PCTで休む、寝る
PCTハイク中に仲間たちと良く言っていた言葉があります。

Eat, Poop, Sleep, Hike.
食べる、出す、寝る、歩く。
スルーハイカー四か条。

今まで、順序は違いましたが、歩くことに関連した靴の話、食事に関しての話、出すものとゴミの話をしました。とくれば、最後は寝る、休む話です。

ロングハイクとはただのハイキングではなく"生活"です。生きて活動するのには食べることが大切です。そして、体内に残った悪いものやカスを出す。十分に休み、最後に歩く。歩くことが一番大切なのでは無く、目的地に到達する為の大切手段を現した深い言葉なのです。というのは大分大げさですね。しかし、シンプルにいえば、ハイカーはこの四つの行動に集約されるのは間違いがありません。

ロングハイクの目的は最終点に到着する事が目標であり、"歩く"ことは手段です。その手段となる"歩く"を続ける為に大切なことは"休む"という手段です。

特に"遠く長く"歩く為には休憩をとるというのは重要で、集中力を保つ上でも大切なことだと思います。

"長い時間"行動するのとは少し違うこともあります。例えば、長時間行動でもゆっくりであれば休憩は少なくても良いかもしれません。ずっと行動食を食べ続ければ動くことは可能です。しかし、長時間行動すれば、おのずとペースダウンしてしまうので、早く動いてるつもりでも結局はゆっくりの行動になりがちです。それでは長い距離を行動するには効率が悪すぎます。

休憩の取り方は人により様々で、"一般的"と言われる取り方もあります。PCTハイカーも同様でゆっくり歩き休憩の回数の少ないハイカーもいれば、早く歩きたくさん休憩をとるハイカーもいます。どちらにしても長い時間歩き続けるため、一般的な日本の山の歩き方よりはトータルでとる時間は長いと思います。

1日約40km、10から12時間位かけます。その内休憩時間は3~4時間位になると思います。

参考として僕の場合。
5:00am起床。ダラダラと温もりを楽しむ。
眠気覚ましに高カロリーのスナックを食べる。一服しながら撤収。
6:00am発。歩く。ポケットに入れたスナック、もしくはエナジーバーを少しずつ食べる。
一時間ほどで集中力が落ちる。歩き方やペースを変えながら集中力を維持。
8:00am。スタートから2時間位で集中力が低下。空腹もピーク。
大休止その1。朝食を食べる。30分から1時間。
8:45am再び歩く。徐々にペースが乗ってくるに任せる。
同様に一時間位ずつ集中力を途切れ無いように調整。二時間位で小休止。
11:00am。10分~30分。昼飯前のおやつ。体を冷やさない程度に。
11:15am、再び二時間位の歩き。
1:30pm、大休止その2。一時間ほどゆっくり休む。昼飯。天気が良かったり、暑い場合は昼寝。
2:30pm リスタート。2時間位歩く。疲れもあるのでペースはやや落ちることも。
5:00pm、三択。
1.早いときはキャンプサイトを探して終了。
2.ディナータイム後再び歩く。
3.30分位の休憩後再び歩く。
再び歩く場合、 日暮れまでは一~ニ時間ほどなのでキャンプサイトを考えながら歩きます。
6:00pm終了

アメリカではサマータイムのため、長い時は9:00pmくらいまで明るいときもあります。その時は出発をゆっくりにしてたくさん寝る場合もあれば、もっと昼寝をして遅くまで歩く場合もあります。

歩いていて体感から実行していたのは12時間行動、12時間休息です。
どんな形であれ、1日の半分12時間を行動に費やしても、12時間の休息があれば、また次の日に動き出せます。
毎日のことで慣れていたとはいうものの、悪くない行動パターンだと思っています。
それ以上の行動に対しては回復が追いつかない可能性があるのでロングハイクにおいては、明日があると考えて、12時間行動以上はおすすめしません。

日本には日本なりのパターンもありますから一概には言えないかもしれませんが、応用は可能だと思います。

さて今まではパターンについてざっくり話しましたが、休息の取り方、方法も大切です。
立ち休憩というものがあります。集中力を途切れさせないためには良いかもしれません。
しかし、体が休息を求めた時点で集中力が落ちてきているのでしょう。
どうせ体を休めるなら座りましょう。出来たら足を伸ばし、体を木や岩にもたれかけましょう。脱力してリラックスすれば、たとえ五分でも、立って休む10分より効果的でしょう。座る30分、立つ1時間。と僕は思います。

悪天候ならばいざ知らず、立って休むPCTハイカーはまずいません。
その時、座布団になるようなものがあるとなお良し。僕は切ったZ-Liteを、スリーピングパッドの足元を兼ねて、使っていました。

また、歩き始める時にはできればストレッチをすると良いです。特に腿からふくらはぎの裏は疲労が蓄積します。
各所ゆっくり20秒以上、しっかりと伸ばしましょう。
お尻の筋肉をほぐし、股関節も柔軟にすると足の動きが少し良くなると思います。

次は寝ることについてです。
一泊や二泊では無く、それが毎日のように繰り返されます。十分に休めるように工夫します。

数週間までのロングハイクはまだ"非日常"といえるのかもしれませんが、数ヵ月に及ぶロングハイクはハイキングが"生活"で、街の滞在が"非日常"という逆転が起きます。
生活をいかに快適に過ごすかが重要になります。
とはいえ、過剰なものは必要ありません。

"貧しい者とは、持たない者ではなく、欲する者である"。

"知足" ということを忘れてはいけません。

目的を達する手段"歩く"をより長く続ける為に"軽い"という手段をとります。その"軽い"に必要なのは軽い道具を使うことでは無く"簡素化"という手段を選択する事です。

Simple は、単純な、簡素な、という意味です。
シンプルな道具は一見頼りなく見えるかもしれません。機能がたくさん無く、便利には見えないかもしれませんが、"あると便利"は必要では無いのです。
"便利な道具"は時に過剰で、それ以上の変化がしにくいので、考える力を奪います。
シンプルな道具とは使う人の知識や考えによって、自由に変形し、またちょっとした思考の転換や機転によって、十分快適(?)になるのです。

長い前振りでしたが、PCTハイカーやロングハイクを好む人たちには簡素な"幕"が好まれます。
その代表格はタープ、(フロアレス)シェルターです。ほとんどのものがフレームレスでトレッキングポールや立木を利用して張ります。重量は一人用でだいたい200gから700g位です。当然一般的なテントからすると不便かもしれませんが、"軽さ"という、ハイカーにとっての大きな"利"を得るのです。

雨が降れば濡れるかもしれない。寒いかもしれない。しかし、ただ過ぎてしまうより、苦労した思い出は後で楽しい思い出に変わると思います。
人にはそれを乗り越えるだけの知恵と身体があります。創意工夫は人間が持つ最高のアウトドアギアです。

僕はPCTを通して使っていた幕は、ファイントラックのツェルトです。
雨や湿った地面の時は内側にビニールシートを引いていました。
ツェルトを選んだ理由は、砂漠から雪山まで幅広く使うことを考えてです。
ツェルトは解放することも容易でタープとしても使えます。
寒冷な時には密閉することで風雨を防ぐだけで無く温度差も作れるので、タープやシェルターよりもスリーピングバッグの温度ランクを下げることもできます。
雨の吹き込みを考えてスリーピングバッグカバーなどを使うか否かという問題からも解放されます。
ファイントラックのツェルトは耐水性が乏しいので大雨の時は"ちょっと微妙"と思うかもしれませんが、ヘタなシェルターよりも軽く、立木などでも張りやすい汎用性があり、シンプルでミニマムなサイズです。
耐久性もあり、ロングハイクでも故障は一度もありませんでした。
ステイク(ペグ)はアルミとチタンのピンステイクを合わせて8本。
本体四隅4箇所。前後2本。残りはサイド下もしくはサイドリフターに使いました。
石を使ったり、岩にステイクを挟んで固定したり、倒木を利用したりと、頭と体を使うとたいていの場合何とかなります。

マットはリッジレストを100センチ。ゼットライトの3ブロック分の角を落とし足元マット兼座布団に。バックパックを横向きにして枕にする事で175センチの身体を全部カバーしました。
より軽いものもありますが保温性、耐久性を考えると最適な組み合わせと判断しました。

スリーピングバッグはハイカーズデポのダウンバッグ。フードレスデザインですが、別にニットキャップを持てば十分。
ニットキャップは単体でも使えるので全体で重量軽減にもなります。
ダウンを上面片側に寄せたり、上下均等にに広げたりすることで低温から高温まで使いやすく、ジッパーを開けばキルト状にもなります。
ひとつ下のクラスの軽さでひとつ上のクラスの暖かさ。マイナス10℃から25℃まで対応できる、今までに無い汎用性の高さで、どんな情況にも対応します。

全体を通して、単機能が優れた上に汎用性があるようなものを選択しました。
長いハイキング生活を支えてくれた信頼できる相棒達です。

不便な点も足りないところもありましたが、故障も無く、この旅で最も評価しているのがこのスリーピングシステムです。
質素と快適の間、と自分では思います。

数ヵ月、毎日、長い距離、長い時間歩いても、食事をして、しっかりと休むことで体は力を取り戻します。
その為に睡眠をおろそかにはできません。

数日、数週間のハイキングではよりULスタイルで楽しむことは可能ですし、軽さの恩恵をうけることにもなるでしょう。
しかし数ヵ月となれば(一部の Crazy Steady hikers を除いて)、寝るということには、少しだけ、重きを置いても良いと思います。

もうひとつ。
軽量化の定番の方々で保温着を持って行く分、寝袋を薄くして軽量化を図ります。
それの利点も間違い無くあるでしょう。
ただ僕は今はその方法をあまりとりません。

僕の友人で、同志とも言えるアルパインクライマーに言われた言葉を僕は信じています。
"もし、簡素化軽量化を図る場合に、例え保温着は無くても、寝袋は暖かいものを持って行くべきだ。"

例えばダウンジャケット(250g、ダウン量80g)、パンツ(200g、ダウン量50g)を着て薄手の寝袋(500g、ダウン量280g)で寝るよりは、
例えダウン上下が無くても寝袋(950g、ダウン量450g)が厚手のほうが暖かいということです。

これは事実、体感できるほどに違います。
とはいえ極端に偏ると、起きている間寒いのでバランス感は必要です。

途中で装備を替える余裕のあるハイカーを除き、PCTハイカーに一番多い組み合わせは、
スリーピングバッグが900g~1000g(ダウン量400g~500g)に薄手のダウン200g(ダウン量50g)、もしくはシンセティックダウン200g(40g/m2)です。

僕は、HDダウンバッグロング650g(ダウン量310g)、ダウンジャケット280g(ダウン量100g) にして軽量化と保温力のバランスを取りました。

概ね、行動時間が長く、停滞時間の短いスルーハイカーには、保温着よりもスリーピングバッグを重視する傾向にあるようです。

体感は人により様々ですし、何を選択するかもまた、Hiker Direction、なのでしょう。
自分の好きなものを巧く使いこなし、自分なりのベストパートナーを見つけてもらえればと思います。

最後に。
PCTでは、ルート上のほとんどのエリアで自由にキャンプすることが認められています。
たくさんのキャンプサイトや、人が多く利用することで整地されてしまっている場所もあります。
全くなにも無く、自分で自由に場所を選び整地する場合もあります。
しかし、どんな場所を使う場合であっても、そこから離れる場合は、そこにいた形跡を極力無くすことが大切です。
ゴミはもちろん、寝た跡が残っていたら、周りの落ち葉を集めて砂をかけたりして周りと同じようにします。
かまどの無い場所で焚き火をした場合は、水をかけて完全消火し、土に埋め、土を被せ、痕跡を少しでも消しましょう。

自然を生かすことは、自分を生かすこと。
自然を大切にすることは、自分を大切にすること。


Leave No Trace - 痕跡を残さない


まずは出来る範囲でやりましょう。



それでは!明日もみんなで、

Happy Trails !


-"easy"Turtle
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by hikersdepot | 2011-06-18 10:14 | PCT 2010 by Turtle


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