「ほっ」と。キャンペーン
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Kennedy Meadows,CA to Lone Pine,CA Day49 - Day 55 / Part 3
6/14(mon) Hiking Day 42 8mi 7:00am-??:??pm(??:??)
"Joe of that day"

まさかこんなことになるなんて。
誰も予測は出来ないし、しようとも思わなかった。

この日の日記には一行しか無い。しかし、これほどに記憶が残っているのは自分でも意外だった。


今日も空は高く蒼く、輝きと共に始まる。
わいわいと賑やかな朝。
今日は街に降りるだけなので朝をゆっくり過ごす。
マンゴーを待ってから出発。

今日も変わらず雪上を歩く。
ぐるりと囲む山は綺麗で、下に見える湖は美しく、素晴らしい景色だ。
今日も錯綜するトラックに翻弄されながら進む。
標高は12000feet近い峠に向かう。
シエラは出入りするだけで一仕事。

平坦なほど雪が多く、急斜面ほど雪がつかない。
今日も壁を大きいスイッチバックで上がって行くとクラックのように小さく開いた峠、Kearsarge Pass に着いた。
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高い場所は、さらに綺麗な景色だ。
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ずっと下には街があるのか。
広く遠く、街は見えない。

少し離れた岩場に伝っていけるので、先に着いていたジョーとスマイルスが座っていた。
ジョーはスマイルスに大分看過されたようだ。
スマイルスは生命力に溢れている。

スノーシューもしっかりしたクランポンも持っている大荷物のシューマーはゼィハァと上がって来た。

右下がりの雪の斜面をトラバースしながら気持ち良く下る。
平らなキャンプにちょうど良さそうな場所にクラシックなハイカーがいた。
みんか話を聞いているとどうやら山岳ガイドのようだ。ガイド見習いの息子とカメラマンと来ていた。
マンゴーはガイドの彼が主催する技術講習会に参加した経験があるらしい。
雪のPCTを歩く為の技術やガイディングの本やビデオを作るために来ているという。

話は盛り上がってしまい30分位してやって出発。
トレイルヘッドのカーパークまではあと一時間と少しだろう。
まだ雪は多く、急斜面を降りていく。
左には開いた急斜面。右から回り込むようにスイッチバック。

スマイルスはグリセードで一気に降りようと言うが、怪我はしたくない。
エヴァン、ダンとジョーはあとを付いていったが急斜面に苦戦していた。
元気なおばさんと若者達は放って置く。サクサク下れる。


ワーワーとやってる声が聞こえる。
降りてみると、スマイルスの叫び声が聞こえる。
ただ事じゃない雰囲気だ。何を言っているのか上手く聞き取れない。
Joe? Help?
何かが起きたのは分かる。
きっとジョーが滑落をしたんだ。

話はわかるが、脳が理解しない。
数秒経って頭が動き出す。
なんてことだ。

スマイルスは慌てている。
骨が折れたようなことを言う。ショウマンと二人顔を見合わせる。
ダンはジョーの側にいるようだ。エヴァンは。四人の場所がわからない。
スマイルスがさっき会ったガイドが衛星携帯電話を持っているので救助を呼ぶと言って出てきた。
雪の中の浮島のように、斜面の真ん中にあるテラスにいたようだ。
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とりあえず落ち着くように言う。
まずは状況を把握しないと。しばらくしてガイドと共にスマイルスが戻る。
確認をしているようだ。
下からは状況がわからないが上は狭く、動かずにいた。
スマイルスが下まで降りてきて状況を説明。
骨が見えていたという。
出血も多いため、どうするか。
事故現場の脇に開いたテラスがありエヴァンやマンゴーが見える。
登り返し状況を見に行く。
今は誰も出来ることが無いため待機していたところへ合流。
下から見るよりも急斜面だ。

ダンが慎重にこちらへ渡ってきた。
話は、あまりの痛みの為、骨折したとジョーが言ったようだったが、冷静になってきて折れてはいないようだった。
しかしショックで自力では動けなくなってしまったようだ。
ガイドの判断でヘリコプターを呼ぶ。

他でも事故があり直ぐには来られないようだ。
応急処置をして待つ。

既に1時間以上経っていた。陽射しが暑く厳しい。
食料は、降りる予定だったため、残り少なく厳しい。
水も少なくのどが乾く。

下では、上がって来たハイカー達と談笑するスマイルスとシューマーがいる。
基本自己責任というのは分かっているが、少なくともそのきっかけを作ったスマイルスの笑い声にはさすがに呆れる。
シューマーも自慢気に説明している。悪い人では無いが今は。

事故の時の状況が少し解る。ジョーはただ滑落したのではなく、回転したようだ。
つまり、急斜面に行ったジョーはグリセードをしようと体勢をとるが上手く滑らないうえ怖くなり立ち上がった。
トラックを戻ろうとしてつまずき、バックパックの重さでバランスを崩し、頭から回転しながら落ちたようだ。
ピッケルもスパイクも使っていたが、使い方を知らず、雪の技術が無かったその結果だ。
そして自分の力量を誤り、驕る自分への代償だ。
誰もがすぐそこにある怖さであり難しさなのだろう。

ヘリコプターが来たときに判りやすいよう目印が必要で、エヴァンのオレンジ色のマットを広げていた。
他に無いかと話になってみんなが気づく。
"シンのシェルターはオレンジだ!"
シートもね。シューマーが僕のバックパックから取り出して広げる。

長丁場だ。一度下に降りて食事をする。
ついでにジョーのバックパックパックを担いで降りる。
近くの水場で冷たい水を汲む。スマイルスやシューマーにも分ける。

硬直状態になる。
デイハイカー達は雪が多いため先へ行かずここで事故の状況を見入っていた。
下から時折ハイカーが上がってくる。クラシックでビッグロードだ。
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ふと見慣れた顔が、General Lee だ。もっと先に行っていると思っていたが。
他のメンバーは一日遅れらしい。
状況を知りびっくりしたようだ。そうだろうとも。
ここにいる自分達も数時間前を考えると信じられない気持ちだ。

リーは先へ。次に来たのはUncle Tom 。
一緒に歩いていたパットは腰を痛め街で休んでいるようだ。
トムもパンコースト兄弟を知っていたので驚いていた。

トムも去り、何時間が経っただろう。
上のみんなものどが乾いただろうと考えて水を持って上がると空から音が!
直ぐに幕が飛ばないように押さえに行く。

ヘリコプターは大きく旋回しながら位置を確認するが場所が悪いため一旦上のほうに着陸し、隊員が状況確認にくる。
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まだまだ時間はかかりそうだ。
マンゴーが降りてきて、ジョーのバックパックをトレイルヘッドのカーパークまで下ろそうという話になった。
デイハイカー達は少しだけ上がる気になったのか、ついでにジョーのトレッキングポールで、斜面に入らないようにマーキングをしてもらうようにお願いをする。
一人残ってくれたハイカーがジョーのパックを下ろしてくれることになり、彼のパックを僕が前後ろに背負って降りる。
事故から既に4時間以上が経っていた。

スマイルスはさっさと降りていく。
重くは無かったが足元が見にくく慎重に降りていく。

この大きな谷はOnion Valley というが、所々に池と滝を有し、フィッシャーが竿を振っていた。
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景色がとても素晴らしい。
岩と水と空と雪の四重奏。
こんな状況でも心が震えるのだから、通常ならばもっと、いや、こんな状況、だからこそより美しさを感じるのかもしれない。

トレイルヘッドにはキャビンやキャンプグランドもあり穏やかな雰囲気だ。
ここまで来ると雪は綺麗に無くなり再び砂漠地帯の雰囲気になる。
陽射しは強く暑く全てのものがカラカラだ。

ヘリコプターがロータリーの真ん中に降りてきたがジョーはいない。
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救出場所が場所だけにすんなりとはいかないようだ。
ヘリコプターのドアを外してなにやら準備をしている。

街からは警察、消防と救急が駆けつけていた。
準備を終えると空へ舞い上がる。


しばらくして、再びヘリコプターが近づいてきた。
その下にはぶら下がった担架が、ジョーに違いなかった。
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安全に下ろされたジョーはそのまま救急車の中に運ばれていく。
一言声をかけるが、時間もずいぶんたったせいか落ち着いていて笑顔も見れた。
安静にはちがいないが心配なさそうだ。

僕達も街へ降りる。
上のみんなをダンを待ちたかったが、デイハイカーの人達、家族だった、がLone Pineまで乗せていってくれることになったのだ。
ぐんぐん長い下りを進む。
一気に2000m位は下る。

Independence はハイウェイに出ると直ぐにある街というより集落と言った規模。
そこから南下して行くと、Mt.Whitney の登山基地となる街、Lone Pine だ。
西武開拓を彷彿とさせる古き良きOld Town だ。

ハイウェイ沿いのメインストリートが全ての小さな街だが、民家は奧に広がって立ち並ぶ。
中心部に白く立つのが、Mt.Whitney の登山口にある、Whitney Portal の経営者が営む、Whitney portal hostel だ。
Hiker Friendly なここが宿になる。

先に部屋に入るが落ち着かない。
とりあえず街をうろついて時間をつぶした。
コーラとポテトチップスで一息つく。
小さなアウトドアストアで時間をつぶし部屋に戻るとエヴァンがいた。
ダン達と一緒に降りたが、ダンは直ぐに病院へ行ったらしい。

このあとみんなでピザを食べに行くというので、シャワーを浴びて洗濯をして一息つく。
少し気分が良くなりホッとした。

エヴァンは女性のハイカーと話している。
彼女たちはイスラエル人で一人はアメリカの大学に通っているという。
キックオフでも会っていたようだ。
Noga ともう一人は結局最後まで覚えられなかった。

いろいろとしていたら夕食の時間を過ぎていたらしく、ピザレストランにエヴァンと向かって外に出るとダンが立っていた。
抱き合い言葉をかける。

ジョーは意識もしっかりしていて、骨折も無かったようだ。
何はともあれジョーが無事で良かった。
このあとのことは明日にして、今は飯にしよう。

オーダーの仕方が良くわからないが、なんだかみんな支払いをしていない。
いやドリンクだけしてる。
注文は一人一枚。
どうやらマンゴーの知り合いが経営してるようで、マンゴーが今日をねぎらい、ドリンク以外は、おごってくれるようだ。
楽しい夕食が始まる。
ジョーはいないが、楽しまなければ。
Noga 達もなぜか参加してちゃっかり食べてる。
エヴァンは鼻の下が伸びてる。
彼女達が席を離れた時、ダンとハイタッチしている。
若いなあ。
こんな時でも女子への興味を失わない。
素晴らしい事だと思う。

テレビではワールドカップが放送されている。
なんと日本戦!
周りが教えてくれた。
カメルーン戦は劇的な勝利!
やった!
一人興奮して声を上げてしまう。

帰り際、ダニエルがもう一つピザを注文している。
ジョーに届けるようだ。
この店の人が病院まで送ってくれるらしく、エヴァンと3人で見舞う。
もうピザを食べて良いなんて、元気な証拠。

実際にあったジョーは疲れていていつもの元気は無かったし、精神的にずいぶんこたえているようだが、顔色も良かった。
平和な小さな夜の街を3人は歩く。
それぞれに思いを抱えながら。
明日、発つはずのみんなも1日伸ばすことになる。

おれはどうする。
時間の余裕は少ない。
みなと行くか、はたまた。

ダニエルの背中は小さく疲れて見えた。




-Turtle
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by hikersdepot | 2011-05-25 00:45 | PCT 2010 by Turtle
Kennedy Meadows,CA to Lone Pine,CA Day49 - Day 55 / Part 2
6/12(sat) Hiking Day 40 15mi(Guitar Lake Turn around 6mi+9mi) 7:30am-4:00pm(8:30)
"The W"

"静かな朝だった。だが、雪は止んでおらず、積もっていた。
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早起きして出る予定も一気に気が萎える。ダンとジョーも動き出さない。
しばらくして、ダンとジョーの話が聞こえてくる。出来たら目指して行きたいという。
どこまで行けるかはわからないがともかく一時間以上遅れての出発。
荷物はデポし、食料はベアボックス(フードロッカー)にしまう。
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いきなりの渡渉でつまづく。
この寒さで腰近い深さは厳しく、渡るべき場所には凍りついた細い丸太がかかる。
慎重に慎重に渡る。
頭がピリピリする。東へと向かうトレイルは歩きやすいが少しずつ雪が増していく。
風は強く寒さは厳しい。PCTで初めてあるだけ行動着を来て出てきた。

森を抜けると美しい"Timberline Lake"に出会う。
キャンプに良さそうだが禁止の立て札があった。
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トレイルがとたんに消えて完全な雪原、雪道となる。
硬く締まった雪を踏みしめ薄く残るトラックと地形を確認しながら行く。

遮るものは無く、容赦無い風は体を冷やしていく。目の前には大きな壁が聳え立つ。この上にあのピークがあるんだ。"W"が待っている。しかし、風が山の頂にぶつかり生まれでた大きな雲は絶え間なく弛みなく、まるで大きな手のように被さっていた。
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丘のような場所に上がると下には、いまだ氷のなかに身を隠した、大きな池は"Guitar Lake"。
ホントにギターみたいな形だ。
ここで意外にダンとジョーが根をあげる。確かにこの状況で上に上がるとどんな風か考えただけで恐ろしい。
それにしても、美しい景色だ。聳え立つ岩が白い化粧をし輝いている。
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そのコントラストはわずかな季節だけにしか見られない宝物だ。撤退を決断し来た道を戻る。
この旅では初めての敗退。リベンジを心に硬く誓う。また会おう、Mt.Whitney。
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キャンプサイトに戻るともう昼に近い。緊張の糸も切れて、ご飯を食べながらぼんやり。
1日停滞して明日にかける手もあったが、先へ進むことに。
いよいよJMTを歩く。

歩きやすい道が続き緩やかに降っていく。西側の斜面は雪も少なく歩きやすい。
10000feet以上のところにこれだけ緩やかな山の裾野が広がっていることが想像しにくいほどの山の大きさだ。
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歩いている時は意識もしないくらい、まるで平地を歩いているようだった。
High Sierra Trail の分岐をパスする。
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楽なトレイルだが疲れが結構残っている。
標高の高さもあるのか息も少し苦しい。
Bighorn Plateau(オオツノジカの台地)と名の付いた場所は雪に埋まり、平らな為にルートは不明瞭でトラックは散り散り。
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3人で手分けしながら進んでいくと前方にはハイカーが、昨日会ったグループだ。
ダニエルは昨日、彼らと一緒に歩こうと話をしていた。
かなりゆっくりとしたペースのグループだが、それくらいで十分ではある。
時折雪が開き現れるトレイルを目安にいく。
斜面をトラバース気味に下り降りた先には、Tyandall Creek がすごい水流で流れていた。
今日のキャンプサイトだがここに来て渡渉だ。
この場所はForester Pass の入り口にて出口ともなる場所。
先は吹きさらしの広大な谷。

少し早い終わりだが明日の大一番に備える。
Marmot が現れる平和なキャンプサイト。熊も近くにいるのだろうが。

雪が多く、隙間をみつけて各自キャンプの準備だ。
まだ風は冷たく強く、小雪も舞うが、空は青く澄んでいた。
きっと明日は好天になるだろう。みんなとの楽しい時間を過ごす。
こんな大人数は初めてだが楽しい賑わいだ。

瞬く星空の下、Marmot の高く鳴く声が響く。胸が高鳴る。越える壁が待っている。



6/13(sun) Hiking Day 41 16mi 7:00am-6:30pm(11:30)
"Highest Point"

暖かい陽射しが注ぐ朝だった。
快晴。
みんなを待つ間家を干した。
穏やかな朝だが、この先にはPCTのHighest Point がある。
不安がよぎる。全員揃って出発。

いきなり雪原が広がる。ひたすら雪だ。
方角上はほぼ真っ直ぐ北の谷に向かえば良い。だが広すぎるためどこが谷だか判断に迷ってしまう。
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冷静に見れば大きく3つに別れている谷の真ん中を進めば良い。
頂が陽射しに照らされキラキラ光って見える。それにしても大きい。
広いし長いけれど、言えることは、大きい。

足元は日光に溶かされた雪が、まるでZ-Lite(サーマレストの代表的なマット) のように、でこぼこになっていて歩きにくい。
とんがり頭渡るようにステップを踏んでいくとなんだか楽しくなった。
振り返る景色。
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氷に蓋をされた池が見える。二つ目の池を越えると、目の前に岩壁が現れる。
Vに切れて深いCouloir(gully)を持つ、PCTで最も標高の高い場所、"Forester Pass"。
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雪から顔を出す岩の上は陽に照らされ暖かく、まるで体を乾かすLizard のように休憩をする。
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みんなが揃う、さあ越えよう!

グリベルのスパイダーにしっかりと力を伝えながら一歩ずつ歩く。
斜度は40度くらいだろうか。

靴は柔らかくキックステップは出来ない。
スパイクの最大限面積を生かして摩擦力を高める。
緊張が続く。集中力を維持する。
不安定な岩場で少し休みまた上がる。

斜度が急すぎて雪が付かないのか、トレイルが見えている。
近くに見えているのに遠い。
ザッ、グッ。ザッ、グッ。一歩。また一歩。

みんなもてこずっている。雪に慣れてないのだろう。
スマイルスは早いし強い。良いおばさまだが。スマイルスとほとんど同時にトレイルに着いた。
ダンとジョーが見当たらないので聞くと、クーロワールに向かったという。

何をバカな。

勇気と無謀は違う、という言葉を思い出す。
マンゴーが動けなくなってしまったようだ。スマイルスは助けに戻る。
パンコースト兄弟を確認するために先へ。
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雪の残るスイッチバック。その先はあのクーロワール。
下から見るより幅がありかなり急だ。慎重にトラックを利用し進む。脳がピリピリし、背中に力が入る。

落ちたら…。

フッ、フッ、フッ!

渡った。道のあるべき場所は雪に覆われている。
高巻くようにいくが、雪が崩れそうで気が抜けない。
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そして着いた。

直ぐに下を見るとダンが見えた。
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なんとか登ってきたようだ。
ダンは余裕の表情。腹が座ってる奴だ。見直す。
いつも元気で調子の良いジョーは顔が白く引きつっている。体が恐怖で硬い。
若さは強さ。二人は着実に登ってくる。
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スマイルスやシューマーたちも上がってくる。エヴァンは力も体力もある青年だが、しんがりを努め上がる。
みんなが揃う。
無事、立った。

Forester pass、13200feet(4023m) だ。
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素晴らしい景色なのは当然だ。
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大いに喜びを分かち合う。
手を叩き、抱き合い、固く握手を交わす。

まだ先は長い。この後も多くの困難があるだろう。
でも、今を喜ぼう。
讃えよう。
ここはPCTで最も高い場所で、ここに立てたことを全身で感じよう。
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それぞれ写真や動画を撮り合う。
いつまでもいたいけどいつまでもいるわけにはいかない。
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この後のお楽しみはGlissade※1 だ。
アイスアックスの無いハイカーはトレッキングポールを逆さにして制動をかけながら滑り降りる。
一気に距離を稼げる上に楽しい。
登り返して二回目の滑降の為に登り返す。
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下に見える湖の周りを巻くように降る。
トレイルは東に下りて斜面を巻くように行くがトレイルは無い。
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無視して直進していく。
時々グリセードをして遊びながらグイグイ進む。
標高を落とすと陽射しに弛められた雪に足をとられる。
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木々が視界を遮るようになり木陰の雪は融けないで残り行く手を阻む。
斥候を努める僕はいつの間にか独走していた。
明瞭なトラックを見つけ辿る。
人の声が聞こえるので立ち止まるとダンが見える。
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二人で休憩にちょうど良い場所を探しさらに進む。
小川沿いに陽射しの気持ち良い場所でみんなを待ち休む。
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それぞれ楽しそうで、ホッとしている。
ダンが言いにくそうに相談される。
それは一度街に降りないかという提案。

10日でVVRの計画だったが、正直ここまで雪に阻まれ遅れている。
エヴァン達はKearsarge Pass からLone Pine へ行くので一緒にということらしい。
一日の行程が長く、あまり景色を楽しむ余裕もない。
計画通りならもうひとつ今日中に峠を越えなければならない。
正直食料も十分では無い。

先へは急ぎたい。でも危険は冒せない。
街へ降りる決断をする。

雪が少なくなったトレイルは新緑が美しく気持ち良い。
時折立ち止まり歩速を合わせながら、ゆっくり景色を楽しむ。こういう時間が大切だと改めて感じる。
3600feet(1100m)以上一気に降った。
標高10000feet(3000m)を切ると雪が明らかに少なくなる。
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また登り、Bullfrog Lake Trail を東へ、Kearsarge Pass へ、向かう。
Bullfrog(ウシガエル) Lake 周辺は再び10000feetを越え雪が増す。
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キャンプサイトはトレイルから外れた高台に決める。
今日はみんなが饒舌になり楽しげ。
困難を一緒に乗り越えた連帯感があった。
そして、満足感の溢れた顔をしていた。

その顔は美しいAlpenglow※2 の光を受けて輝いていた。

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※1 Glissade(グリセード) はアイスアックス(ピッケル)で制動を掛けて斜面を滑り降りる技術。ただ簡単では無いのでお尻で滑ることが多い。その場合、日本では"シリ"セードと言うこともあるが、英語にはそんな表現は無い、はず。

※2 Alpenglow 朝日や夕日に照らされ紅く輝く山々の様子。または、その色。


-Turtle
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by hikersdepot | 2011-05-20 10:30 | PCT 2010 by Turtle
Kennedy Meadows,CA to Lone Pine,CA Day49 - Day 55 / Part 1
6/9(wed) Hiking Day 37 25mi 6:30am-8:00pm(13:30)
"Enter The Sierra"

バックパックが肩にのしかかる。この旅が始まって以来無かった重さが両足にかかる。
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ここから、いよいよSierra の領域になる。
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ゆっくりしているパンコースト兄弟を置いて先に出る。今まで以上に木々が濃いトレイルは緩やかに登り、橋を渡り進んでいく。
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Turbo は初めて会うハイカーでゆっくりだと言いつつも、かなり早そうだ。
6000feet(1800m)だった標高は気づけば8000feet(2400m)を越えていた。
開けた景色の大きなMeadow(低湿地、草原)にでる。
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Meadow を左手に見下ろしながら細かい道を歩き、一つ峠を越えて大きな川と湿原へと降りる。
休みなく一気に11miで着いたMonache Meadow は不釣り合いなほどしっかりした橋がかかっていた。
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先の方にはBoston&Curvy が歩いている。
スイスから来たRocky Raccoon と橋の袂にて休憩と昼食をする。
彼は"やっとアメリカらしい広い景色に会えた"と喜んでいた。
確かに長かった砂漠地帯の景色は美しいのとは違うものかもしれないが、僕はそのどちらもがこの広いアメリカという国を表すものと思っていた。
この橋の下にはたくさんのツバメが巣を作っていて、人が橋を歩く度に慌ただしく飛び上がっていた。
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TurboとCloud Kicker が追いつきRocky Raccoon と先に進んでいくが、パンコースト兄弟を待つ。
しばらくして来たが川遊びしようなどとのんびりしたことを言う。
また一人先へ。

ここからは一気に標高を上げていく。息は苦しく足は重くなる。
日本の銀竜草の仲間と思われる植物が地面から出ていた。
"Snow Plant"と言い、地面から栄養を吸い上げて成長する。日陰を好む。
大きいものだと20feet、およそ60センチ位になるようだ。
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9000feet(2700m)を越えてからは一気に高さを上げる。空腹と疲れはピークに近くなり、休憩。
ダニエルとジョーは元気に追い付いてきた。若さには勝てない。
急斜面は終わり、緩やかに登りながらトラバースをした先のリッジは10500feet(3150m)で雪が増えトレイルを覆う。
とはいえ、多くの話しや想像していたよりは少ない為にホッとする。
今日の長い上りは一段落し、ここからは一気に下り降りる。
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一時間位下ると小さなクリークに着いた。
ここで夕食を食べる。今までは大抵終了してから食事をしていた。
しかし、熊への対策としてキャンプサイトとは離れた場所で食事をするのが効果的とされている。
ベアキャニスターが義務付けられているが、価格が高いからという理由で持ってきていないダニエルがびびっているのも一つの理由だ。
水もあり綺麗な場所だが、蚊が多いのでゆっくり休憩が出来ない。
アメリカの蚊は大きくて痛い。

なだらかで美しい湿原と森を縫うように歩いていく。
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日が傾き、目の前の景色が赤く染められていく。
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小橋を渡り一時間位歩いた先には今日のキャンプ予定地のDeath Canyon Creek だ。
深く流れの早いクリークの渡渉先には開けたスペースが広がる。

ちゃっちゃっとおやすみ準備。
もう日も暮れる。
疲れた果てた。


6/10(Thr) Hiking Day 38 19mi 7:30am-7:30pm(12:00)
"Hungry"

朝方少し冷え込みが強まる。0℃。標高が高いので仕方ない、そういうもんだ。
本当は早起きしたかったが周りにつられてしまい出発が遅れる。
とりあえずいきなりの登りからスタートはきつい。気持ちはあるが体がついていかない。
すぐにジョーが追い付いてきた。先に行ってもらい自分のペースで進む。
急なところを終えるとなだらかで全体にはやや下りで快適に飛ばしていく。
ダニエル(ダン)の気配はまったく無い。
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計画ではKennedy Meadows から一気にVermilion Valley Resort というシエラ区間の重要なポイントに行くために、
例年であれば一週間で行けるようだがとにかく雪で時間がかかるということで、10日分の食料を用意したが、
本当は何日かかるのか、どれくらい食べて良いのかわからないので常に軽く空腹が続いていて力が入らない。
少しでも軽くするため水もギリギリまで減らしていたら、思うように水場が見つからない。
3000mを越えて上がる途中に小さな分岐があり、少し奥へ行くと綺麗な水が流れていた。
囲いがあるので、おそらくホースバックライディングの休憩やキャンプサイトになるのだろう。
トレイルは大きい分岐を右に分けながら山を巻いて進む。
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再び大きい分岐にあたるとTrail Pass に着く。
ここからはLone Pine という街へ降りられる。
細かく食料補給を考えているRocky Raccoon やTurbo 達は街へ行くようだ。
地元のレンジャーとトレイル整備のボランティア達に出会う。どちらも犬を連れていた。
レンジャーの女性はここから先は雪が更に増えると言う。
ベア缶が無いと怖い目に遭うと言われてビビるダン。
だから言わんこっちゃない。とはいえ先に進まないと。
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言われた通りトレイルの雪は徐々に増し、速度は落ちる。
雪解けで出来たたくさんのSeasonal creek をまたいでいく度に靴は濡れを増していく。
同じ様に今しか無いクリークで夕食を取る。
いよいよ雪は増し、立ち止まる時間が増える。トラックは錯綜し惑わされる。
頼りになら無い地図で大まかに方向を定めて進む。
日は沈み始めた。
雪原を越えた先のリッジをまた越えてChicken Spring Lake へと着いた。
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山の窪地にあるLake は美しく、そしてまだ氷の中にある。
目指していた目的地へは着けなかったがタイムリミット。
気温も低くすぐに就寝だ。
昨日も今日も慌ただしく過ぎる。

無駄はないが無駄な時間こそ人の生活の根源だなぁ、などと無駄なことを考えて見上げる空にはたくさんの星が今日も瞬く。


6/11(fri) Hiking Day 39 16mi 7:30am-5:30pm(10:00)
"Join JMT"

標高も高いし水の側で周りは山ときたら寒い。美しい朝だが寒い。
しかし限られた防寒具でもなんとかなるし、寒ければ動けば良い。
雪道に戻り急斜面を上がる。景色の良い場所にでる向こうに見えるのはWhitney だろうか。
ちょっとすでに登れた気になる。
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雪の無いトレイルをトラバース気味に歩く先にはまた雪で埋まったトレイル。
道がところどころ消えるので3人が協力して探す。
一人ではどうなっていたか今更ながら考えてしまう。徐々に雪は少なくなりテクテク歩けるようになる。
台地にはたくさんのCedar の巨木が立ち並ぶ。シエラぽい。縫うようにトレイルは進む。
風は冷たいが木にもたれ休んでいると幸せだ。集中してスピードを上げていく。
歩くこと集中し余裕があまり無いのは良いのか悪いのか。
ダニエルやジョーとは話すような話さないような。
この二人と歩いていると面倒なこともあるのに何かが楽しいのだ。
彼らはなぜ僕を誘ったのか、なぜ僕は一緒に歩いているのだろうか。
自然の成り行きだが、成り行きとは何か、全ては意思の集約か。

雪解けで冷たい水で溢れたクリークを渡り休憩をする。
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陽射しが気持ち良い。目をつむりしばし憩いの世界へ。
久しく見なかった雲が大きさを増してきて陽射しを遮るととたんに寒くなる。
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嫌な予感を振り切って歩き出す。再び川を渡り急斜面を上がる。
やや緩やかな開けた大きな谷状地はじわじわと10900feet(3270m)のGuyot Pass へ続く。
いよいよ天気は下り坂で空一面雲に覆われている。
Pass を越えて、日本では考えにくい大きな山裾をトラバースしていく。
時折雲間から射す陽の光も暖かさをもたらすことはない。
適度に腐った柔らかい雪のトラバースでパンコースト兄弟はスパイクを装着するが、雪の経験が少ないのだろう、この雪には必要ない。
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一気に300feet直降する。
ダンとジョーはグリセードしようとするがそれほどの斜度は無い。
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ヒールを雪に打ち込むようにしながら降りていく。雪の下には岩がゴロゴロしていて危険だ。

右手に大きな湿原が見える。
奥には険しい頂。
木々に囲まれ様々な緑色が美しい。
水は美しく深く強く弛みなく流れる。
美しいこの場所は"Crabtree Meadow"、John Muir Trail(JMT) がPCTと出会う場所だ。
実際にはあと1miほど北、もしくは東に行くとトレイルにぶつかる。
そしてここから、アメリカ本土(アラスカや離れた州を除く)で最高峰のMt. Whitney へと向かう。

深い川を渡った先にハイカーグループがテントを張っていた。
Kennedy Meadows で会ったEvan以外は良く知らない顔だった。
スイス人のSmiles、Shroomer、Mango、カップルの二人。
彼らはMt.Whitney には行かないようだ。それもHiker Direction。

彼らの中で、いやPCT史上(?)最もハイでおしゃべりなShroomer(70年代に流行ったハイになるキノコ)とパンコースト兄弟がおしゃべりにふけってしまっている。
風が強くいよいよ寒い。14000feetの山から吹き下ろす風は氷水を浴びるような冷たさだ。
足の指がかじかみ体が震える。
いろいろアドバイスを受けていたようだが、さむいので急かして先を行く。
寒さはいよいよ身体に染み入る。
はら、と落ちるのは雪だ。
あの鹿は雪を楽しむのか、寒さは堪えるのか。
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川沿いにトレイルは伸び渡渉を無理矢理避ける。
体を動かしても寒い。
広い平地の分岐はレンジャーステーションを指している。
僕達は明日、Whitney へ行く。
土屋さんからのアドバイスで出来ればGuitar Lake の先まで行きたかった。
しかし、天気と時間と寒さにこれ以上は予測がつかないので、レンジャーステーションのある森でキャンプを決める。
ジョーは先に行きたかったみたいでいじけていた。若さだなぁ。
思いがけずに出来た時間に、夕食を食べながら、ダニエルと会話を楽しむ。
何を話したのだろう。
仕事のこととかハイキングのこととかギアのこととかだったろうか。
話したことは覚えてなくても、それが楽しくてもっと続いてほしい時間だったのは覚えている。
日が暮れると雪は勢いを増し幕を叩く音は止まることなく続いた。

Part 2 へ続く
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by hikersdepot | 2011-05-08 10:05 | PCT 2010 by Turtle