに乗って、Curry Village に行く。
自家用車と人で溢れた場所に到着。
ここにはアウトドアショップもあり、選べなくともたいていのものは買える。
靴を見てみるが、気に入るものは無かった。

ヨセミテ内ではまだ安い方の宿泊施設がここだが、さすがにトップシーズン、高い。
アクア・ドルチェで泊まったようなテントハウスが$200では泊まれない。
レンタルサイクルもあり、様々なアクティビティの予約もここでできる。

食べるところも豊富で、ハンバーガーショップやピッツァショップ、ブッフェレストランがある。
レストランは高いので、ピッツァにしようと並ぶが、40分待ちだと言う。
これはさすがに待てない。

時間も少なかったが、ブッフェレストランへ。
中にはカフェやアイスクリームスタンドまである。
至れり尽くせり、とはこのことだ。

ブッフェは、日本ではバイキングと言われる食べ放題のこと。
とにかくお皿に盛って、盛りまくる。
飲み物も三種類くらいまとめて用意だ。
三人で乾杯。
僕は残念ながら、Mt. Whitney には登れなかったが、チャーリーとターボはJMT踏破だ。

まだまだ先は長いが、大きいポイントを通過したことは間違いない。
二度目の大皿を平らげ、一杯の腹を抱えながらキャンプサイトに戻る。

これだけたくさんの人の気配の中寝るのはいつ以来だろう。
いや、日本でだって、平日休みの僕には、ほとんど経験が無い。
がやがやとした声も、疲れた体には子守唄だ。

深い谷に包み込まれて眠る。




7/4(sat) Zero Day 17
“Busy Valley”

Independence Day、独立記念日。
アメリカ人にとって一年の中で最も盛り上がるお祝いの一つ。
街ではお祭り騒ぎになる。
夜中には花火が飛び交い、興奮と感動に包まれる。

場所は、Yosemite National Park。
花火は禁止。大きな音を鳴らすのも禁止だ。
当然だろう。
しかし、それにしてもものすごい人だ。
道路は渋滞が起きている。

改めて見ると、日本では想像もできないほどの大きな、
それは大きなキャンピングカーが何台もひしめき合うように止まっている。
いったいどれだけ多くの人がここを訪れ、そして本当にこの自然を楽しんでいるのだろうか。

e0128835_123376.jpg


昨日の夜、あれだけ腹に詰め込んだのに、朝には再ブッフェで食事。
いったいどれだけの飢餓なのだろうか。
このごろの体の変化には驚くばかりだ。
今までに経験したことない飢餓感。
しかし、その割には充実した体力と精神。

今日はヨセミテ内を少し観光したあとに、洗濯をしてからトゥオルミに戻る予定。
バスに乗って、ビジターセンターのある、ヨセミテの中心地”Yosemite Village”に向かう。

アメリカの国立公園は入るだけでもお金がかかる。
しかし、その代わりに公園内の設備の充実度は日本の比では無い。
循環するバスは無料だし、公園内に来た人が安心して楽しめるようサービスが行き届く。
ただ、そのエリア外に無断で出た場合は、
逮捕権も銃携帯も認められているレンジャーから大きなペナルティーが科せられる。

山野に入る場合は別に、Wilderness Permit が必要になる。
これは別途代金が必要だ。
ところがこのお金はWilderness Area を守る資金となる。
レンジャーを雇い、整備をし、トレイルを作る。
そこまでして、山野に入りたいハイカー達にはその自然を享受する自由が与えられる。
お金を払ってまで山野に入りたいハイカー達は自然の保護に対しても理解が深いのでマナーは良い。

お金というフィルターを通すことで、人を分け、自然を守るというやり方だ。

どちらが良いということは無い。
しかし今の日本は、自然があっても何もするな、という。
本来の人と自然との関わりを壊すやり方が多いのも確かだ。

ビジターセンターを中心に、ポストオフィスやスーベニアショップなどが並び、
カリービレッジよりも人が多くにぎやかだ。

ビジターセンターの前まで行くと、見たことのある四人が座っている。
昨日の四人組だ。
チャーリーがビジターセンターで話を聞いている間、僕は外で話をする。
昨日、トゥオルミに上がり、今日バスで戻ってきたのは良いが、その後が決まらないようだ。
独立記念日でレンタカーが借りられずに困っているらしい。
確かにこの込み具合では、特に週末の独立記念日では、思うようにいかない。
しかし、これも旅の醍醐味というものなのだろう。

僕たちは、Yosemite Fall を見に出かける。
バスで一つ先に行ったところから遊歩道を歩く。
まるで華厳の滝かなにかのようだ。
しかし、道の正面に見える滝は迫力がありかっこいい。
この辺の演出の仕方も、さすがだと感心する。
e0128835_124266.jpg


滝の近くまで行くと、本当は駄目なのかもしれないが、みんな奥まで行っている。
これは乗っておこうと、三人で突っ込んでいく。
PCTハイカーにとっては楽に思えるが、みんなへっぴり腰で遅い。
近くまでしっかり寄ってびしょ濡れだ。
僕のカメラは防水だからここでも撮ることができる。
e0128835_125164.jpg


Yosemite Village に戻って、お店を物色。
たいしたものがある訳ではないが、アウトドアショップもある。
Curry Village の方が充実しているように思った。
e0128835_13456.jpg


生山さんにばったり会う。
行き先が決まったようだ。良かった。
やっと落ち着いたので、お土産を物色しているらしい。
つい、久しぶりの日本人なので話が止まらない。

お土産屋にはたくさんのポストカードが置いてある。
ここにはAnsel Adams のポストカードが豊富だ。
Ansel Adams は写真家で、とくにヨセミテの風景を好んだ。
Yosemite の写真といえば、Ansel Adams。
Ansel Adams といえば、Yosemite だ。
日本への手紙を書くために何枚か購入した。

Village の近くには、Yosemite Lodge という宿泊施設があるが、
さらに一つ上の場所がある。
The Ahwahnee
高級ホテルだ。
e0128835_131755.jpg


建物が素晴らしいだけでない、歴史もあるのだ。
そして景色との融合がすごい。
後学の為に見に行くことにする。
できたら食事もと思ったが高すぎて話にならない。

室内は思ったよりも広く、歴史を感じさせる。
実際、歴史を紹介した展示室まである。

チャーリーは何を思ったか、上に行こう、と言い出す。
上の方の階は部屋があるだけだ。
エレベーターを降りたチャーリーは静かに歩き出し、開いている部屋に入る。
高い代金を取ってどれほどの部屋だか見てみよう、ということだ。
とはいえ、どこまでやんちゃなおじさんなのだろう。

見ておいて良かったのは、たいした部屋ではなかったこと。
いくら高級とはいえ、Lodge なのだから仕方ないが、もう少し広くても良いのにと思った。
これなら、$40のモーテルの方が良いと思ってしまう。

誰にも見つからないように退散する。
結局、ハンバーガーで昼を済ませる。

Tuolumne から先は、また長い日々になる。
なので、洗濯をしたかったが、残り時間が少ない。
この後のバスでトゥオルミに戻る予定なのだ。
一日一本しか出ていないので、これを逃す訳にはいかなかった。

先に洗濯をしようと言ったのにチャーリーが聞いてくれなかった。
もう諦めようとしたが、大丈夫だ、と言う。
ターボは必要ないと言う。
なぜなら、彼のPCTはここで一旦の終了となるからだ。
彼は足も強いし、このまま最後まで十分行けるだろうに、辞めるのだ。
この後、別のロングトレイルを歩きにいき、PCTの続きは来年するのだという。
良くも悪くも、アメリカ人らしいこだわりの無さだ。

House Keeping Camp というのを初めて知る。
よく考えればわかる、そのままの意味なのだが、理解できない。
要するに、家と同じような状態を保持したキャンプ、ということだ。
??????
キャンプだけど、家と同じ生活?
家と同じような生活だけど、キャンプ?
ロッジでは無く。
かといって、コテージでも無い。
テントでもなければ何でも無い。
プレハブみたいな建物の中で、何が楽しめると言うのだろう。
それに代金を払う価値が、僕にはわからなかった。

そこの場所にはコインランドリーがあるので、バスで向かう。
シャワーを浴びる前に服を脱ぎ、洗濯をする。
時間が差し迫っていたが、まだぎりぎり間に合いそうだ。
ところが、乾燥は間に合わず、半乾きの服を来てバス停に向かう。

バスは待ってもなかなか来ない。
とはいえ、歩くにはけっこうな距離があるので躊躇してしまう。
20分以上待っやっと来たバスに乗り込む。
こんなに時間がかかった理由がわかる。
バスには人が溢れるほど乗っていた。
そして、先の道路は渋滞で大混雑していた。

バスを降りてキャンプサイトまでダッシュする。
しかし、どう考えても間に合いそうには無い。
適当に荷物を詰め込み、再び走ってバス停に行く。
ターボが先に行ってバスを止めると言ってくれたが、それどころでは無かった。
バスが、混雑しすぎて来ていないのだ。

バス停には、B.P.Camp にいた子連れのハイカー夫婦がいて一緒に乗り込む。
彼らも今日戻るつもりらしいのだが、これでは時間が間に合わない。
Yosemite Village に着いてまたダッシュ。
しかし、トゥオルミ行きバスは既に出ていた後だった。

本当に人生はままならない。ハプニングの連続だ。
チャーリーは少し責任を感じていたのか、ごめん、と言う。
別に良いさ。これも自分の判断だ。

バス停にはボストン&カーヴィがいた。
あっさりと追いつかれてしまっていたようだ。
彼女達は早い。

子連れの夫婦ハイカーと話をする。
寝ていた女の子もこの騒ぎに目を覚ましたようだ。
Roland、Lenee、Neve、の三人はカナダから来ている。
ローランドの話では、この季節限定のバスが他にもあると言う。
Yosemite Lodge から出ているというので、とりあえずロッジまで行ってみることに。
このロッジも十分綺麗な施設だ。
中のカウンターで話をすると、少し高いが、バスがあるということだ。
明日の朝一で行けば十分だ。
とりあえず一安心する。良かった。

気づいたら、ターボの姿が見えない。
どうしようか。
チャーリーは大丈夫さ、と言う。
きっとボストン&カーヴィと楽しくやっているだろう。

次の問題は泊まるキャンプ場が遠いということ。
この辺で野宿でもしてしまおうかと考えていると、ローランドが”Camp 4”に行こうと言う。
Camp 4 。
クライマーやボルダラーが集う有名な貧乏キャンプサイト。
一度行ってみたいと思っていた。
しかし、予約が必要なキャンプサイトなのにどうやって泊まろうというのか。
ローランドもリニイも自信げに、問題ないという。

ヨセミテロッジから歩いて五分くらいの距離に、Camp 4 はある。
駐車場は車で一杯。
立て看板には“No Vacancy”。
二人が言うには、サイトは予約だが広いので、空いているところに寝てしまえるとのことだ。
まあ、なんて強引なこと。
とはいえ、それしか方法が無ければなんとかしよう。

ちょうどクライマーらしき男性二人がキャンプするサイトがあり、広々と空いていた。
ローランドとチャーリーが話しかけて説明すると、快く許してくれた。
サイトを予約してしまうので、他にはもう来ないだろうと言う。

ローランド達はテントを立てずに寝るようだ。
4歳になる、ネヴェは母親のリニイと一緒の寝袋で寝るらしい。
すっかり起きてご機嫌になったネヴェと遊ぶ。
彼女は近くの岩の上に登っては滑り降りる。
なんとかわいいことか。
e0128835_132720.jpg


未来のクライマーの姿を見たような気がする。
日本の甥のことを思い出す。きっとまた大きくなったのだろう。
すっかりネヴェとは仲良しになってしまった。

男性二人はやはりクライマーらしく、明日早朝には取り付きにいくらしい。
彼らは、PCTハイカーのことをおかしい、Crazy、と言う
ところがこちらにしてみたら、垂直の壁を登ろうとする方が、Crazy、だと思う。
e0128835_134211.jpg


今日の夕食はヨセミテロッジで食べるが、ここはデリ形式だ。
ところが、まあ値段が高く、ブッフェの方がおいしいし人気があるのがわかる。
食べられるだけ良いというものだが、チャーリーと僕はグルメだ。

昼間に買ったはがきを書くチャンスを思わず得られてしまう。
デザートを食べながら、手紙を書く。
日本でお世話になった人達に、とりあえずの報告だ。
つい、気が緩むのか、涙がにじんでしまう。

ローランドとリニイ、ネヴェも来ていて、彼らからアイスのお裾分けをもらう。
さっきもアイスを食べたばかりだが、ありがたく頂戴しよう。

キャンプサイトに戻ると、アジア系の人達がテントを張っていた。
どうやらここを予約した人達の様だ。
空いていたのでは無かったのだ。
申し訳なくて、ひと声かけて事情を話すと、問題ない、と言ってくれた。
みんなハイカーに対しては優しい。
感謝。

周りのざわめき、人の気配、おいしい匂い。
慌ただしい一日が終わる。
[PR]
by hikersdepot | 2011-08-01 01:47 | PCT 2010 by Turtle