Stehekin, WA to Manning Park, BC, CANADA/ Day154–157/ Hiking Day124-127/2574.4mi-2664.2mi/89.8mi/②
9/24(Fri) Hiking Day126/ 27mi/ 6:50am- 7:50pm (13:00) /NB 2648mi
2 days left!!!!!!!!
“Eve”

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夜半までテントに降り積もる音が消えなかったが、朝は静かに迎える。朝から笑い声。
“なんとか生きてるぜ!”
とテンジンの声。相当寒かったのではないだろうか。外をみると青空が広がっている。周りは一面真っ白。思ったほど降っていたわけでは無かったようだ。これならトレイルも普通に歩けるだろう。素晴らしいスタートがきれそうだ。


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 朝日が山々に降り注ぐ。雪に反射しキラキラと輝いて見える。やや下っている歩きやすい道を、写真を撮りながら進んで行く。気温は思っていたよりも高く、雪はどんどん消えていきそうだ。


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 しかし、一時間もしないうちに空は薄曇り。陽射しも遮られていきて、朝よりも寒く感じる。トレイルは森の中に入り、道は細くなっていく。それを抜けた先、下の方には未舗装の道路が見える。小さなピークを大きく迂回するように行くとHarts Passへと到着する。その時にはすでに青空はなくなり薄く暗い雲に覆われている。

 Harts PassはPCTが通過する道路の中でもっともカナダよりにある。ということはカナダ国境までの間ではこれが最後の道路になるのだ。そう思うと何でもないTHが急にありがたく思えてくる。到着すると人の話し声が聞こえる。トイレの裏手あたりから聞こえるようで行ってみるとそこにはみんなが焚き火を囲んでいる姿がある。

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なんとこんなところでトレイルマジックだ!彼らは遊びに来たついでにトレイルエンジェルをしているということらしい。なんとハイカーの為にネクタリンやコーラなどが用意されているという。1人で歩いている女性ハイカーに会う。彼女はセクションで南に向かうらしい。トランジエントとも再び合流。ゆっくり休み腹一杯食べて飲んで、しっかりトイレもすます。ここまで来てものんびりと過ごしちゃうのはスルーハイカーらしくて楽しい。

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 1時間以上経ってから再びハイク。山肌を縫うように進む。Slate Peakまでは道路が伸びているようでよく見える。山頂にはFire Lookout のような鉄塔が見える。休憩し体力をつけたスルーハイカー達は歩きやすいトラバース道を黙々とひたすら進んで行く。

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 色の変わりつつある山。葉を落とさずに緑を保つ木々。深く長い谷。今日はみんなとそれほどペースを変えずに歩けている。時々4人で休憩しながら進んで行く。こうしてハイカー同士で座って話ながら旅をするのももうすぐ終わりを迎える。もうすぐ終わるのだ。雨は結局ほとんど降ること無く我慢してくれているよう。たくさんのパスを過ぎて、稜線を下る。森の中足を引きずり黙々と。

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 Holman Passは谷間にある十字路。そこの丸太に腰掛けている3人に追いつく。ぼくも腰をかけて軽く食べながら休憩だ。
“どうだい調子?”
“まあまあかな。足は相変わらず痛いけど、まだ歩けるよ。”
今日も休憩をたっぷりしているけれど、歩きやすい道のお陰で、距離に対して体力の消耗は少ない気がする。ここまでですでに20miほど。時間的にもそろそろ終わりにしても良い頃だ。
“次のキャンプサイトに水場があるんだけど、そこで水を汲んでさらに先に行かないか”
とガットフック達から提案がくる。Springのあるキャンプまで約3mi。さらにそこから5miで次のキャンプサイトがある地図にマークがある。
“カナダ国境からマニングパークまでは、さらに8miもあるんだ。それを考えると、今日をもう少しがんばりたいんだ。”
そういうことか。ちょっと言葉に困る。けっして今だって楽じゃない。あと3miは行けるけど、8miはわからない。でも、歩くか。
“なんとか歩くよ”


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 水場までの道は斜度があるもののそれほど辛いものでは無く、歩いて行ける。それでもさすがにペースは落ち始め、いよいよ足は重く。到着した水場周辺は開けていて明るく、適度に木々もある良いキャンプ地。しかし、ここからまだ歩くのだ。時間はもうすぐ5:00pmになる。


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 辛い道のり。水を担ぎ重くなった荷物と体。疲れのピーク。時々歩みが止まってしまう。なんとか稜線に上がる。昔のPCTはこのままPassに向かっていたらしいが、かなりの急斜面とざれたトラバース道。結構簡単に死ねるくらいの雰囲気だ。稜線を乗り越え、東側の斜面を下る。とても急斜面で歩きにくい小石の多いトレイル。3人との距離はものすごい離されてしまう。雨も再び降り始め体を濡らす。体力の限界が近づいているのが分かる。

 少しずつ食べながらゆっくり歩みを止めないように進む。けれど、Passへの登り返しでは、心と体が噛み合なくなり、足が前に出ない。ふと後ろを振り返るとトランジエントの姿が見える。彼のペースならすぐに僕に追いつきそうだ。案の定、あっという間に僕の真後ろに。でもPassはまだ上。たった0.8miほどにこれほど手こずるとは。でももう言うことを体はきかない。

 なんとかWoody ではないWoody Passに上がり、一休み。時間は午後6時になろうとしている。
“大丈夫か”
トランジエントが尋ねてくる。
“ああ、うん。足が痛くて。体が思うように動かないし。”
“しっかり食べろ。食べ物はあるのか”
“ああ、あるよ”
しかし疲れていて食欲も落ちている。それでも無理矢理でも食べなくちゃ。
“先に行って。”
そういう僕に、かれは、
“いや。ゆっくり行くから気にするな。”
と僕の後ろを離れようとしない。彼なりに気を使ってくれているのが分かる。彼はぶっきらぼうだし、本当に変わり者だ。だからいつも仲間がいない。でも僕とそう変わらない、紙一重な気もする。本当は良いヤツなんだろう。1人で歩ける意志の強さに改めて脱帽。そして感謝。

 ここからは稜線沿いでアップダウンも無く歩きやすい道だが、目的地まではまだ長い。2mi以上ある。いつもなら大したことの無い距離がとても長く感じられる。

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 途中に岩場でかわいい声が聞こえる。マーモットとも違う。目をこらして見てみると、大きいハムスターみたいな動物がいる。写真を撮っておこう。ナキウサギみたいだな。

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 Mt Home Campというのがあり、トレイルから道をそれると地図には書いてある。午後7時を過ぎると一気に暗さを増してくる。ギリギリまでヘッドライトを出さずに歩いて行く。しかしそんな道見つからない。3人の姿も見えない。すでにヘッドライトを点けての歩き。小さい踏み跡なら見つけられないだろう。かといってキャンプができそうな場所は未だ見つからずだ。

 西の山肌を進むトレイルが稜線を乗り越す。急に人の声が聞こえる。テンジンとティックの声。稜線に少しある木々の中に無理矢理入り込んで寝ているらしい。そのほんの少し先には開けてちょっとだけ平らな場所があり、そこにはガットフックがいる。結局彼らもキャンプ地は見つけられずにここまで来たようだ。ここまで来ても僕の持っている地図にだまされるのだ。気が抜けないというか、うんざり。時間は7;50pmごろ。長い一日もここまで。

 稜線は風が強そうなので嫌だが贅沢は言えない。なるべく影響を受けなさそうな場所を考えてテントをたてる。もうヘトヘト。急いで夕食。でも体を起こしていることも辛い。今日は27、28miくらい歩いただろうか。距離もそうだが、こんな辛い一日あったろうか。自分達で狙って暗い中を歩いたことはあったが、時間が遅くなってヘッドライトを出したことは、この旅で今日が初めて。PCTの中でもっとも辛い一日と言ってよいだろう。そしてこれがPCTで最後の辛い一日であることも事実だ。

 最後の夜にしては、最高のキャンプとはお世辞にも言えない。しかし、こんなもんだ。これが僕だ。ありがたいのは雨が止んできたことと風が穏やかなこと。遅くまでテンジンとティックの話し声が聞こえる。テンジンは本当に良くしゃべる。こうして最後の夜が更けて行く。

 体よ。もう少しだけつき合ってくれ!足よ。なんとか保ってくれ!明日だけは。

 明日で終わる。カナダ国境までは9mi。PCTの終わりManning Parkまではそこからさらに8mi。


9/25(Sat) Hiking Day127/ 17mi(9+8mi)/ 6:30:am-9:50am-2:20pm (7:50) /NB 2664mi
Last day!!!!!!!!!
“Journey”

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 ここのところの出発時間よりも少し早めに出発。まだ太陽の明るさは十分ではなく、薄暗い中のスタートだ。

 結局雨は降らないまま朝を迎えることができたのは嬉しい。風は乾いていて冷たく、寒い。テントは少し結露していたもののここの所の湿気の多さからすると良い方だったのかもしれない。強い風に背中を押され、みんなよりも少し早くにスタート。

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 やはり思っていたよりも先に来ていたようで、すぐにHopkins Lakeが見えてくる。それを通り過ぎHopkins Pass。あっさりとみんなは抜いて先へと消えていく。今日の天気は素晴らしく青空が広がる。

 おおむね緩やかな下りの歩きやすい道を進む。それほど足の痛みは変わらないものの、この痛みに慣れてしまっている自分が恐ろしい。木々に覆われた地味なトレイルだが、最後にふさわしいのかもしれない。あっさりとCastle Passに到着する。そこには団体のハイカーがいて賑やか。みんな若く、10人以上いる。そこに丸太に腰掛けている3人も。もうすぐ。だけど、だから、そんなに先を急がなくても。トランジエントが僕らを追い越しさきに歩いて行く。僕達も再び歩き出す。ここからは休み無しで国境。国内最後の歩き。大地を踏みしめ進む。すれ違うハイカーはPCTハイカーでカナダに抜けず、ここからはHarts Pass もしくはRainy Passまで戻って街へ出てから帰るらしい。
“おめでとう!”
そういうと
“おめでとう!”
のお返しが。まだだけど、もう目の前。もうすぐ。

 いくつかの小さなクリークを越える。また向かいからくるハイカーが。その顔をみて嬉しくなる。
“ハイ!Carhop!”
最後の日に彼と会えるなんて、素晴らしい再会だ。お互いに今までの努力を称え合う。彼もまた道路まで戻って行くのだ。

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“気をつけてね”
“ありがとう。もうすぐ国境線が見えるよ”
そういって彼は去って行く。ありがとう、Carhop。彼と初めて会ったのはSouth Lake Tahoe に出る手前。それから何度も何度もすれ違い共に歩いてきた仲間。幾度も励まされる気持ちになったんだ。

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 トレイルはジグザグに下る。すると向こう側の斜面に木が全く無い場所が見える。あれが言っていた国境線だろう。


 歓喜の瞬間はすぐにくる。突然目の前には何度も写真で目にしていたTerminus が立っている。
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“やったー!”思わず叫ぶ。
『9.25.2010 9:50am』
Monument 78に僕は到着したのだ。歩けたのだ。歩いたのだ。約2650mi。長い長い旅路を歩き通したのだ。嬉しいのに、思っているよりも心が穏やかな気がする。声を上げて喜んでいるのに、どこか冷静な自分がいる。みんなと握手をして労をねぎらう。そして自分に、自分自身に。
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“Congratulation for me and all hikers!”



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 レジスターに書き込みをして、ここを通過したスルーハイカー達のメッセージを読む。チャーリーは今どうしているだろうか。Uncle Tom、General Lee達は明後日くらいにここに着くだろうか。Ass face、Ann、たくさんの出会ったハイカー達の顔が浮かぶ。そしてたくさんの感謝の気持ちが溢れる。ありがとう。本当にありがとう。

 僕達以外にも今日ゴールしたスルーハイカーが1人。それから、これからセクションで歩き出すハイカーがいる。なんかちょっと偉そうな顔をしている。何が原因か分からないけど、テンジンがトランジエントに対して怒っている。原因は僕にはわからない。せっかくなのに、残念。トランジエントが寂しそうな顔をしている。損な人だ。

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 カナダボーダーを越え、最後までPCTを歩く。カナダに入ってすぐのところの橋を渡った先にキャンプサイトがある。ここにたくさんのハイカーが泊まるのだろう。僕達は先へ。まだあるのか、最後の長い登りを堪えて進む。空は真っ青。今日は気温も高く、久しぶりに暑く感じる日だ。森の中、ちょっとアメリカとは違う感じのトレイルを進んで行く。ピークへの分岐を横目に今度は急な下り。膝がずきずきと痛む。悲鳴を上げる。足は重く疼く。

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こうしてみんなで歩くのも後少しで終わる。

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 途中からはジープロードを交えるようになり、歩きやすくなるが、僕にはむしろきつい。デイハイカーとすれ違い、川沿いの道となる。木々は黄色く色を変え、陽射しが当たって美しい。
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 THに出ると舗装道路がある。橋の上には座り込んだハイカー3人。待っていてくれたよう。

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僕も一休みしてから、最後の道路歩き。そして2:10pm、Manning Park Lodgeへと到着する。PCTの終わりだ。

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 テンジンは奥さんが遊びに来るようで別の部屋を一つ取る。僕らは3人で一部屋。いつものようにシャワーを浴びたり、洗濯したり。なんだか終わった実感がない、いつもと変わらない一日を過ごす。

 僕はここに荷物を送ってあり、もう3週間以上も前のことだし、着いているものだと思って話をすると“無い”という。なぜ?するとフロントの女性は
“アメリカとカナダは隣の国だけど海外だから、時間がかかるのよ。“
という。そんなのあるか。でもいつかは届くのだろうし、届いた時にどうするか、と言われたので、書いてある日本の住所に送り返してくれ、と告げる。最後に海外の洗礼か。

 夕食前の腹ごしらえでバーで乾杯。といってもほとんどみんな飲まないのが面白い。結局僕の周りは飲まない人だらけ。コーラとボリューム満点チーズたっぷりサルサソースのコーンチップスでみんな大満足だ。

 そのあと、妻に電話するものの電話には出ない。ロスの友人にはやっと通じて、しばし長電話。長電話のし過ぎで、大切な夕食を逃すという大失態。最後の最後まで間抜けで自分らしくて笑えてくる。でも、みんな明日の朝食で改めようと言ってくれて一安心。ありがとう。

 みんなで喜びを分かち合い、時間が過ぎて行く。しかし、それでもまだ実感が乏しい。また明日か明後日には歩くのではないだろうか。歩き続ける日々が待っているのではないかという感覚。

 旅はまだ終わらない。これは僕の、この旅の終わりと次の旅への始まりなんだ。

 なんてな。
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by hikersdepot | 2013-05-20 17:46 | PCT 2010 by Turtle


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